第129話-A:私たちはパートナーになるんですから
隼人&静香のダブルスペアが躍動します。
その後、各代表チームによる両国の国歌斉唱と、麻子さまからの観客たちへの挨拶が、無事に滞りなく終了。
第1試合のダブルス2の試合開始時刻の午前10時が迫る中、日本代表とデンマーク代表の7人が互いに円陣を組んで右手を重ね合い、各チームの主将を務める迅と亜弥乃が、チームメイトたちに対して呼びかけを行っていた。
まずは日本代表のベンチでは。
「皆、聞いてくれ!!今日の俺たちの対戦相手のデンマーク代表は、世界選手権大会を2連覇した世界最強軍団だ!!」
BBAに穏やかな笑顔で見守られながら、迅が力強く隼人たちに対して呼びかける。
「だからと言って昨日も馬場監督が言っていたが、胸を借りるつもりで行くとか、そんな軟弱な考えで試合に挑もうなどと思うなよ!?『帝国』デンマークが相手だろうと、俺たちは今日の試合を本気で勝ちに行くぞ!!」
迅の言葉に、真剣な表情で耳を傾ける隼人たち。
今この場にいる7人の内4人が…それどころか監督のBBAでさえも、今日1日限りの日本代表なのだが。
それでも強豪デンマークが相手だろうと、今日の試合は本気で勝ちに行く…その想いは7人全員が同じだ。
「なんか政府のお偉いさんがグダグダグダグダと五月蠅い事を抜かしてるが、そんな物は気にすんな!!俺たちの力でデンマーク代表に目に物を見せてやろうぜ!?」
「「「「「「おおおっ!!」」」」」」
重ねていた右手を天高く高々と上げ、力強い笑顔で気合の掛け声を上げる隼人たちに、客席から大歓声が届けられる。
そして反対側のデンマーク代表のベンチでは。
「皆、分かってると思うけど、誰1人として油断や慢心は絶対にしたら駄目だよ!?」
内香に穏やかな笑顔で見守られながら、亜弥乃が流暢なデンマーク語で、真剣な表情でチームメイトたちに対して呼びかけを行っていた。
「今日の私たちの対戦相手は『バドミントン後進国』と呼ばれている日本だけど、だからと言って今日集まった7人の中に、油断や慢心が許される相手なんて1人も存在しないんだからね!?」
そう、亜弥乃の言うように、今日の試合は油断や慢心は絶対に許されない。
今すぐに欧米諸国のプロで通用するとされている、『神童』隼人と『天才』静香。
『高校生最強のダブルス』と称され、こちらも欧米諸国の幾つかのプロチームからスカウトの話が来ているネコとタチ。
そして日本最強のクラブチームの三津菱マテリアル名古屋、そのトップ3に君臨する実力者の迅ら3人。
いずれもが亜弥乃たちと言えども、油断や慢心が絶対に許されない強敵揃いだ。
だが、それでも。
「だけど勝つのは私たちだよ!!世界選手権大会3連覇に向けて弾みをつける為にも、今日は私たち『帝国』デンマークの力を、この大観衆の前で見せつけてあげようよ!!」
「「「「「「おおおっ!!」」」」」」
迅たちと同様に重ねていた右手を天高く高々と上げ、気合の掛け声を上げる亜弥乃たち。
そう、それでも勝つのは亜弥乃たちデンマーク代表だ。
いかに親善試合といえども『帝国』デンマークの名に懸けて、『バドミントン後進国』日本を相手に、むざむざと勝利をくれてやる訳にはいかないのだ。
その決意を胸に亜弥乃は、自分たちと同じように円陣を組んだばかりの、隼人たち日本代表の7人を見据えていたのだった。
隼人や静香とシングルス1で戦う事が出来ないのは、本当に心の底から残念なのだが…。
そして開場から1時間後の、午前10時。
いよいよ観客の誰もが楽しみにしていた、その時が訪れた。
『大変長らくお待たせ致しました。間もなく試合開始で御座います。まずは第1試合、ダブルス2。日本代表、須藤隼人 & 朝比奈静香ペア VS デンマーク代表、スコット・マクギリス & ローレン・クライフォートペアの1戦で御座います。』
ウグイス嬢のコールと共に隼人と静香がコートに上がり、観客たちが惜しみない声援を2人に浴びせる。
まさかの『神童』隼人と『天才』静香のダブルスペア。一体どんな凄まじいプレーを見せてくれるのかと、観客の誰もが期待に満ちた眼差しを2人に向けている。
その隼人と静香の対戦相手は、スコット&ローレンの角刈り頭と知的メガネのペアだ。
2人共、デンマークのプロリーグのコルソルトデビルにおいて、主力選手として活躍している実力者だ。
いかに隼人や静香と言えども、油断や慢心は絶対に許されない強敵だ。
「須藤君、ちょっとよろしいですか?」
ふと、軽く準備運動を行っている隼人に対して、静香が穏やかな笑顔で話しかけてきたのだが。
「何だい?朝比奈さん。」
「今日1日限りとはいえ、私たちはパートナーになるんですから。」
少し恥ずかしそうな仕草を見せて顔を赤らめながらも、それでも静香は隼人に対して、はっきりと告げたのだった。
「なので今後は私の事は、どうか『静香』と呼んで頂けますか?『隼人君』。」
彩花の今の惨状を思えば、これは決して許されない恋だと。
静香も頭の中では理解しているのだが、こうして隼人と一緒にダブルスを組む機会が訪れてしまうと、どうしても溢れる想いが止まらなくなってしまう。
名前で呼び合う位なら、別にいいですよね?静香は今この場に居ない彩花に対して、心の中で謝罪したのだが。
「…うん、分かったよ。『静香ちゃん』。」
「ふひひ。」
そんな静香の想いに全く気が付いていない鈍感な隼人に対して、静香が年頃の女の子らしい、はにかんだ笑顔を見せたのだった。
「それじゃあ静香ちゃん。六花さんが聖ルミナス女学園の監督だった頃に、散々聞かされると思うけど…。」
「はい。バドミントンは楽しく真剣に…ですよね?」
「ああ、折角の機会だ。今日のこのダブルスの試合を、僕達2人で全力で楽しもう。」
互いに穏やかな笑顔で、コツンと互いの右拳を突き合わせる隼人と静香。
麻子さまが直々に試合を観戦なされておられる天覧試合。それ故に隼人ら日本代表は、日本政府の上層部から『勝つ』事を厳しく厳命されている。
先程の円陣の際に迅も言っていたが、今日も練習前のミーティングの最中に、日本政府のお偉いさんが何の事前通知もせずに突然乱入してきて、隼人たちが別に何かした訳でも無いのに物凄い剣幕で怒鳴り散らしたのだ。
これには流石に温厚な迅も怒りを顕わにし、
「そんな物は俺たちの知った事じゃない!!」
「スポーツに政治を持ち込まないで下さいよ!!」
「高校生の選手もいるんですよ!?少しは配慮したらどうなんですか!?」
などと苦言を呈し、それに納得が行かなかった政府のお偉いさんと怒鳴り合いの衝突になってしまったのだが。
そう、迅の言う通り、そんな物は隼人と静香の知った事では無い。
隼人も静香も、別に日の丸を背負う覚悟でここに来ているのでは無い。麻子さまの事さえも正直心の底からどうでもいい。
絵里からの懇願で止むを得ない事情からだとはいえ、日本代表に加わるのは今日1日だけなのだから。
相手は世界最強のデンマーク。こんな貴重な機会はそうそう訪れる物では無い。
だからこそ、今日の試合を真剣に…そして存分に楽しんでやろうと。
隼人も静香も、そんな事を考えていたのだった。
「お互いに、礼!!」
「「「「よろしくお願いします!!」」」」
審判に促されて互いに一礼した後、隼人はスコットと、静香はローレンと握手を交わす。
そんな隼人たち4人に観客たちが、凄まじい大声援を浴びせたのだが。
ふと、隼人が観客席に目をやると…今日のチケットは予約開始数秒で即日完売だったと、ニュースで大々的に特番まで組まれていたにも関わらず、かなりの空席が目立っていた事に気が付いた。
そう…今日の試合までに転売ヤー共が捌き切れず、最早何の価値も無い紙クズとなってしまったチケットの席が、これだけ大量に存在しているのだ。
JABSが各種フリマアプリの運営元に要請して調査を行った結果、今日の分の2万枚ものチケットの内、およそ1万枚が転売ヤー共に流れてしまっていたと、六花がJABSの公式サイト上で謝罪している。
そうしてフリマアプリで法外な金額で出品された1万枚の内、現時点で実際に落札されたのは5000枚程度だ。
その残り5000枚ものチケットの分の席が、こうして空席となってしまっているのである。
スタジアムの外や駅付近では、今でも何千人もの転売ヤー共が、高い金を払ってまで手に入れたチケットを紙屑なんかにしてたまるものかと、必死の形相で通行人に対して声掛けを行っているのだが…効果は芳しく無いようだ。
だから作者は思うのだが、こんな不良在庫を抱えるリスクを犯してまで転売なんぞに手を染める位なら、その転売に割く時間を使って普通に働いた方が確実に稼げると思うのだが…何故転売ヤー共はそれをしないのだろうか…?
「お前らの事はデンマークでも話題になってるぜ?何でも『神童』だとか『天才』だとか騒がれてるらしいじゃねえか。」
そんな事を隼人が考えている時、スコットが豪快な笑顔を見せながら隼人に語りかけてきたのだった。
「けどな、俺に言わせれば、それは所詮日本での話だ。今日の試合では俺達デンマークのレベルの高さって奴を、徹底的に思い知らせてやるよ。」
「あの~、スコットさん。せめて英語で話して頂く事は出来ませんか?僕も静香ちゃんも英語だったら話せるんですが、デンマーク語は全然分からないんで…。」
苦笑いしながら流暢な英語で、スコットに呼びかけた隼人だったのだが。
「うちのチームのスコットが済まないね。拙い日本語で申し訳ないが、私が通訳しよう。」
ローレンが右手でメガネをクイッとしながら、先程スコットが告げた言葉を、流暢な日本語で全くの嘘偽り無く翻訳したのだった。
「…と、言う訳なのだが…本当にスコットが君たちに対して、無礼な態度を取ってしまって申し訳無いね。」
「いやいや、いいんですよローレンさん。今の日本のバドミントンの現状を考えれば、そりゃあね。」
もう何年も日本は、国際試合において無様な成績を残してばかり。
挙句の果てに今回の世界選手権大会に至っては、ツルピカ頭のせいでチームが空中分解してしまい、その責任を六花に厳しく追及されたツルピカ頭が解任されてしまった。
さらに補充要因として急遽集まった隼人ら4人、そして監督のBBAさえもが、代表入りは今日1日限りという有様だ。
スコットが隼人たちを…というか日本代表を見下すのも、仕方が無いと言えるのだが。
「だが私とてスコットと想いは同じだ。今日の試合では全身全霊をもって君たちを叩きのめさせて貰う。我ら『帝国』デンマークの意地と誇りに賭けてね。」
「胸を借りるつもりはありませんよ。僕たちも今日の試合は全力で勝ちに行きます。」
「いい返事だ。ならば『神童』と『天才』の力、存分に見せて貰おうか。」
かくして始まった、第1試合ダブルス2。
隼人&静香 VS スコット&ローレン。
観客の誰もが大いに熱狂し、隼人と静香に熱烈な大歓声を浴びせる。
「スリーセットマッチ、ファーストゲーム、ラブオール!!日本代表、朝比奈静香、ツーサーブ!!」
「さあ、油断せずに行きますよ!?」
決意に満ちた表情で、静香がローレンに向けて強烈なサーブを放った。
それを打ち返すローレン。さらに打ち返す隼人。
世界最速の競技とされているバドミントン。その世界レベルの超高速ラリーに、観客たちは大いに熱狂する。
注目された隼人と静香のダブルスペアだが、とても急造コンビとは思えない程までに、2人のコンビネーションはネコタチペア並に息がぴったりだった。
互いにプレイスタイルは熟知している上に、オールラウンダー同士で合わせやすいというのもあるのだろう。
そのポジショニングは静香が前衛、そのサポート役として隼人が後方に付くという形になっているのだが。
「まずは小僧!!お前からだ!!この俺のメテオキャノンを受けてみろぉっ!!」
果たしてスコットが繰り出したのは、屈強な右腕から放たれた超威力のスマッシュ。
それはまさしく、隼人の頭上に隕石が降り注ぐかのように。
並のプレイヤーならラケットを吹っ飛ばされるであろう凄まじい一撃が、情け容赦なく隼人に襲い掛かったのだが。
「…はっ!!」
「1-0!!」
「…な…に…!?」
それを隼人は涼しい表情で、あっさりと打ち返してしまったのだった。
まさかの事態に、スコットもローレンも驚きを隠せない。
「嘘だろ!?この俺のメテオキャノンを、こんなにもあっさりと!?」
その隼人の勇姿を目の当たりにさせられた亜弥乃が、途端に全身がウズウズしてしまい、目をうるうるさせながら滅茶苦茶な事を審判に要求してしまう。
「タ~~~~~~イム!!審判、選手交代!!スコットに代わって私!!」
「馬鹿な事を言わないの亜弥乃!!そんな事が認められる訳無いでしょ!?」
「やだやだやだやだやだやだやだぁ(泣)!!」
苦笑いしながら、ジタバタする亜弥乃を背後から優しく羽交い絞めにして止める内香。
そもそも世界選手権大会において選手の交代とは、
「レギュラーメンバに不測の事態が発生した場合に」
「代わりにサポートメンバーが入る事が」
認められているのであって、亜弥乃が望むようなレギュラーがレギュラーに代わって入る事など許されてはいないのだ。
ましてスコットは怪我も病気もしておらず、今もこうしてピンピンしているのだから。
当たり前の話だが内香の言うように、そんな状況で交代など認められる訳が無い。
「隼人君と静香ちゃんを同時に味わえるなんて!!スコットもローレンもずるい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(泣)!!」
そんな母娘の微笑ましい光景が繰り広げられているものの、観客の誰もがそんな2人に全く目を向けていなかった。
今の観客たちが注目しているのは、デンマークのトッププロを相手に躍動している、隼人と静香のダブルスペアなのだ。
「4-1!!」
静香の維綱が、情け容赦無くローレンの足元に突き刺さる。
その様子をスコットが歯軋りしながら、とても悔しそうな表情で見つめていたのだった。
「くそっ、こいつら一体何なんだ!?本当に日本人の高校生なのかよ!?」
「焦るなスコット!!まだ試合は始まったばかりだ!!ここから巻き返すぞ!!」
そう、まだまだ試合は最序盤。ここから幾らでも取り返せばいい。
今、隼人と静香に傾いている流れを、ローレンが今ここで取り戻す。
「君たちの試合を直接観た訳では無いが、それでも君たちのデータは分析済みだ!!」
ローレンが右手でメガネをクイッとしながら、左手のラケットで隼人のスマッシュを打ち返した。
まるで隼人がそこにスマッシュを撃ってくる事が、最初から分かっていたかのように。
今の世の中、有名選手の試合の動画など、ネットの動画サイトで幾らでも大量に溢れ返っている。
だからこそローレンは、隼人ら高校生4人が1日限りとはいえ日本代表に緊急招集されたと
報じられた際、動画サイトで4人の試合の動画を徹底的に分析した上で、今日の試合に臨んでいるのだ。
どうやらローレンは詩織と同タイプの、データ分析型の選手のようだ。
まず静香は今日の試合、朱雀天翔破は絶対に撃ってこないはずだ。
あれは静香の身体に…特に右肘に相当な負荷が掛かるはずだし、それ故にBBAも絶対に使うなと、静香に対して釘を刺しているはずだからだ。
そして最大の脅威である静香の黒衣だが、これも静香は今日の試合では絶対に纏わないだろう。
理由は単純明快。あれは静香の身体能力こそ増大させるものの、肝心の静香のプレイスタイルと全く持って噛み合っていないからだ。
県予選準決勝での彩花との試合では、彩花の黒衣による五感剥奪から身を守る為に、敢えて黒衣を纏ったようだが。
今日の試合では静香が黒衣を纏うメリットなど、何も無いのだ。
それ以外の技ならば、ローレンは既に分析済み…。
「おりゃあ(笑)!!」
「6-3!!」
「…は…!?」
データ?何ですかそれwwwwと言わんばかりに、静香の月光がローレンのラケットを派手に空振り三振させたのだった。
「ば、馬鹿な!?私が集めたデータでは月光の切れ味は、里崎楓のクレセントドライブよりも劣るはずでは…!?」
「いや待てローレン!!こいつ、いつの間にかラケットを左手に持ち替えてやがる!!」
驚愕の表情でスコットは、ふひひと笑う静香を睨みつけていたのだった。
バドミントンにおいて左打ちが有利だと言われている理由の1つが、世界共通規格として左巻きに作られているシャトルの構造だ。
それ故に左打ちでドライブショットを撃つと、右で打つよりも強烈なドライブ回転を掛ける事が可能になるという訳だ。
確かにローレンの言う通り、静香の月光の切れ味は楓のクレセントドライブに及ばない。それは静香自身も自覚している事だ。
だからこそ静香は六花による指導の下、左打ちという創意工夫でもって、月光の切れ味にさらなる磨きを掛けたのである。
これは左でも隼人と遜色なく打てる静香だからこそ、出来る芸当なのだが。
「朝比奈静香君…あの県予選大会の頃から、さらに進化したとでも言うのか…!!藤崎六花さんの指導が余程素晴らしかったのだな…!!」
「だったら俺のパワーで、その流れを断ち切るまでだぁっ!!」
「待てスコット!!その娘に正面からスマッシュを打つのは!!」
ローレンが止める間もなく、スコットがメテオキャノンを静香に向けて放つものの。
「夢幻一刀流奥義!!天照!!」
「10-5!!」
「ば、馬鹿な…!?」
静香の天照の前に、あっさりと迎撃されてしまったのだった。
そう、静香には相手のスマッシュに対してのカウンター技である天照がある。
スコットもそれはローレンに聞かされてはいたが、それでも自分のパワーで無理矢理捻じ伏せれば済む話だと考えていたのだ。
だがそれでも短期間ながらも六花からの優れた指導を受けた事で、今の静香はローレンが言うように県予選の頃よりも、さらなる成長を遂げている。
正面から無策にメテオキャノンを撃った所で、今の静香には通用しないのだ。
「13-6!!」
その後も隼人と静香の猛攻は続く。
デンマークのプロチームのコルソルトデビルで活躍する、世界トップクラスのプロ選手であるスコットとローレンでさえも、隼人と静香を相手に完全に押されてしまっていた。
「16-9!!」
それはつまり隼人と静香が、今すぐに欧米諸国でプロ入りしたとしても通用する、充分に上位争いに食い込める程の実力を有している事の証左だと言えるだろう。
「19-11!!」
それだけに観客の誰もが、心の底から残念に思う。
どうして隼人が、引退という決断をしてしまったのかと。
どうして静香が、学生スポーツからの永久追放になってしまったのかと。
「20-11!!」
どうしてこの2人が…今日1日限りの日本代表なのかと。
「ゲーム、日本代表、須藤隼人 & 朝比奈静香ペア!!21-12!!チェンジコート!!」
終わってみればファーストゲームは、隼人と静香の快勝。
とても嬉しそうな笑顔で2人は力強くハイタッチを交わし、2分間のインターバルの為にベンチへと戻っていく。
そんな2人に対して大観衆が、盛大な大歓声を浴びせたのだった。
転売ヤー共って本当迷惑だよね…。