↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
寡黙な婚約者が一心に愛を囁いてくるまで  作者: Lily


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

5/5

番外編(2)

寡黙な婚約者のコミカライズ/単話版の先行配信が始まりました。

詳しくは下部の後書き、もしくは活動報告をご覧下さい。

 馬車の中でも頭を抱え、シルヴィアにどう弁明するか色んなパターンを考えるが、彼女を前にした途端、全てが吹き飛んでしまった。


 けれども、何かは言わなければならない。焦って感情のままに言い放った言葉を、次の瞬間には心底後悔し、自分を殴ってしまいたくなった。


「──失態だった。この一週間のことは忘れてくれ」


(シルヴィアが理想とする男性と真っ向から違う態度を取ってしまった。二度目とはいえ、彼女に一目惚れした己の想いの強さは賞賛に値するが……このような自分の姿を、彼女の記憶に残したくない)


 そう思ったゆえの発言だった。ただし、レイノルドがシルヴィアのことになると酷く鈍感なせいで、彼女との間でとてつもない認識の齟齬が生まれていることに気づいていない故の致命的な発言だ。


 レイノルドから重たい愛を向けられているなんて露ほども思っていない──むしろ嫌われていると信じてやまないシルヴィアが、その言葉をどう受け止めるのか。一切考慮していない。


 だから恋焦がれてやまない、菫色の瞳からぽろりと透明な液体が流れ出した時、レイノルドは訳が分からず、それを呆然と眺めていることしかできなかった。


「シルヴィア?」


 シルヴィアも泣いている自分が信じられないかのようだった。くっと唇を噛み締め、とめどなく溢れる涙を必死に拭う姿に、レイノルドはまるで雷に打たれたかのような衝撃を受けた。


「あ、すみ、ません。失礼しますっ」


 弱々しく震えた声で言葉を紡いだシルヴィアは後ずさる。周りがざわめき立ち、慌てて踵を返すシルヴィアにレイノルドは手を伸ばすが、哀れな右手は空を切る。


 自分の言葉が彼女を傷つけたことは明白だった。


(私が泣かせた……大好きなシルヴィアを私が傷つけた!)


「レイノルド! お前っ」


 だから言ったのに──とジョナスが怒りの形相でこちらに駆けて来ようとするが、それよりも先に居ても立っても居られず、がむしゃらに足を動かした。


 理由はどうであれ、先程の発言でシルヴィアに嫌な誤解をさせたに違いない。それはとんでもなく鈍感なレイノルドでも理解した。謝らなければと空き教室を一室ずつ確認する。


 最後の一部屋。そこに彼女はいた。今度こそシルヴィアを捕まえた。逃げようと抵抗するシルヴィアを決して離さぬよう胸の中に閉じ込める。


「離してください」


 睨みつけられても引いてはいけない。

 誤解を解かなければ。みっともない姿だとしても、プライドなんて全て捨てて、誤解を解かなければどうにもならない。


(何にも変え難くて、いちばん大切な人なんだ)


「──大切な婚約者を私が泣かせたのに、そんなことできるわけがないだろう!」


 レイノルドは叫ぶように己の本音を曝け出すと、シルヴィアの抵抗を止める。

 ポカンとする彼女の表情はレイノルドの言葉を信じていないのが明らかだった。


 そうして弱々しい声でレイノルドの言葉を繰り返すので、もう一度ゆっくりと伝えたのだが。


「君は大切で大事な私の婚約者だろう」


 ますます困惑を露わにする。しまいには「……私のことがお嫌いなのではありませんか」と言う始末。

 ここでようやく鈍感なレイノルドも己が長年しでかしていた失態に気づく。


 自分の努力というのは斜め上。いや、この場合は斜め下と言った方が正しいだろうか? とにかく、長年の努力というのは悪い方向へ向いていて、シルヴィアが笑顔を見せてくれないのは全て自分のせいだったのだ。いわゆる自業自得の状況にレイノルドは真っ青になり、狼狽えてしまった。


(これでは嫌われても仕方ない。私が全て悪いのだから)


 情けなく、俯いてしまう。

 そんな最低最悪な婚約者であったレイノルドを、シルヴィアは大好きだと言ってくれて。頬に感じる温かな熱と恥じらうような微笑み。己がずっと求めて恋い焦がれていた表情を見せてくれていて。


「今まで私の態度で傷つけてごめん。大好きだよ」


 もう絶対に間違った道に歩まないと、思ったことはすぐに伝えようと、固く心に誓った。



◇◇◇



「レイ様」


 そっと振り返ったシルヴィアはレイノルドを目に止めると僅かに顔を綻ばせた。

 そんな彼女は、まるで天界から舞い降りた女神のように美しい。


「ヴィア、とても綺麗だよ」

「レイ様もいつにも増して素敵です」


 その言葉に、胸の奥が温かくなる。

 ここ数年で遅ればせながら見慣れたはずの笑顔なのに、毎度レイノルドの心臓は高鳴り、愛おしくてたまらない。


(もう二度と泣かせたりはしない。どんな形であれ、この笑顔を守り続けよう)


 レイノルドはそっと彼女の手を握り、世界で一番穏やかな笑みを浮かべた。



 そうして溢れんばかりに笑う新婦の隣には、殊更彼女を溺愛し、一心に愛を囁く新郎が寄り添っているのだ。

お久しぶりです&いつもお読み下さりありがとうございます。


本作品はコミカライズに伴い

「記憶喪失の婚約者様が嫌っているはずの私と出逢ったら」

とタイトルを変更しまして、アンソロジーコミックに収録&単話版の先行配信が始まりました。


以下詳細です。


単話版

挿絵(By みてみん)

記憶喪失の婚約者様が嫌っているはずの私と出逢ったら

▼URL

https://www.cmoa.jp/title/341776/

出版社:ファンギルド

レーベル:comicスピラ

漫画: 橘よぽ先生

配信サイト:コミックシーモア



アンソロジーコミック

挿絵(By みてみん)

一途に溺愛されて、幸せを掴み取ってみせますわ!異世界アンソロジーコミック 11巻

▼URL

https://www.cmoa.jp/title/286559/vol/11/

出版社:ファンギルド

レーベル:comicスピラ

漫画: 橘よぽ先生

発売日:2025/10/16(木)

配信サイト:コミックシーモア

※ コミックシーモア先行配信になり、間を置いて他電子書籍サイトでもご購入いただけるようになります。



どうぞよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。