《清算》
「ありがとうございます鳴宮様!それでは早速、神の契約に基づきまして私、女神エルテラから、鳴宮 海斗 様 へ祝福の儀《清算》を行います。」
そう言って、女神エルテラは一歩下がり、自身の胸の中心に手を当てて、ゆっくりと目を閉じた。
(おぉ……)
俺が、その女神たる立ち姿に関心していると、エルテラは優しく呟いた。
「鳴宮様も、どうぞ目を閉じて下さい……大丈夫、少し痛むだけですから。」
(ん……?)
「今……なんて…」
俺が閉じかけた目を開いた瞬間、女神と俺の体が光りだした。
「清算!!」
それと同時に女神は唱え、両手を広げた瞬間。
俺の体に突如、止め処ない痛みと記憶が流れ込んできた。
「があぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!」
俺は、この絶えることのない痛みに叫びながらのたうち回った。
頭の中には、俺が死ぬまでに経験した35年分の体と心の痛みの記憶が物凄い速さで流れ、その場面、瞬間の痛みが直接体に反映されたのだ。
「鳴宮様!!辛いと思いますが!!耐えてくださいね!!」
辛うじて聞こえた女神の言葉に、俺は痛みに耐え叫びながら、感情を爆発させた。
「ああぁぁぁぁぁあああ!!!!こおぉのぉおクソがあぁぁぁああぁぁぁぁあああ!!!!!」
そして、それからもしばらくの間、耐えながらも叫び続ける俺に、ついに最後の痛みがやってきた。
(はっ…これは!ま、まずいッ!!!!)
それは、俺が死ぬ直前に受けた、エルテラの雷だった。
「やめろおぉぉぉおおっ!!……うっ…………」
抗えるはずもない記憶の中で、それを受けた俺は、その瞬間に気を失った。
(はぁ~またここか………)
俺は今、死んだ直後に居たであろう暗闇にいる。
そしてそこは、相変わらず何も見えず何も感じることは出来なかった。
(なんだ…?俺はまた死んだのか…?……こんな事ならあの女神、一発殴っておけばよかったかな………)
するとまた、あの時と同じく、胎児からの体の成長が始まった。
(あれ?これが起こるって事は、またあの女神に会えるんじゃ……と言うか、二度死ぬとかそもそもあるのか?)
そんな事を考えていると、いつの間にか体の成長が終わった。
(あぁ~やっぱ手足があると落ち着くなぁ……ってあれ?ちょっとばかし短いような気もするけど……)
すると、ここに来た時とは少し違って、辺りがだんだん白く光りだし、エルテラの声が聞こえて来た。
「さぁ、起きてください鳴宮様……さぁ…」
(エルテラ……)
そして、だんだんと光は強くなり、俺は目を閉じたのだった。