契約成立
「実はあります!あるんですよ私が消し炭にならない方法が!」
(あるんだ……)
内心イラッとしたが、俺はあえて何も言わない事にした。するとエルテラは言った。
「そこでですね!あなた様……いいえ、鳴宮 海斗 様にご提案があるのですが……!」
(俺の名前知ってたのか…てか凄いテンションだな…)
「あぁ…はい、なんでしょうか…?」
俺がそう言うと、エルテラは俺との距離を少し詰め、目を輝かせながら俺に尋ねた。
「あの…鳴宮 海斗様は……」
「あっ、鳴宮で結構です…」
俺は毎回フルネームもあれなので、苗字で呼んで貰う事にした。
「では改めまして、鳴宮様は、剣や魔法、スキルなどが存在するファンタジーな世界に興味はありませんか?」
(おぉ…ファンタジー)
「それって、ゲームやアニメみたいな世界って事ですよね?」
「はい!!その通りです!どうですか?興味ありませんか?」
エルテラは、それはそれは期待に満ち溢れた眼差しで俺に問いかけてくる。
(ファンタジーか……ゲームとかは、ほとんどがFPSの大人気無料シューティング系しかやって来なかったから、魔法とかあまり詳しくないし、正直そこまで興味もなぁ……あ、でも……会社の後輩からしつこく勧められたファンタジーアニメ、まだ途中までしか見れてないけど……2作品とも確かに面白かったよなぁ……それに、ここまでの状況を考えると、興味が無いなんて言ったらまた面倒な事になりそうだし、元の世界にももう戻れないし……よし!…ここはエルテラに乗せられておくか…)
俺はこの瞬間、もうどうなっても構わないと心に決めたのだった。
「いいですねファンタジーな世界、すごく興味があります!」
笑顔でそう答えると、エルテラは嬉しそうに話を続けた。
「では!その世界に、転生するのはどうでしょう?あ…もちろん!向こうの世界で不自由無く過ごせるように、こちらで必要最低限の能力は与えますし、きっと後悔はさせませんから!」
エルテラは、今までに無いほどの高いテンションで話し、何だかやる気満々に見える。
(凄いテンションだけど、本当に任せて大丈夫なのかな……)
俺は、少し不安になったのだが、今しがた心に決めた事を思い出し、どうにか不安を払拭した。
「分かりました!その提案、お受けします!」
そう言うと、エルテラは笑顔で俺の手を取り、両手で上下に振りまくった。
「ありがとうございます鳴宮様!!それでは、契約成立と言う事でよろしいですね!」
「あ…は、はい!成立、成立で構いませんから……」
(まるで海外の人の握手のようだ……)
その言葉を聞いたエルテラは、腕を止め、ゆっくりと手を離した。