この女神…。
「あの~質問があるのですが……」
「はい!何でしょうか…?」
「手違いで死んだのなら、俺を生き返えらせばいいのでは……?」
すると、少し間をおいてエルテラさんは、急に青ざめた顔になりながら答えた。
「ほっ…本来であれば、死んだ記憶を私が消去して、元の世界へとお返しするのが決まりなのですが……」
「ですが?」
俺が聞き返すと、エルテラさんは、そっと顔を逸らしながら続けた。
「その場合……元の世界には、修復可能なご遺体が残っていなければならなくてですね……」
(ん?……どう言う事だ?……向こうで死んだのだから、遺体は残ってるはずなのだが……)
俺が首を傾げると、エルテラさんは、何かを決意した顔でギュっと目を閉じながら言った。
「実は……!あ…あなた様のお体は、私の雷で跡形もなく爆散してしまったのですっ……!!」
(えっ……?)
「な、何だってえぇーーーーっ!!!!!」
俺は、あまりの衝撃に、思わず大声を上げてしまった。
「すいません!すいません!私が柴丸様を苦痛もなくお迎え出来るようにと、通常よりも威力を上げてしまったのが悪いのですっ!」
そう言いながら、エルテラはまた、何度も何度も頭を下げまくった。
(あ、跡形もなく爆散って……そんな威力でもしあの時…柴丸が隣に居たら……どの道俺も死んでたんじゃ……)
そして、俺は思ったのだ。この女神、実はポンコツと呼ばれる類なのではないかと。
「うぅ………」
エルテラは、とても申し訳なさそうな声を上げながら、俯いた。
(まぁ……話を聞く限り、威力を上げたのも善意であるのは間違いないだろう……実際に俺は、何の痛みも感じずに死んだわけだしな……それに、どうやら悪い女神でも無い様だし……ただなぁ~女神なのは分かるが、なんだか新人臭がすごくて…調子崩れるんだよなぁ~)
俺は思わず、大きなため息をついて、半ば諦める形で全ての事を受け入れる事にした。
「分かりました、分かりましたからっ……それで、俺はこれからどうなるのですか?天国……?とかで不自由なく過ごすんでしょうか?」
俺は、片手で顔を覆いながらそう尋ねると、エルテラは俺が怒っていないことに気づいたのか、それとも半ば諦めている事を悟ったのかは分からないが
俯いていた顔を上げて、何だか恥ずかしそうな顔をしながら話し始めた。
「はっ、はい!あなたがそれを望むのであれば、私が任されている《動物達の楽園》に、導く事はできます…よ。ただ……」
「ただ……?」
話している途中からテンションが落ちて来た事に疑問を抱えながらも、そう聞き返すと、エルテラは何故か、全てを諦めた様な顔で言った。
「ただ…その時は、人間を誤って殺した挙句、規定通りに元の世界にすら返すことも出来なかった事が神々に知れ渡り、私はすぐにでも消し炭にされるでしょうけど……」
「…………」
(いやいやいやいや、気まずい気まずい……)
俺は今まで、こんなにも見事に全てを諦めた表情は見たことがなかった。
(これが絶望した時の顔……って、そうじゃなくて!この女神…思ったより厄介だぞ……)
俺はとりあえず、エルテラが変な気を起こす前に解決策がないか模索する事に決めた。
「あっ…あぁ~なら!エルテラが消し炭にならない方法とかは……なっ…ないのかなぁ~?」
(って、何で俺は死んでまで他人に気を使わなけりゃいけないんだ!?おかしいだろこの状況!普通は逆じゃねぇーのかよ!?)
すると、エルテラはまるで俺がこう言うのを待ってましたと言わんばかりに、俺に満面の笑みを向け、喜びながら言った。