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「娘に次いで、妻までもがいなくなってしまった。大変だ。どうしよう」
それを聞いた周りの人たちの中で、父親に声をかける者は誰もいなかった。
ただ父親を遠巻きに見ているだけだった。
その次の日、件の父親がその姿を消した。
小さな集落はパニックになった。
そんな中警察は、これは事故とかそんなものではなくて、事件なのではないかと考えた。
そして父親が一番疑われたのだ。
そんな騒ぎの中、一部の住人が気付いた。
それは一家三人が住んでいた家から少し離れたところに住む隣の老人だが、その老人の様子がおかしいことに。
それはまさに消えた母親や父親のように、その顔や声から感情とか人間らしさが、ほとんどなくなっていたのだ。
集落の人は、こんな老人は見たことがなかった。
そしてその老人は、翌日になってその姿を消した。
山間の集落はもちろんのこと、もはや日本中が大騒ぎとなっていた。
そしてそれまで田舎の警察官だけで対応していたのだが、ここにきて遅ればせながらようやく本書から刑事が派遣されてきた。
ベテランで周りから一目置かれている坂上刑事と、刑事になって間がない若い小山田刑事の二人だった。
「なんだかとんでもない事件のようだな」
「そうですね。あまり聞いたことがない事件です」
「とりあえずは聞き込みだ」
「はい」
二人は集落中を聞き込みした。
そしてわかったこと。
まず娘がいなくなった。
それと同時に母親の様子が明らかにおかしくなった。
ほとんど感情のない無表情な顔になり、声も態度も同様に心のないものになった。
すると母親が消え、今度は父親が母親と同じような状態になった。
そして父が消えると、少し離れた隣の老人がその状態になった。
そしてその老人が消えると、今度はこれまた隣で少し離れた老夫婦が二人住む家の、嫁の方が同じようにおかしくなったと言う。
これが今の現状だ。
誰かがいなくなると物理的に近くにいる人間がおかしくなる。
そしてそのおかしくなった人間が消えると、また物理的に近くにいる人間が普通でなくなる。
そしてその普通で亡くなった人間が消えると、さらにまた。
といったことを判で押したみたいに毎日繰り返されているのだ。
聞いただけではまるで訳のわからない状況だ。
「いま変なのは、老夫婦の妻の方だな」
「はいそうです」
「行ってみるか」
「はい、行きましょう」
二人はあえて最後まで取っておいた、老夫婦二人の家に向かった。
呼び鈴を押すと、老夫人が出てきた。
「なんでしょう」
坂上と小山田は警察手帳を見せた。
「この集落で、何人もの人が行方不明になってますね。それを調べているんですが」
「そうですか。ご苦労様です」
二人は嫌でも気づいた。
その顔そしてその声に。不気味なほどに感情と言うものがない。
まるでロボットと話をしているかのようだ。
この状況で刑事が二人訪ねてきたと言うのに。
「で、何か心当たりとかありますかね。どんな些細なことでもいいですから」
「いえ、私は何にも知りません。とにかく恐ろしいことですよね」
その声に、怖がっている様子など微塵もなかった。




