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目覚めた。本当に久しぶりだ。本当に。
ここはどこだ? 見覚えがまるでない。
久しぶりに目覚めたら、まるで知らない場所にいる。
いつの間にこんなところに来てしまったのだろうか。
そして今感じていることは、腹が減ったということだ。
周りを見わたした。
――あれは……。
目の前に何かいる。
二足歩行の生物だ。
その身体の大半を、生き物でないなにかで覆っている。
なんのためにそんなことをしているのかは、まるで分らないが。
その生物はこちらを見ているようだ。
か弱い。あまりにもか弱い生物だ。
その生物を見て思った。
――おいしそうだ。
母が食事の支度をしていると、娘が帰ってきた。
「ただいま」
「……おかえり」
外に遊びに行っていたのだろう。
しかし母は娘の声を聞き、娘の姿を見て違和感を覚えた。
――えっ?
その顔に表情と言うものがほとんどない。
そしていつもと違う抑揚とか生気が一切ない声。
姿も声も間違いなく自分の娘なのだが、なんだか別のもののように感じる。
まるで娘の姿をした、全く違う存在のようだ。
――まさかね。いくらなんでも。
しかし母の前でうろついている娘は、どう見ても娘とは思えないのだ。
娘は生まれた時から毎日見ていたのだ。
やはり明らかに何かが違う。
その様子、そのかもし出す雰囲気。
娘どころか人間ではないようにも思える。
もし人間でないとしたら、いったい何なのだ。
「ママ」
そんなことを考えていると、娘が母の前に来た。
母をじっと見る。
しかしその目の奥に、なにか邪悪なものを母は強く感じた。
あまりのことに何も言えずに娘を見ていると、その娘の顔がなくなった。
山間の小さな集落。
そこで騒ぎがあった。
六歳の少女がいなくなったのだ。
父親はもちろんのこと、母親や集落の人、そして警察までもが少女を探したが、いくら探しても一向に見つからない。
その悲しい事件の中、父親をはじめ集落の人が、みな気がついた。
娘の母親だ。
一人娘が行方不明というのに、その表情や声に、感情と言うものがほとんどないのだ。
発する言葉も、活字にすればおかしくはないのだが、直に聞いてみると違和感だらけだった。
一人娘が心配ではないのだろうか。
「ショックでおかしくなってしまったんだろうか?」
そう言った人もいたが、父親は否定して言った。
「いやそんなもんじゃない。あれはまるで妻ではないみたいだ。妻ではなく、全く別の何かのような……」
次の日も娘は見つからなかったがなんとその日、こんどは母親までもが姿をくらました。
集落が大騒ぎの中、父親は無表情で、何の感情もない声で淡々と言った。




