落ち込んでしまいましたがなにか?
アスハさんの作って下さった野菜スープは今まで食べていたスープが野菜を入れたお湯に感じてしまう程に、深みがありとても美味しかったです。この味に慣れてしまったらもう元には戻れないのではないかと不安になる程です。そんな事を考えながら私がスープを堪能している間に気づけばケッコウサンドは残り3つ、野菜スープに至っては鍋が空になっていたのです。慌ててケッコウサンドを1つは確保したのですが、結局私が食べれたのは1つのサンドイッチと1杯の野菜スープだけでした…。
ケッコウサンドはボリュームがあるので1つでもそれなりにお腹には溜まります。なのでガウガウにお腹が空いている訳ではありませんが、朝に続き満腹感を得られなかっ私は現在絶賛ご立腹中です。全く…あの人達の胃袋はどんな異空間に繋がっているのでしょうか?
自分達がまたやってしまったと思っているのか、アスハさんとスミナさんは後片付けを手伝ってくれ、ライデンさんとジョンパニさんは火の始末などをしてくれていますが、私は不機嫌を隠す事なく後片付けを進めていきます。いつもはうるさい人たちが誰も喋らないという異様な雰囲気のまま片付けが終わり、気まずい空気のまま探索を再開しました。
1時間程歩いたところで下に降りる階段を発見しました。皆さん何の躊躇もせず階段を下りていますが、何かこの下の階から重苦しい空気が漂って来ているのには気づいていらっしゃらないのでしょうか?物凄く行きたくないです。今日はここまでで帰るとか無理…ですよね~。私は渋々後をついて行き、2階層に降り立ちました。
2階層に着くと先程感じた重苦しい空気が身体に纏わりついてきているような気がして何だか身体が重く感じて思わず顔を顰めてしまいました。そんな私の表情を見てジョンパニさんが説明をしてくれました。
「カリュ、身体に不快感が出てるだろ?どうやらこのダンジョンは下の階層に進むと魔力が濃くなっていくタイプみたいだからな。魔力がある程度強い奴は慣れないうちはそう言った症状がでるんだ。でも大丈夫だ。すぐ慣れるぞ」
「成る程、皆さん慣れていらっしゃるから躊躇せずに進めたんですね。と言うかそれならそうと先に説明してほしかったです」
「あ…、悪ぃ」
「まぁいいです。暫くしたら慣れるのですよね?」
「……その筈だな」
さり気なく目を逸らしながら言うって事は確信はないと言う事なのでしょう。はぁ~、どうやらこのままの可能性もあると思っておいた方が良さそうですね。そう考えていたらスミナさんが「カリュちゃんは魔力どの位なんだぁい?」と聞いてきました。
「えっと、確か≪上の下≫ですね」
「なら大丈夫だよぅ。多分だけどねぇ、後数十分もしたら慣れるはずだよぅ」
「そうなのですか?」
「うん、その筈だよぅ」
「じゃあ、カリュちゃんが動けそうならこのまま進んで行きたいんだけどどうかな?無理そうなら階段である程度馴染むまで待つけど…」
ライデンさんが気遣ってくれましたが動けない程ではなかったのでそれを伝えそのまま進む事にしました。2階層の作りは1階層とあまり変わりがないようです。強いて言えば1階層より少し通路の幅は狭く感じますが、それでも大人の男性が10人は横に並んで歩いても余裕がありそうな広さです。これはこの階層も中々時間がかかりそうですね。
暫く進むとガーウルフさんが二足歩行しているような魔獣が現れました。中々のスピードでこちらに向かってきますが、ライデンさんがファイアニードルを出してあっという間に倒してしまいました。ライデンさん、剣に火を纏わせる以外に魔法も使えたのですね…。
「カリュちゃん…俺の事なんだと思ってるの?」
「剣に魔法を纏わせて戦う人?」
「いや、まぁ確かに剣使ってる方が楽だし手っ取り早いから剣使ってる事が多いけどさ…」
ありゃ…、思っている事を素直に言い過ぎましたかね?ライデンさんが落ち込んでしまいました。
「まぁ仕方ねえんじゃねーの?実際、魔法を使うより剣振り回す方が好きなの事実だし。今だって距離があったから魔法使ったけど、カリュが不調じゃなかったら飛び掛かってたろ?」
「そうだけど…」
おや?私を気遣ってくれての行動だったのですか?これはきちんとお礼を言うべきですね。
「ライデンさん、気遣ってくれたのですね。ありがとうございます。そうとは思わず、素直に思っていた事を言ってしまってすみませんでした」
「……うん、何かもういいや。とりあえず進もうか」
そう言うとライデンさんはとぼとぼと歩きだしました。あれ?お礼を言ったのに何故か更に落ち込んでしまいました。これは暫く落ち込んだままですかね?うーん、夕飯は少し豪勢にしてあげるべきでしょうか?ライデンさんは落ち込んだままですが、再び先に進むと幾らもいかないうちに前方にコカトリスが3羽ほど現れました。ですがコカトリスがこちらに気づいた時にはジョンパニさんとスミナさんのエアカッターでお首が胴体とさよならしていました。本当、この人達の強さはふざけてますね。コカトリスがこうも簡単に倒されるなんて…。
あっさり倒されたコカトリスのいた場所までのんびり歩いて行くとそこにはコカトリスの肉と羽が落ちていました。お肉は2つの塊を入手しましたがかなりの大きさなので、夕飯はまたもや鶏肉になりそうです。マヌルとソイユで味をつけてから鶏肉に衣をつけて揚げようかと考えていたら、ふと壁が光っている事に気づいたので皆さんにお伝えしました。
「とりあえずまた魔獣が出る可能性はあるがどんな鉱石なのかも気になるしな。まぁこのメンバーで全滅なんて有り得ないし…一度採石してみるか」
「そうだねぇ。ある程度の魔獣なら僕達がいれば大丈夫だろうしねぇ」
「だな。どんなものが採れるか気になるしな」
「じゃぁ採石しますね」
そう言ってから光っている場所に剣を刺します。1階層で採取出来るミスリルより大きめの鉱石だからなのか、ミスリルより少し硬い感じがしたので何度か鉱石の周りに剣を刺していき、数分かけてやっと1つ取れました。すると、やはり鉱石を採取したからなのか、先程のガーウルフさんが二足歩行したような魔獣が2匹とラムゥのような見た目ですが、ラムゥより大きく毛色が綺麗なオレンジをしている魔獣の集団が出てきました。
「ヤムゥは嬉しいけどコボルトは邪魔だよねぇ」
「ヤムゥ?コボルト?」
「おやぁ、カリュちゃんは初めて見る魔獣かぃ?」
「はい、どちらの魔獣も初めましてですよ。この階層にくるまで見た事はありません」
「コボルトはあの二足歩行の犬でヤムゥはオレンジのもこもこだ」
アスハさんがそう説明してくれました。成る程、あのガーウルフさんが二足歩行しているような魔獣はコボルト、ラムゥに似ているのがヤムゥなのですね。
「因みにヤムゥはラムゥの上位種で、あいつの肉はとても美味い。是非とも肉をドロップして欲しいもんだな」
「賛成だねぇ。あのお肉で焼肉したら最高の…ジンギルカン?になるからねぇ」
「…ジンギスカンだ」
「そうそれぃ!!ジンギスカンの為にヤムゥをジャンジャン倒していこぉ!!」
「おい顔だけ野郎。スミナと私は肉の収穫で忙しい。脳筋はまだ落ち込んでて使えないだろうからお前がコボルトな」
「誰が顔だけだ!!」
「「「お前だ(よぅ)」」
「――――――もういい。俺はコボルトな」
それぞれ攻撃対象が決まったようです。ただ、突撃するスミナさんとアスハさんが涎を啜ったような気がしたのは私の気のせいでしょうか?




