ダンジョンですがなにか?
入ってしまいましたよ、ダンジョン…。岩壁の通路を進むと前回と同じように数十メートルほどで外の光は届かなくなりました。ここからは私の出したライトで周囲を照らします。照らしている範囲は4~5メートルです。因みにアスハさんにどの位の範囲を照らせるのか聞いたら、大体同じ位の範囲を照らせるとの事ですのでお互いに範囲を合わせる必要はなさそうでホッとしました。ってか、よくよく考えてみたら光魔法使えるアスハさんがいるのですから私いらなくないですかね?あ~、帰りたいです。
「カリュ、お前帰りたいとか思ってないか?鉱石見つけられるのはお前しかいないんだからちゃんと探してくれよな」
突然ジョンパニさんが振り返ったと思ったらそんな事を言ってきました。なぜ考えている事がばれたのでしょう?解せぬ…。
「カリュちゃん大きなため息ついてたから嫌がってるのバレバレだよ」
と、クスクス笑いながらライデンさんに言われてしまいました。ため息…うん、無意識に出てたんですね。
「おやぁ、カリュちゃんはダンジョンが嫌いかぁい?」
「いや、好きとか嫌いとかじゃなくてですね、私Eランクなんですよ。なのにこんな≪中の上≫ランクのダンジョンに入るなんて…。もう怖いとしか思えなくて…」
「う~ん、でも、カリュちゃんなら大丈夫だよぅ。それにぃ、万が一何かあってもぉ僕達が守ってあげるからねぇ」
「スミナさん…ありがとうございます」
スミナさん、実はお優しい方なんですね。それに、こんな台詞をサラッと言えるなんてライデンさんとジョンパニさんは勿論ですが、スミナさんとアスハさんもそれなりにお強いのでしょう。そう思ったのでそのままを私が言うとスミナさんは苦笑いで答えてくれず、代わりにアスハさんが答えてくれました。
「いや、私達はCランクだからそんなに強くはないな。だが、安心していい。外での討伐は苦手だがダンジョンなら抵抗なく魔獣を討伐出来るからな」
おぅ…、アスハさんってば何故にそうサラッと強くないと言い切るんでしょうか?と言うかそんなに強くないのにあの自信はなんでしょうね、本当…。それにダンジョンなら抵抗なく討伐出来るとはどういう事でしょうか?疑問に思ったので聞いてみると、どうやらアスハさんの住む惑星とスミナさんの住む惑星は全く違う惑星なのに環境が似ているらしく、2つの惑星共に魔力は存在せず、魔物もいない平和な世界だそうです。なので魔法も魔獣の討伐もこの世界に来てから始めたそうです。最初は魔獣とは言え獣を殺すという事に抵抗を持ったそうですが、この世界でのお仕事と割り切って今は魔獣討伐をしているそうです。ただ、魔獣を捌くのは未だに抵抗があるそうで魔獣の討伐はダンジョン限定でやっているそうです。まぁダンジョンは魔物を倒すと死体はその場から消え、素材だけが残るから討伐に抵抗がないのも頷けます。私も魔獣を捌くのは未だに抵抗はありますが、それでもいつかはやらねばと思っておりますが…成る程、環境の違いが感覚の違いを生むのですね。しかし、魔法が使えなくて一体どう生活をしているのでしょうね?今度詳しく聞いてみたいものです。そんな話をしながら数分進んだところで前回と同じように光っている部分がいくつかある壁がでてきました。皆さんにその事を伝え一度止まっていただき鉱石採取です。
壁にナイフを突き刺すとやはり大して力も入れていないのにその部分がポロっと取れて下に落ちました。鑑定してみると前回と同じく【ミスリル】と出てきました。同じような鉱石がまだいくつかあるのでそれも採取していると奥からレッドガーウルフさん達が何匹も出てきました。
「うむ、意外と数が多いんだな。私はライトに集中しているから皆、後は頼んだそ」
そう言いアスハさんは早々に戦線離脱しております。今回は8匹程のレッドガーウルフさんの群れなのですが、大丈夫でしょうかね?
「うぇ~ん、アスハが逃げたよぅ。仕方ないねぇ。『パラライズ』で痺れさせるから後は男の子達に任せたよぅ」
スミナさんがそう言うと私の横を黒い色をした球体がレッドガーウルフさん達に向かって飛んでいきます。その球体が当たったレッドガーウルフさん達がどんどん倒れていき、その瞬間を狙ってジョンパニさんの魔法とライデンさんの剣戟がレッドガーウルフさん達に次々とヒットしていき戦いは一瞬で終わりました。何というか…皆さん凄すぎませんかね(汗)。
あっという間の戦いを終え、私たちが先に進むと一角うさぎさんの変種の二角うさぎさんが出てきたりスライムやケッコウという魔鶏が出てきたりしました。異常な量の魔獣達なような気もしますが、この位の魔獣であれば私もですがアスハさんでも難なく倒せるようなので、私もアスハさんも戦力となりサクサク倒していきます。
採取しては魔獣を倒してを繰り返して進んで行くと、アスハさんが鉱石を採取した時だけレッドガーウルフさん達が出てくるのではないかと言い出しました。なので試しに鉱石を見つけても採石しないで進んで行くとやはりガーウルフさん達は出てきませんでした。そこで私達は話し合いをして先に進む事を優先する為に一旦採石はやめてダンジョンの全貌を把握する事にしました。
1階フロアはかなり広く、4時間ほど歩きやっとセーフティエリアを見つけたので休憩を兼ねてお昼ご飯にする事にします。
今日のお昼ご飯は、先ほど倒した時にケッコウが落としたケッコウの肉を使って照り焼きケッコウを作り照り焼きケッコウサンドと、キャベトとオネオンを使った野菜スープです。皆さん歩き続けていたので朝食として食べたマスニジやスープはすっかり消費してしまっているでしょうからこれもまた大量に作らねばならないのでしょうね…。一体いくつ作ればいいのかと思わず遠い目をしてしまった私を見兼ねたのか、自分が大量に食べるから申し訳ないと思ったのか、アスハさんがお手伝いをしてくれる事になりましたのでスープをお願いしました。
私がケッコウのお肉を焼いている横で、アスハさんは水魔法でお水を鍋に入れ手際よく野菜を切っていき、鍋にお野菜と固形の何かを入れかき混ぜております。
「今のは何を入れたのですか?」
「コンソメだ。私の国では野菜スープならこれを使うと味に深みが出て便利なんだ」
「成る程、そんな便利なものがあるのですね。と、言うか異世界の物を持ってこれるなんて便利ですね」
「食に関しては私の世界の方が何十倍も進んでいるからな。あの禿野郎も多少の調味料は持ち込みを許してくれているんだ」
「は、禿野郎?」
「神だ、神。あいつは私やスミナの世界の食べ物が好きだからな。たまに私達に料理を作って持ってこさせたりしている位だ。この世界でも再現させたいんじゃないか?」
「はぁ…神様ですか。何というかあれですね、神々しい感じではなく親しみ易い感じなんですね~」
「あれは親しみ易いと言うよりバカっぽいとか軽い野郎って言葉が当て嵌まるやつだな」
神様に向かって中々厳しい事を言われておりますが…まぁ直接お会いしているらしいですし、きっと許されているのでしょう。そんな会話をしながらもアスハさんは手を止めず、私が焼き上げたケッコウを次々とサンドイッチにしてくれ、あっという間お昼ご飯は完成です。朝の2倍はあるので、今回こそは私も食事を堪能できるはずです。
アスハさんの発言を聞いた神様はきっとこう言います(笑)そしてドライな対応?の異世界人達です。
神「ちょっと!!バカっぽいとか軽い野郎とか酷くない?泣くよ僕。」
スミナ「(僕はアスハに賛成だよぅ。)」
アスハ「(真実だろ。ってか飯食ってるから話しかけんな)」