森でお仕事中ですがなにか?(後)
午後も順調に薬草を採取していき3時間ほどで目標の100束になりました。
午前のものを合わせるとカミツ草90束、クルガレ草80束、アコホウ草80束と大量です。
今夜は少しいいお酒を飲んで明日はのんびりするしかありませんね。
どのお酒を買って帰ろうか、何をおつまみにしようかと考えながら足取りも軽く街に戻ろうとしたのですが…なんということでしょう。道の先にこの森では強者になるガーウルフさんが見えるではありませんか。おぅ…何と角ウサギさんでお食事中ですか。うん、角ウサギさんは癖はありますが美味しいですからね、邪魔はしません。
ガーウルフとは低級魔獣で、冒険者の討伐推奨ランクはE、Fランクです。ですがこの森にはスライムや角ウサギなどの低々級魔獣が多く、このような森の浅瀬にガーウルフは滅多に現れない魔獣なのです。
一応私もF級冒険者ですし護身用の短剣はありますが、Fランクになってからは薬草採取しかしてこなかったのです。討伐の経験は薬草採取時に偶然遭遇してしまったスライムや角ウサギを何度か程度で、ガーウルフは初めましてです。
私は冒険者歴は7年目と期間は長いのですが、未だにFランク冒険者です。そしてパーティーに加入はしておりません。ソロ冒険者と言えば聞こえはいいのですが、事実は単なる人見知りがひどいコミュ障です。
ランクアップ時のステータスチェックでは剣や弓の才能は≪低ノ下≫がでました。これは才能がないとの事なので、私ではスピードでもパワーでもガーウルフさんに勝てない自信しかありません。
魔力は≪中ノ上≫と人並みより多めにあるとでましたが魔法も使えません。何故って?魔法は魔法を使える方に師事して魔力循環を教わらないと使えるようにならないそうなのです。
サザーランド帝国の貴族は10歳の時に魔力測定をして、魔力量が≪低≫以外の人は魔力循環を教わるそうなのですが、私は放置されていたので教わっておりませんし、今からどなたかに師事するなんて、人見知りの私にはハードルが高い事なのです。
因みにEランクにランクアップを望むなら、ガーウルフ3匹以上の討伐か、低々級魔獣累積5000匹の討伐をするかなのですが…魔獣と戦うのって怖いじゃないですか、正直。
幸いライレンの街の近くにはこの森があるのでお仕事はありますし、薬草採取をしつつたまに出るスライムや角ウサギ達を攻撃していけば数年後にはきっとランクアップしているはずなのです。ノロノロな歩みですが、未来に希望を持つのは冒険者らしいでしょ?
と、話がそれましたが、まずは今を乗り切る事を考えましょう。
幸いガーウルフさんはお食事に夢中でこちらにはまだ気づいてないようです。なのでこのまま息を潜めてガーウルフさんが過ぎ去るのを待つ事にしましょう。
『命大事に』の選択をする事も冒険者としての判断です、自分の力量に合った行動をする事こそ、中堅冒険者と言えますからね。
冒険者についてですが、ランクはS≫A≫B≫C≫D≫E≫F≫Gとなっております。
S、Aはギルドや国からの指名依頼を受けて討伐やダンジョン探索メインの上級冒険者
B~Dはギルドに依頼のあった中級魔獣の討伐や低~中級と言われるダンジョンの探索メインの中級冒険者
E、Fはギルドに依頼のあった低々級~低級魔獣の討伐や森や渓谷での薬草採取メインの低級冒険者
Gは街の近くで薬草採取や街のお手伝いをする見習い冒険者
簡単に区切るとこのような感じです。