知っている事をお話しますがなにか?②
本日2話目です。
「カリュ、獣人達はその砦を通過していないんだな」
ジョンパニさんがそう聞いてきます。このままお話を続けていいという事でしょうか?
「続けていいよ。ラガールには後で僕から話しておくから」
困った顔をしていたのでしょう。私を見て少し表情が和らいだライデンさんがそう言うので私はジョンパニさんの質問に答えつつ話を続ける事にしました。
「獣人の方達が砦を通過して帝国内を自由に歩いている事はありません。先程も言いましたが、その、獣人の方達は基本隷属の首輪をされて貴族の館などにいますので」
「つまり砦で消えた獣人が隷属の首輪を付けられているって事か?」
「その商人の方のお話では、砦での審査の時に何かの魔法か薬で眠らされてそのまま隷属の首輪を付けられ、強制的に従わさせられているらしいです。そして拘束されて荷車に乗せられ奴隷商の所に運ばれるそうです」
「その商人はなんでそんなに詳しいんだ?そいつも奴隷商の関係者って事か?」
「さぁ。私はあくまでもそこで聞いただけですのでその方が奴隷商と関わりがあるかはわかりません。正直、私はその話が聞こえた時に信じられなかったです。なのでサランダーさんに「本当にそんな事があるのですか?」と聞いたのです。するとサランダーさんは悲しそうな目をして頷き「事実だよ」と言いました。更に「国境の砦は王家の管轄だからね。王家自体が獣人を人として認めていないって事なんだ」とも言っていました」
「んだそれ、許せねぇ」
ジョンパニさんもですがライデンさんもかなりお怒りですね。まぁ当然と言えば当然です。あの国の王族も人族以外の存在を認めていないという事になりますからね。
「…とりあえず奴隷化されてるのは分かった。けど拷問の実験ってのはなんだ」
「それは…その、サランダーさんが教えてくださったのです。サランダーさんは帝国に来るたびに人族以外を見かけない事に疑問を持っていたそうです。不可侵条約があるにしてもあまりにもいなさすぎると。そんな時に帝国に入った獣人が消えるという噂を聞いたのだそうです。そして噂の素を調べていくうちに砦での拘束を知ったそうです。お身内に獣人の方がいらっしゃるそうで、その事実を知った時は怒りが込み上げてきたそうです。そして一人でも獣人の方を助けようと思い奴隷商のある街まで行き奴隷を購入したそうです。その帰りに街中で隷属の首輪を付けられた獣人の方が叫んでいたんだそうです。その獣人の方はどこかから逃げ出した様で、外見は瘦せ細りボロボロの服を着てどこかの貴族の私兵と思われる面々に捕まって連れ戻されていた様子だったそうです。その時に『これ以上拷問の実験台にされるくらいならここで殺してくれ』と泣き叫んでいたと」
「成るほどな。お前は直接見てないんだな。だけどそれが事実の可能性が高いから獣人だけでも呼び戻せと?」
ジョンパニさんがそう聞いてきます。
「はい。獣人の方はあの国にはいかない方がいいと思います。というか、人族以外の方はいかない方がいいと思います。もし私の言うだけでは信憑性がないと思われるのでしたら、サランダーさんに確認して頂いても構いませんよ。お店は南区にあります。商業ギルドを通して呼び出して頂ければ確実なのではないでしょうか?」
「カリュちゃんを信じてない訳じゃないけど、そのサランダーさんという人にも話を聞いてみたいな。ラガールが戻ってきたら商業ギルドに依頼を出してもらおう」
ライデンさんがそう言い今後の対応をジョンパニさんと話し合っていますと、ラガール様が戻ってきました。お顔が少し笑顔になっているので、もしかしたら冒険者の方と連絡がついたのかもしれませんね。
「おい、爺。商業ギルドに連絡してサランダーって奴を呼び出せ。今すぐにだ」
「え?商業ギルド?」
「あぁ、申し訳ないんだが大至急だ。それと、移動希望の冒険者も緊急呼び戻しかけてくれ」
「か、かしこまりました。しかし、冒険者は本部で移動が受理されいた場合、サザーランド帝国のギルド所属になるので呼び戻しの発令は出せません」
「ったく、おぃライデン、本部に連絡して移動の申請を差し止めるようにしてくれ。もし受理されてたら不受理扱いに変えさせろ。その間に爺は商業ギルドに連絡。んでライデンの差し止めが完了次第、緊急の呼び戻しをかけろ」
「えっと、理由はどうしたr「んなもん書類の不備でもなんでもいいだろ。」―――はぃ…」
ジョンパニさんがテキパキと指示を出し、それを聞いたライデンさんが手のひらサイズの長細い箱のような物をだしてきました。その箱のような物に魔力を流しているので、おそらくあれでギルド本部に連絡を取るのでしょう。しかし、南の皆さんは不思議なものを沢山持っていらっしゃいますね。その他にも何かあるのでしょうか?
「爺。トロトロしねえ。さっさと動けや」
「あ、はい…。ってか、ジョンパニ。叔父さんに対してその言葉遣いはどうなんだい。もう少し優しく話せない?叔父さん悲しくなっちゃうよ。昔の君はあんなに可愛かっ「ぅるせえ。さっさとやる事やれや爺」」
「はぁ…、やるよ。やるけどさぁ、もう少し言い方ってものがあると思うんだよ僕は。身内ってのを抜きにしてもさぁ、僕は一応ギルマスなんだよ。せめてそこ位は敬ってくれてもいいと思うんだけどな。まぁあのツンデレも可愛いんだけど、やっぱりちょっとだけ悲しくなっちゃ…フゴッ!!」
おぅ…ジョンパニさんの足がラガール様のお腹にクリーンヒットしました。ラガール様、見事に吹っ飛びましたね。あんなグチグチ言われたらジョンパニさんがキレるのもわかります。確かにジョンパニさんももう少し優しく言ってあげればいいのに…と思わなくもないですが、今のジョンパニさんはお綺麗なお顔が鬼人化しているので下手に何か言ってとばっちりはくらいたくありません。ラガール様に心の中で合掌していたのですが、私は伝えてもらわねばならない事がある事を思い出しました。
「あ!!ラガール様、商業ギルドに連絡する際に『カリュがメロに会いたいと言っている』とも伝えてもらえませんか?」
「うん?サランダーさんて人を呼び出すメッセージにそれを付ければいいのかい?」
「はい、おそらくそれで何を聞きたいか分かってくれると思いますので」
「そうなの?よくわからないけどそれを伝えればいいんだね?」
そう言うとラガール様は何事もなかったかのように商業ギルドに連絡するために部屋を出ていきました。
軽く3メートルは吹っ飛んでいたのにダメージを感じさせないなんて、ラガール様もお強いのでしょうね。あれ?私、ラガール様にどもらなくなってる????
やっと終わった…(笑)
ラガールさんが残念さんと気づいたので緊張しなくなったカリュちゃんでした(笑)