噂について話し合いましたがなにか?
差別的発言があります。
私は噂というものを知りませんので、まずはその噂をライデンに教えて頂きました。曰く
・帝国に獣人が近づくと何か特殊な魔力で砂のようになり消されてしまう。
・帝国に入ったら洗脳魔法をかけられてどこかで管理されてしまう。
・帝国に入る前に耳や尻尾を切り落とさないと入国出来ない為その行為を拒否して殺されてしまう。
と言ったものらしいです。
「カリュちゃんから聞いてこっちの大陸の魔法レベルは分かったから1つ目は可能性が低いと思っているけど、残りの2つについては可能性があると思っているんだ。サザーランド帝国が人族至上主義なのは知っているからね。けれど、その他の種族も住んでいるのに何故獣人だけが?ってのが疑問なんだよね?」
「獣人だけなのは、おそらくですが冒険者ギルドへの問い合わせが関連しているかもしれません」
ライデンさんの疑問にそう答えたのはラガール様でした。
「どういう事だ?」
「ライデン様のご家族もそうですが、獣人族は貴賤に関係なく基本的には家族の仲が良好な人が多いです。ですから冒険者をやっていても、身内がいる場合は必ず連絡を取り合っています。なのに『帝国に行った身内と連絡が取れなくなった』という問い合わせが来るのは獣人族の方が9割です。その都度こちらから帝国のギルドに問い合わせをいれるのですが、『こちらに到着した記録はない』との答えしか貰えないのですよ。では、帝国に行った獣人族だけ連絡がつかなくなるのは何故か?となりそのような噂がでたのではないでしょうか」
「そんな事になってたのか…。確かに獣人族は仲いいよな。エルフも仲の良い家族は多いけど獣人族程じゃないからライデンの家族を初めて見た時はビックリしたな」
「う、うるさい。俺の家族が仲が良いのは認めるけど、お前の家族だって仲良いじゃないか。ジョンパニの場合はお前だけが家族に冷たいだけだろう?」
「それは仕方ねぇだろ、この爺も親父殿もしつこ過ぎたんだよ。毎日毎日ベタベタしてきやがって…10年以上爺達にベタベタ付き纏われて嫌にならない方がおかしいんだ」
「いや、昔の君は本当に天使のようで、外に出すのも怖いと義兄上も姉上も言ってましたし、私もそれに同感でしたからね。あの頃はジョンパニが笑ってくれるだけでその日が幸せに過ごせる程可愛すぎ―――ヒッ!!」
「黙れ爺。んな事よりも今はサザーランド帝国の事だ。カリュが知っている事はなんだ?」
ジョンパニさんがラガール様を一睨みして黙らせて私に話しかけてきました。
「そうだね、カリュちゃん話してくれるかな?」
ライデンさんにもそう聞かれ、私は自分が知っている事を話す事にしました。あ、ラガール様が見えてしまうと緊張してしまうので、視線は見慣れたお2人に固定させて頂きますが…。
「えっと、まず、私はあの国の王都の出身です」
「そうだったのか」
「はい、3年前にこの国に来るまではあの国の王都で冒険者登録をして生活していました。あの国の成り立ちについては皆さんご存じだと思いますが、サザーランド帝国は人族・ドワーフ族・エルフ族・海人族から成る国です。それだけ聞けば様々な種族が住んでいると思われますが実際は人族が8割を占めていて、所謂人族至上主義の国です。人族以外の種族が住んでいるのは元々彼等が住んでいた場所です。彼等は人族とは不可侵条約を結んでいるので、帝国民となっていますが文化などは全く違っており、人族と人族以外の交流は基本的にはありません。また、人族の貴族には人族至上主義で選民意識の強い方々や他種族に対しての差別意識が強い方が大多数います。そういった貴族などはその…ライデンさんの前では言いにくいのですが…」
「大丈夫だから続けて」
「ありがとうございます。その、そういった貴族は、獣人の方達はその…魔獣や獣と変わらないと考えているのです。なので獣人の方があの国に行ったらそのような貴族に強制的に隷属の首輪を付けられて奴隷にされたり拷問の実験台にされてしまうのです。なので冒険者として活動する以前の問題で、ご家族などに連絡をする事も出来なくなっているのだと思います。実際、私があの国で冒険者登録をしてからこの国に来るまでの間、活動しているのは人族の冒険者だけでした」
話していくにつれ、ライデンさんは勿論、ジョンパニさんのお顔も険しくなっていきます。聞いていて気分のいい話ではないので当然ですが、このままお話を続けて、このお2人が冷静に対応してくれるかが不安です。このまま続けていいのか考えていたらラガール様が「人族以外の冒険者がいない?」と聞いてきました。
「は、はい。王都から移動す、る際に、な、何か所か、の、ぼ、冒険者ギルドにも、寄りまし、たが、人族以外の、ぼ、冒険者が、いたと、所は、あ、ありませんでした」
やはりラガール様とお話するのはまだ緊張してしまいますね。
「なぁ、サザーランド帝国ってのは獣人より強い奴がそんなに多いのか?正直言って獣人が人族にそんなに簡単に捕まるとは思えないんだが」
少し冷静になったのかジョンパニさんがそう聞いてきました。
「あぁ…。それはその…」
「カリュちゃん、言いにくい事なのかもしれないけど大事な事なんだ。聞かせてくれないか?」
ライデンさんの目があまりにも真剣なので、私は覚悟を決めました。
「わかりました。今から話す事は私もあの国を出国した後、この街を目指している時に同じ馬車になった商人さん達が話しているのが聞こえてきただけと言う事をまず覚えておいてください。そしてこの話しは正直話す側も聞く側も本当に気分の悪い事です。なので私も何度も話したい事ではないという事を理解して頂きたいです。よろしいでしょうか」
「「「わかった(りました)」」」
皆さんがそう言ってくれたので私が知る限りの事をお話しようと思います。
少しほのぼのと離れましたがもうすぐほのぼのになる・・・・と思います(;^ω^)