見つけちゃいましたがなにか?
後ろの茂みから見た事のないガーウルフさんが現れました。クラの森で普段見かけるガーウルフさんより一回り以上大きく、燃えるような紅い毛色のガーウルフさんです。ガーウルフさんに上位種があるとは聞いた事がありませんが、もしかしてですが上位種なのでしょうか?とりあえず上位種ガーウルフ(仮)さんと呼んでおきましょう。この上位種ガーウルフ(仮)さん、なんだか結構な量の魔力を持っているような気がするんですよね。
お2人に確認しようにも、こちらに気づいていて無視しているのか、本当に気付いていなくて剝ぎ取りに集中いるのかわかりませんが対応してはくれなさそうです。
仕方ありません。接近戦は怖いので通じるかわかりませんがアースバレットで攻撃するしかありません。土塊を10個ほど浮かせ一気に上位種ガーウルフさん(仮)に放ちます。10個全てが上位種ガーウルフさん(仮)に当たったと思った瞬間、なんと上位種ガーウルフさん(仮)が炎を身体から発して土塊を消してしまいました。
「マジ……」
あれって火属性の魔法ですよね。魔力が多そうとは思いましたがアースバレットを打ち消されてしまうのはちょっとピンチですね。これは大声でお2人を呼ぶべきでしょうか?などと思案していたら、私の真横を複数のウォーターニードルが擦りぬけていき上位種ガーウルフさん(仮)を貫きました。
今のはジョンパニさんの魔法ですね。流石です。今はまだニードルが使えない私ですが、もしニードルを出せるようになっていたらさっきの土塊のように消される事はなかったのでしょうか?それとも土魔法自体が先ほどの上位種ガーウルフさん(仮)には効かないのでしょうか?これは後でジョンパニさんに確認しなければですね。などと今の戦いについて考えていたらライデンさんとジョンパニさんが走ってきました。
「「カリュ(ちゃん)!!大丈夫か」」
「大丈夫ですよ。さっきのってジョンパニさんのウォーターニードルですよね?流石ですね~、大きさも威力も凄かったです。私はニードルがまだ出来ないので尊敬します。あ、さっきの魔獣ってガーウルフさんの上位種ですか?この辺では見た事ないのですが…って、どうしたんですかそんな焦った顔して。ハッ!!もしかしてあれってこの森の主とかでしょうか?だとしたら森が変わってしまうとかありませんか?主が変わる事によって生態系が変わるだけでなく、薬草やハーブが生えなくなるとかありませんか?そうなったら困ります!!死活問題です!!」
「はぁ~、いや、うん。それがカリュだよな」
「うん、カリュちゃんってそーゆー子だよね」
お2人を見るととても焦ったお顔をしておりましたので私なりの考えをお伝えしたのですが、なぜでしょう。お2人のお顔が残念な物を見るような表情に変わっていきます。あれ、私の事見てそうなっていますよね、間違いなく…。
「何ですか?何か間違えてますか?」
「先ず、あれは主じゃない。主ってのは森の守護者の事を言うんだ。で、森の守護者は基本的に白か金色ってのが常識だから覚えとけ。それと、さっきのはレッドガーウルフだな。本来は森じゃなくて岩場かダンジョンに生息してるタイプだ。あいつが森にいるって事はかなりの確率で近くにダンジョンが出来ていると考えていいと思う。しかもちょっとランク高めのダンジョンになってる可能性が高い」
「え、本当にダンジョンがあるんですか」
「うん、そう考えて間違いないと思うな。一先ずさっきのとこいつの素材の剝ぎ取りを終わらせたらこの周囲の探索を開始しようと思うんだけど、それでいいかジョンパニ?」
「ああ。早めに確認しなきゃ不味いだろうな」
「じゃあカリュちゃんは少し休憩してて。すぐ終わらせるから」
彼らがサクッと素材の剝ぎ取りを終わらせ、レッドガーウルフさんが現れた方角に向かって探索を開始しました。森の深層から北の方角に向かっているのはわかりますが、それ以外はさっぱりわかりません。彼等は木の幹や草の倒れ方を見て方向を決めているようですが、そんなので本当にダンジョンなんて見つかるのでしょうか?と、言うか本当にダンジョンなんてあるのでしょうか?なんて思っていた時もありました。今私の目の前には地下へと続いている洞窟の入り口のようなものが見えます。記憶に間違いがなければクラの森には洞窟はなく、一帯が森林のみで出来ているはずです。しかもこの入り口らしきものから纏わりつくようなべたべたしたような嫌な魔力が流れてきています。
「あったな…」
「あぁ。間違いなくダンジョンの入り口だな。しかも厄介なタイプだろ、この魔力」
「えぇ、この魔力ってやっぱりやばい感じなんですか?」
「カリュにはどんな魔力を感じてるんだ?」
「なんて言うか、纏わりつくようなべたべたしたような嫌な魔力ですね。触れてはいけない琴線に触れてしまった時のジョンパニさんのお説教に近いです」
「あ″ぁ?んだよ、それ。」
「いや、そうなった時のジョンパニさんって本当にしつこいじゃないですか。あれに近いしつこさと言うかネチネチ感?のような感じです。ライデンさんならわかりますよね?」
「俺に振らないで!!確かに同感だけど、それ以上言わないで!!ってかジョンパニの顔見て!!」
「ライデン…お前もそー思うのか?あ?」
あ…残念エルフから鬼人モードにシフトチェンジしてしまいました。これは…逃げるが勝ちですね。
確か近くに川があったので、残念エルフもとい、鬼人モードエルフさんがライデンさんに迫っている間に薬草やハーブを摘んで魚でも捕まえておこうと思います。
カリュちゃんは逃げるというコマンドを手に入れた(笑)