パーティーに入りましたがなにか?
あの後、ジョンパニさんが全員に風魔法を纏わせてくださり、驚く速さで街の入り口まで戻ってきました。あまりの速さに驚いていた私に気を良くしたのか、ジョンパニさんが門からギルドに向かう道すがらで先程の魔法の説明をして下さいました。
「これは飛空魔法の応用で足元にだけ風魔法を使うんだ。移動時間が短縮が出来て便利だろ?」
と、とても自慢気に言ってましたが、確かにあの魔法は自慢気になっても仕方ない位便利です。
まだ日も傾いていない時間帯なので、ギルドの中は報告に戻って来ている人はほぼおらず人も疎らな感じです。私はジョンパニさんに壁際にあるテーブルにつれていかれ、ライデンさんが受付の横にある申請書の棚から【パーティー追加メンバー申請書】持ってきたので、その場で書かされ渋々提出をしました。書類を出したのが私だと気づいた受付のお姉さんはとても驚いております。それはそうでしょうね。この街に来て3年、ずっとソロで、行っていたのは常設依頼の薬草採取のみだった私が、最近来たばかりの見た目だけは最高(ですが性格は何というか……)なイケメン高ランカーの冒険者とパーティーを組む事になったのですから。
カウンターの他の窓口にいるお姉さん達もこちらをガン見しています。うぅぅ…そんなに見ないでいただけますかね。皆さんの視線が痛すぎます。驚きつつもきちんとお仕事をしてくださったお姉さんのお蔭(?)で無事に書類が受理されてしまいました。これで私も彼らのパーティーのメンバーです(泣)
因みに、このパーティーの名前は【ゼーベテイン】と言うらしいです。お2人の出身である南大陸のエスプス王国の古語で数字の『17』という意味があるそうです。何か思い入れのある数字なのかを聞いたら、「冒険者を始めた時の俺とこいつの年齢」との事でした。古語を知っているのは流石と思いますが、年齢…。ジョンパニさん、考えるの面倒だったのでしょうか?チラリと横を見るとライデンさんはとてもいい笑顔で頷いていらっしゃるので、面倒だったとかではなくお2人で真剣に考えた名前なのでしょうね、きっと。
「よし、じゃあ改めてよろしくな、カリュ。
「俺も指導のフォローはするし、頑張ろうね」
「よろしくお、お願い、します」
お2人共いい笑顔でそう言ってくださいました。受付のお姉さん達がその笑顔を見て黄色い声を上げておりますが、お2人は慣れているのか、そちらを気にする事もなく、ライデンさんは「じゃあ明日からの打ち合わせ兼ねて飯食いに行こうか」と言ってきます。
「本音ではよろしくしたくありません」と、言えるはずもなく、ライデンさんの提案通りに打ち合わせを兼ねての食事の為に、西区の飲食店街にある魔牛料理の有名なレストランに行き、明日からの予定の話し合いを行う事にしました。ここは庶民の味方である養殖の魔牛のお肉から、この辺りにたまにでるバイソンという魔獣のお肉、更には最高級と言われているミノタウロスのお肉などをそれぞれのランク毎に揃えており、お肉の種類からどのランクのお肉にするかや量はどの位にするかなどを細かく指定する事が出来るのが売りのお店です。また、焼き立てのお肉を石板を温めたプレートに載せて出してくれるので最後まで熱々で食べられるのも人気のひとつだと店員さんが教えて下さいました。この街に来てから初の外食。しかも魔牛!!と緊張しつつもテンションが上がっていた事もあり、奮発して自分では滅多に食べないレッドバイソンと言うバイソンの中では下から2番目のランクのステーキを注文してしまいました。
そんなに待たずに料理が運ばれてきます。出てきたお肉はとてもいい匂いで、ナイフがサクッと入る柔らかさに濃厚な肉汁。一口食べてみればお肉の味が濃いので塩コショウのみの味付けでもとても満足です。これは外食が苦手な私でも年に一度位は頑張って外食して食べたくなる味ですね。などと、幸せに浸っていられたのは最初の数口だけでした。
ライデンさんやジョンパニさんから伝えられていく明日からの日程がハード過ぎて、聞いていくうちに美味しいはずのバイソンのお肉の味がどんどんわからなくなっていきました(泣)。
明日からの日程はこのようになっています。
まず明日の午前中で私の装備を揃えて、午前中はクラの森の中で魔法の訓練。お昼食べたら魔法の訓練の続きとお2人との連携の確認。ある程度の形になり次第、ガーウルフさんが本来生息域にしているクラの森の深部まで行き、森の魔獣の生体に異変がないかやダンジョンがあるかの確認。
ダンジョンがあった場合はどの程度のランクにあたるかを調べるために低層階だけでもダンジョンアタックを開始。
サラッと言ってくれてますが、これってかなりハードな日程ではないでしょうか。まず私は戦闘経験がゼロに近いのです。その事とお2人とはレベルが違いすぎる事を考慮して欲しい。お2人と違って低級冒険者だと頑張って伝えてみたのですが、「俺様とライデンが指導するんだから大丈夫」と、背中が寒くなるような笑顔でジョンパニさんに言われてしまい、恐怖で反論できなくなった私は「お願いします」としか言えませんでした。
……………不安しかありません。私生きていけますかね?




