魔力を確認しましたがなにか?
あれから2回程お替わりをしたジョンパニさんとライデンさん。やはり男性の方はよく食べられるのですね。私は1枚で満足させていただきました。オーガの肉…美味しかったです。しっかり火を通したのにパサパサにならず、噛み締める度に肉汁が程よくお口の中に広がり、脂もくどくなく程よく甘みがありました。ただ、普段食べるのは格下と言われるオークの普通種のお肉ばかりですので、こんな高級なお肉を食べてお腹がびっくりしないか不安です…。お家に着くまでお腹がクルクル言わない事を願うばかりですね。
「ふぅ~、美味かった。カリュありがとな」
おぅ…ジョンパニさんの優しい笑顔が出てきました。ここは照れるべきところなのでしょうね。先ほども『俺の顔見て奇声あげるとかありえない』とか言ってましたし…。大半の女性の方はこの笑顔に見惚れたり照れたりするんでしょう。勿論、私もこの笑顔をみると心臓がバクバクしてきます。ただ、トキメキ系のバクバクではなく、恐怖を感じたり見てはいけない異界の物に出会った時のような背筋が凍るようなバクバクなのが残念ですが。
「ところで、カリュちゃんの属性って何?」
私が恐怖と戦っていたらライデンさんが聞いてきました。
「属性…です、か?それ、は、ギルド、に行かない、と、わ、分から、ないのでは、ないの、です、か?」
「いや、あんなもんで調べて知らないやつにまで自分の属性アピールする必要ないだろ。俺、道具持ってるしここでやっちゃおうぜ。簡単だしな」
おぉ…簡単とか言っちゃってます。ですが冒険者の属性確認は魔力循環を覚えたらギルドに行き、受付の横にある掌サイズの各属性の魔石が嵌っている魔力確認台でそれぞれの属性の魔石に手を当てて魔力を流し、反応があった魔石の属性を持っている事になるのですが…。確かにあれは周りにいる方にも丸見えで冒険者にこれからなる人にとっては自分の魔力をアピール出来るのですが、魔力の多さも壁にある【測定器】に表示されてしまうので、魔力量が少ない方や光魔法の使い手は笑われてしまう事もあるのです。(光魔法は光源以外の使い道がないと言われており、ポーターさんが主に使うものです)うーん…魔力量は大丈夫でも、もし光魔法のみだったらと考えると確かにあそこで確認はしたくないですね。
ジョンパニさんは何か確認出来るものを持っていると言っておりました。ここで確認が出来るのならありがたい事です。ですが、属性確認が出来る魔道具とか持ち歩けちゃうとか…ここでも南の大陸の技術力の高さが出てきましたね。
「カリュこれ」
そう言うとジョンパニさんがマジックバックから掌サイズで六角形の何かに取っ手のようなの棒がついた物を出してきて私の手の上に乗せてきました。おぉ…これは見た目は属性確認が出来る魔道具のミニチュア版です。
「それに魔力を流してみろ。属性に反応して魔石が光るから」
言われた通りに魔力を流してみたら赤の魔石と琥珀色の魔石と白の魔石が輝きだしました。
「ふむ、火と土と光か。3種とはまた珍しいな。しかもこの魔力量棒の光り方…やっぱりカリュちゃんは≪上ノ下≫の魔力を持っていたんだね」
「おー、光持ちの≪上≫とかスゲーな、カリュ。」
「ひか、り、ですよ?光源しか、使いみ、道、ないの、に、凄いん、です…か?」
そう言うとジョンパニさんは信じられないという顔をし、ライデンさんは残念なものを見るような目をしてこちらを見てきます。
え?光魔法ですよ。光源以外の使い道なんてありませんよね?さっき頭の中に流れてきた魔法の使い方も光源魔法しか光魔法は流れてきませんでしたし…間違えてないはずなのですが?
「えっと、カリュちゃん。魔法の使い方ってどうやって覚えるかは知ってるよね?」
「はぃ、あの、魔力じゅ、循環が出来る、ようになると、あ、頭のな、中に流れてくるや、やちゅですよね?じょ…属性の確認をし、して、適応しているま、魔法を使う、のが魔導士です。ぼ、冒険者になった時に、ギルドで説明しゃ、されまし、たし、ギ、ギルド教本にも、そ、そう書いてあります」
長く話すのに慣れないからでしょうか。何度も嚙んでしまいました。またライデンさんに笑われ…あれ?ライデンさんが笑ってない。それどころか、ライデンさんもジョンパニさんも眉間に皺をよせてらっしゃいます。
ギルド教本は数年に1度更新される事もあるので、毎年新しいのを読んでチェックしていますが、魔力や魔法についてはこの7年間変わっていません。なので間違えていないはずなのですともお伝えしたのですが、お伝えしたお2人のお顔が益々厳しいお顔になっております。
「はぁ~、おいライデン。これはかなりの問題だぞ」
「だな。これも本部に報告だな。しかし、北は多少遅れているとは聞いていたが、ここまでとは…。そりゃBランカーがこの数年出ない訳だな」
「あ、あの…」
「ん、あぁごめん。あまりの無知さにびっくりしちゃっただけなんだよ」
ライデンさんが笑顔でそう言いますが、無知とはいったい…?