元貴族令嬢ですがなにか?
初投稿です。温かく見守っていただけたら嬉しいです。
私の名前はカリュ。
ガイデンシス惑星の北大陸南端にあるルビナス共和国で冒険者をしています。
このガイデンシスには南北に2つの大陸があり、人族・獣人族・ホビット族・エルフ族・ドワーフ族・海人族が住んでおります。
私は3年前まではアユーラ・カリュエイス・ガイリウスと名乗っており、サザーランド帝国で生活をしておりました。サザーランド帝国は北の大陸の中心から最南端に位置する大国で、国民の8割が人族、残りの2割はドワーフ族や森の奥深くに住むエルフ族と海の中に住む海人族の、所謂人族至上主義の国です。
私ははこのサザーランド帝国で伯爵令嬢として生活をしていましたが、愛情と注目を集めるのが大好きなお姉さまの策略?によって、伯爵家のお金を勝手に使っていたなどというあり得ない罪を着せられ、14歳の時にガイリウス伯爵から廃籍されました。
何故あり得ないと言い切れるかといいますと、それは私の家での扱いが令嬢とは言えないものだったからです。
ガイリウス伯爵家は王都で生活をしておりますが、サザーランド帝国の西側にそこそこの大きさの領地を持つ、伯爵家としては上位の部類に入る貴族で、伯爵夫妻には私の他に長女のミヒャーナお姉さまと弟のセドリックがおります。ミヒャーナお姉様とセドリックは父と同じ空色の髪に母と同じ菫色の目をしており、頭も要領もよく父にも母にもとても愛されております。
私はというと、父方の祖母譲りの麦色の髪に母方の祖父と同じ琥珀色の目をしております。顔かたちこそ姉と似ておりますが、私は姉と違い貴族令嬢にしてはしっかりした骨格に高めの身長です。
人族至上主義の中でも更に差別主義のガイリウス伯爵家にとって、私は貴族令嬢として政略の駒としての婚姻も難しいと思ったのでしょう。成長するにつれ、両親の関心は薄れていき、婚約者探しもされず、お茶会に参加せずに図書室に籠って本を読んでいても怒られる事もなく、淑女教育もされず、なんなら存在を忘れられていたのか、いないものとされていたのか、食事の席に私がいないのが当然のように残りの家族で仲良く食事をしているなんて事も多かったのです。侍女長と執事長だけは私を気にかけてくれたので、ひもじい思いをする事はありませんでしたが、早々に家族との関係改善を放棄した私は8歳からは離れで生活をしておりました。あちらもそうだったのでしょう、離れで生活をしていても何もいわれませんでした。
と、まぁ所謂放置に近い扱いをされていたので、10歳の時に私は街に出て冒険者登録をし、将来は冒険者か平民として生きていこうと考えだしたのです。
伯爵家は弟が継ぎ、姉は侯爵家へ嫁ぐことが決まっておりましたので、あちらとしても私が問題を起こさなければ放置でいいと判断したのでしょうね。ふらふらと外に出ていく私を見かけても何もいいませんでした。
そんな日々が4年ほど続き、そろそろ家を出ようかと考えていたある日の夜。薬草採取のお仕事で使う短剣を磨いていたら伯爵様が突然離れの私の部屋にきました。
「お前はどうやって本宅の中に入った」
数年ぶりに見た伯爵様は開口一番こうおっしゃったのですが、私は意味が分かりませんでした。
「はぃ?」
間抜けな返答になりましたが、私には伯爵様が何を言っているのかわからなかったのです。
「今日、キャリーナの宝石が無くなっている事がわかってな。その時にミヒャーナが泣きながら告白してくれたんだ。お前がこっそり本宅に入り込んでミヒャーナの宝石を持ち出していると。自分の分だけなら耐えられたが母のものに手を出したのを知った今、これはもう耐えていてはよくないと思ったとな。」
「……知りませんけど?」
「嘘をつくな。私も確認したがミヒャーナの宝石が数点とキャリーナの宝石が数点なくなっているんだぞ。そんな事をするのはお前しかいないだろう。大体、ミヒャーナがお前を見たと言っているんだ。」
えーーーっと 何それ?が私の本音です。なぜなら本宅には離れに移って以来1度も呼ばれなかったですし、冒険者としての依頼を受けるのに必死で近寄ってもおりません。
おそらく姉か弟がこっそり売っていたか、手癖の悪いメイドでもいたのではないでしょうかね。
「伯爵様、私は毎日冒険者として依頼を受けているので基本的には朝から日暮れまで街中か王都近くの森にいるのです。そんな私に何ができるというのでしょうか?」
と、一応反論はしたのですが、家族は出来の良い姉の言う事を妄信と言えるレベルで信じており、姉と弟さえいればいいと思っている節がありましたので、姉が言ったそんなウソを信じてしまったのでしょう。
反論した事に怒ったのか、散々罵られ殴られ、着の身着のままで追い出されてしまいました。
冒険者として一番レベルの低い簡単な薬草採取や街の掃除などをして貯めたお金を冒険者ギルドに預けていたので、そのお金のおかげで今の街に移動でき、それ以降私は、名を冒険者登録時に使ったカリュを名乗りこのルビナス共和国にあるライレンの街を拠点として、低レベル冒険者をしております。