魔法使いさんと日常
初投稿です。改善点やアドバイスがあれば遠慮なくお願いします。
「ママー!今日もこれ読んでー!!」
ベッドの中で1つの本を抱えた少女がそう叫ぶ。
「はいはい、今行くからちょっと待ってね。」
夕飯に使用した食器類を洗い終わり、パタパタとスリッパから軽快な音を出しながら台所から子供部屋へ向かう。
「ママはやくー!」
「まず、ちゃんと布団に入って。よし、それじゃ読むよ〜?」
ベッド脇の椅子に腰掛け、小さく揺れるランプの明かりの下で本を手に取る。
「これは “とある英雄のお話” 」
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あるところに1人の青年がいました。
彼は幼少の頃から人よりも剣技に優れ、力もあり、また誰よりも正義感のある男でした。
そんな彼は15になった時、王様から
「そなたに命ずる。その優れた力を使いこなし見事、東の大陸の魔王を討伐せよ。」との命を受けました。
青年はこれを快く受け、王から賜りし聖剣を背中に担ぎ魔王討伐の旅へと向かいました。
道中、山よりもでかい蛇や吸血鬼の王などに襲われ、前途多難でしたが、旅をしている中で見つけた多くの仲間や、様々な神からの幸運に助けられ、最後は見事、〝神剣エクスカリバー〟で魔王の首を討ち取ったのでした。
その後、彼はその名誉を王から世界から賞賛され褒美を賜り、幸せに暮らしました。
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「____とさ。」
おしまいおしまい、と、横を見ればすやすやと寝息を立てる可愛い娘がそこに。
「ふふ、こんな物語が好きなんて誰に似たのか…。女の子なんだからもっと違うのでもいいのに。」
本をベッドサイドの机に置き、ぐーっと伸びをしながら椅子から立ち上がる。
「んー、今日はもう眠いから少ししたら寝よう…。」
音を立てないようにそっと子供部屋を後にする。
今日は3日後の発表会のために“雷魔法の帝級”についての論文を少しでもまとめなきゃいけない。まだ手つけてすらいないし。
よし、と1人気合いを入れ直して2階の研究室へと歩く。
研究室で羊皮紙に羽根ペンをすらすらと走らせること1時間と少し。
うつらうつらと船を漕ぎ始め、気がつくと外は明るくなっていた。
目の前の机には自分の涎のせいで台無しになった論文。
「…さて、今日もがんばりますか!!」
別にこれは朝日が眩しすぎるがために目の防御反応で涙が出ているわけで悲しみから来ている訳ではない。きっと。
―――これはとある魔法使いの日常の1ページ。