プロローグ、落日
完全なる息抜きになりそう(エクアートが詰まったので、完全に異世界の物語をば)
静まりかえる夜。
星の光に照らされ、満月が辺りを明るく見せている美しい風景。木は生い茂り、花は咲き乱れている……まさに楽園とも言える景色。
花畑のそばにある泉には蛍のような虫が沢山光っており、幻想的な雰囲気を醸し出している。
だが、その舞台には相応しくない鉄の塊があった。
大きな剣を持った騎士の鎧が大きな音を立てて1歩、また1歩と突き進んでいるのだ。
だが、その騎士の全長は生い茂る木々よりも遥かに大きく、1歩歩く事に木をへし折っていく。
「進め!!勇敢なる騎士達よ!!」
先頭にいる着飾った巨大な黒い騎士。
他の騎士の一回り程度大きく、背中にはマントを羽織っている。
右手に持っている豪華な装飾のある剣を掲げ、後ろにいる黒騎士達が一斉に走っていく。
「うおおおおおおっ!!」
それを向かい打つために来たのは、同じく巨大な白の騎士の軍勢。
2つの軍勢が衝突した時、戦闘が起こる。
剣が、槍が、魔法が楽園に放たれる。
唐竹割りの要領で斬りかかった白騎士の攻撃は、少し横にすれるだけで簡単に避けられ、カウンターの要領で胴体を真っ二つにされた。
突撃した黒騎士の槍を剣の刃で受け止め、斬り上げる事で槍を弾き飛ばす白騎士。
魔法と魔法がぶつかり合い、その中心から大爆発が起こり、巻き込まれる両軍。
その余波は楽園を容易く地獄に変え、見えるのは鎧の残骸と燃え盛る炎。
機動兵器の頭部が、胴体が、四肢の残骸が短時間で大量に転がっている。
だが、白騎士の軍勢は20に対し、黒騎士の軍勢はその倍以上。圧倒的に数に不利がある。
「ふん、いくら我が騎士達と同じ鎧を揃えたところで、敵ではないわ!!」
そう言ってマントを羽織っている機体は、かかと部分にある小さなキャタピラのようなものを回転させて
突撃する。
レーシングカーのようなスピード。走るのとキャタピラを使って地面を滑るのとでは、人間と車と同じくらいの差があり、そのスピードには白騎士側の機体に対処出来なかった。
弄ばれるように手を切られ、剣を奪われ、その剣で白騎士をぶった斬る。
「貴様ァ!!」
残りが半分となりつつある白騎士の軍勢。その1機が黒騎士のリーダーに向かって走って突撃する。
剣を全面へと構える典型的な突き。
マントを羽織っている黒騎士のパイロットは「フッ」とニヤリと笑みを浮かべ、闘牛士のように身体を少しだけ逸らす、余裕を見せた回避。
突撃した白騎士のパイロットは表情を驚愕に染めた後、直ぐに機体ごと斬られ、爆散する。
「くそっ!!」
「殿下、やはり実装されたばかりの鎧で戦うのは不利です!!急ぎ、撤退を!!」
「……っ!!」
マントを羽織っている白騎士のそばに居るのは、少しだけ草食が施されているグレーの騎士。
マントはないが、頭部と肩に少しの黄色の装飾が追加されている。
「仕方ない……撤退して立て……!?」
殿下と呼ばれた白騎士のパイロットの視界には黒い煙が吹き上がる様子が見えた。
「なっ……!?父上……?」
ゆらゆらと風になびいているマント。呆然と佇む白騎士は、思わず剣を手から離しそうになった。
殿下と呼ばれたパイロットは、剣を握って振り向いた。
「うおおおおおおおおおあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!」
グレーの機体の静止を振り切り、ケモノの咆哮のように叫んだ。
キャタピラのようなものを起動させ、滑るように突撃する。
今のマントの白騎士は、いわばドラッグマシン。
凄まじいほどの加速力は、マントを羽織っている黒騎士を捉えた……!!
ぐしゃあ……!!
マントの白騎士の剣は、マントの黒騎士の胸部を突き刺した。
これで「勝った!!」と思ったのか、ほんの少しだけ手をゆるめてしまう。
「……え……っ!?」
手を緩めた瞬間、自分の腹部に剣が突き刺さっているのを認識するのに、そう時間はかからなかった。
「殿下!!」
グレーの機体がマントの黒騎士に向かって剣を振り下ろす。
その気迫、その勢いは地面を楕円形に、その周りだけ重力を重くしたかのように沈んで行った。
一瞬冷や汗をかいたマントの黒騎士に乗るパイロット。
部下に通信を送り、グレーの機体が剣を振ろうとした瞬間、槍がグレーの騎士の腹部を貫き、機体は糸の切れたあやつり人形のようにドサリと倒れた。
「ちち……うえ……」
コクピットの中が赤く染まり、バチバチとプラズマを放つ。
けたたましくサイレンが鳴り響いた後、マントの白騎士のカメラアイは光を失い、鉄の身体がうつ伏せになって倒れていったーーー
(´・ω・`)らんらん♪