表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

歯車はここに

マシナイズ

作者: 民間人。

 ギギギ……ガガガ……。

 また、今日も、これだ。

 どうやらネジが外れたらしい。いつもいつも、どうしてこうも不調ばかりなのか。

 僕がこの機械を買ったのは一年前、月の綺麗な12月の半ばだった。

 はじめは調子の良かったこいつは、可愛らしく設定をあれこれと準備してくれていて、窓も爽やかで、処理は遅かったが、まぁ当時の心持ちもあってそれなりに期待を寄せていた。


 違和感を覚えたのは一ヶ月ほど使っていた頃で、どうにもロードが長いなぁ、などと思っていると、処理が追いつかないまま突然電源が切れた。

 しばらくの静寂の間、何事かと目を丸くしていると、データの更新が始まり、先程まで残っていたデータがいくつか欠けていた事だ。特別苦労して作ったものでもなければ、作るのに時間がかかるようなものでもなかったが、それが原因で予定が大きく狂ってしまった。


 いつも、こいつはそうしてロードを止め、更新を始めては一部のデータを消してしまう。誰も致命的ではないが、どうにも安心できず、こいつをどうにか修理に出そうとずっと考えていた。


 不良返品しようにも、こいつ自身がそれを拒むかのように悪い事が重なり、多忙なまま放置してきた。しかし、そろそろ本腰を入れようかと考えている。


 ゆっくりと立ち上がり、腰を伸ばして見る。ロード中のまま固まっていた画面が必死に動き出した。


 動き出したかと思うと、遂に疲れ切ったのか溜め込んだ熱のあまりまともに動けなくなり、ぷつり、と電源が落ちた。


「おーい、大丈夫かぁー……」


 電源を入れ直しても反応がない。どうやら本格的に壊れたらしい。


「今度は格安のものはやめておくか……」


 僕は頭をかき、その機械を静かに二度叩いて、「おつかれ」と短く言った。


 そのまま部屋を後にしようとするとき、啜り泣き、消え入りそうな声で「ごめんなさい」と聞こえた気がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ