マシナイズ
ギギギ……ガガガ……。
また、今日も、これだ。
どうやらネジが外れたらしい。いつもいつも、どうしてこうも不調ばかりなのか。
僕がこの機械を買ったのは一年前、月の綺麗な12月の半ばだった。
はじめは調子の良かったこいつは、可愛らしく設定をあれこれと準備してくれていて、窓も爽やかで、処理は遅かったが、まぁ当時の心持ちもあってそれなりに期待を寄せていた。
違和感を覚えたのは一ヶ月ほど使っていた頃で、どうにもロードが長いなぁ、などと思っていると、処理が追いつかないまま突然電源が切れた。
しばらくの静寂の間、何事かと目を丸くしていると、データの更新が始まり、先程まで残っていたデータがいくつか欠けていた事だ。特別苦労して作ったものでもなければ、作るのに時間がかかるようなものでもなかったが、それが原因で予定が大きく狂ってしまった。
いつも、こいつはそうしてロードを止め、更新を始めては一部のデータを消してしまう。誰も致命的ではないが、どうにも安心できず、こいつをどうにか修理に出そうとずっと考えていた。
不良返品しようにも、こいつ自身がそれを拒むかのように悪い事が重なり、多忙なまま放置してきた。しかし、そろそろ本腰を入れようかと考えている。
ゆっくりと立ち上がり、腰を伸ばして見る。ロード中のまま固まっていた画面が必死に動き出した。
動き出したかと思うと、遂に疲れ切ったのか溜め込んだ熱のあまりまともに動けなくなり、ぷつり、と電源が落ちた。
「おーい、大丈夫かぁー……」
電源を入れ直しても反応がない。どうやら本格的に壊れたらしい。
「今度は格安のものはやめておくか……」
僕は頭をかき、その機械を静かに二度叩いて、「おつかれ」と短く言った。
そのまま部屋を後にしようとするとき、啜り泣き、消え入りそうな声で「ごめんなさい」と聞こえた気がした。