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センリちゃん、頑張る②


 突き当りにあった階段を慎重に降りる。確か、さっき『ここは四階だ』と言っていたから、とにかく階を下に行かなければこの建物から脱出は出来ない。

 途中何度も修道士達と鉢合わせしそうになりながらも、センリは何とか建物の一階まで辿り着いた。


 センリがいるのは、ここ二日ほどを過ごしたのと同じ建物だったらしく、一階まで降りると見知った場所が増えてくる。出口の場所も多分、分かる。

 だが、その前にセンリは探さなければならないものがあった。


(たしか、この廊下の奥から二番目……だったと思うんだけどなぁ)


 廊下を通り過ぎる修道士の男性を物陰でやり過ごしながら、記憶を辿る。

 そう、確かに奥から二番目の部屋で、元から着ていた服やマント、荷物一式を預けさせられたのだ。


(あれだけは、絶対に取り返さなきゃ……!)


 人の気配が無くなったのを見計らって物陰から飛び出し、転びそうになりながら廊下を走る。

 目的のドアのノブを回すと、やはりといったところか鍵が掛かっていた。

 鍵の束の中から苦労して鍵を探し出し、解錠。

 と、廊下の向こうから人の声が聞こえてきたので、慌てて中に入る。

 内部は倉庫のようで、大きな木の棚が何列も並んでいた。


「…………あった!」


 センリは自分の荷物一式が押し込められた竹の籠を見つけると、きょろきょろと辺りを見回した後、


「……誰もいないし、大丈夫だよね?」


 と、黒いローブの裾に手をかけた。


  ***


「脱走……ですか」


 修道士の一人に恐る恐る告げられた司教ウォルフガングは、貼り付いたような笑顔でそう聞き返した。


「はい……。ですが、すぐに見つかるかと」


 この男は何という名だったか。ウォルフガングは目の前の情けない修道士の名前を思い出そうとしたが、まったく思い出せる気がしなかったのですぐにやめた。


「とにかく、こんな夜中です。一人で歩いては危険でしょう。早く見つけて保護してあげなければいけません」

「はっ……」

「鍵を持ちだしているのでしたら、敷地の外に出てしまうかも知れませんよ。寝ているものも起こして、全員で捜索にあたってください。さぁ、早く」


 男は何度もペコペコと頭を下げて司教の部屋を退出していった。

 そして扉が閉まった瞬間。


「……クソがっ!!」


 ウォルフガングは怒りに任せて、横においてあった椅子を蹴り飛ばした。

 木製の椅子は壁に当たるとミシっと鈍い音を立てて床に落ちる。


「アイネ! いるか、アイネ!?」


 ウォルフガングが半ばヒステリー気味にその名を呼ぶと、先ほどの男が出て行った扉からアイネが静かに入ってきた。


「聞いたな!? あの小娘、優しくすればつけ上がりおって……! 足を折ってでも連れ戻せ! いいな!?」


 肩でぜーぜーと息をしながら捲し立てるウォルフガングに、


「……はい」


 アイネは簡潔にそう答えると、静かに部屋を立ち去った。



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