エピローグ
海の上を、一匹の黒いドラゴンが飛んでいた。その背に二人の人物が立っている。
邪神ヤミと終末王ハクア、そして悪魔Ωだ。現在、この二人と一匹は未開の大陸に向かっている。
外法教団の本拠地、世界樹の神殿に。
『で、だ・・・。世界を計画通りに滅ぼしたとして、その後どうやって再創造するつもりだ?』
ヤミがハクアに問い掛ける。対するハクアはにやりと嗤う。
「その為に、お前を仲間に引き入れた」
『・・・?』
ヤミはよく理解出来ない様子で、二人を見る。Ωが邪悪な笑みを浮かべて補足説明をする。
「つまりだ。ハクアがお前と融合する事で、霊的に更なる高次の存在へと至る。其処で、霊的なビッグバンを起こすんだよ。その霊的ビッグバンが世界の創造に繋がる鍵だ」
『ほう・・・。つまり、俺を取り込もうと?』
「そういう事だ」
ハクアがそう言うと、ヤミは面白そうに嗤った。その笑みに、ハクアは意外そうな顔をした。
その意外そうな顔に、ヤミは怪訝そうに問う。
『・・・ふむ、どうした?何かおかしな事でも?』
「いや、別に?只、取り込まれると聞いて拒絶しないんだな」
『ほう、拒絶されると思っていたようだな』
ヤミの言葉に、ハクアは頷いた。確かに、場合によっては力ずくで従える事も考えていた。だが、どうやらそれも杞憂だったらしい。ハクアは少し、肩透かしを食らった気分だ。
Ωも、それは同じだった。場合によっては、この場で暴れる事も考えていた。
「別に、それも予想していただけの話だよ」
『あの時、言ったであろう?我は永らく飽いていたのだ。なら、何処までも付いて行くさ』
「ああ・・・、そうか・・・・・・」
ハクアは納得して、頷いた。思い出すのは神大陸の地下深く、タルタロスの間での事だ。自身の前に立つ二人を前にして、邪神はあっさりと軍門に降る事を了承した。
やけにあっさりと軍門に降った邪神に、二人は訝しんだ。しかし・・・
そんなハクアとΩを前に、ヤミは心底面白そうに笑みを浮かべて言う。
『我は永らく飽いていたのだ。故に、お前達のような者が生まれた事を嬉しく思う』
つまり、こういう事だ。この邪神にとって、終末王と悪魔Ωの誕生は望外の喜びだったという。故に二人に付いてゆく事を決めたらしい。深い考えなど無い、本能で決めた事だ。
故に、自ら決めた事に文句は無い。他でもない、自分自身が決めた事だからだ。自身の決めた事に後から文句を言うのは愚かな事だ。そう、ヤミは考える。
だからこそ、その末に取り込まれる事になろうと構わないのだ。面白ければそれで良い。
その答えに、ハクアは嗤う。静かに、愉快そうに。
「なら良い。では、計画を続行しよう」
全ては、新世界の為に・・・理想郷の為に・・・・・・




