エピローグ
・・・ある場所に巨大な神殿が建っていた。神王すら感知していない神殿に、その二人は居た。
終末王とΩの二人だ。この神殿こそ、この二人の・・・組織の拠点。結社外法教団だ。
終末王は空の一点を睨み、険しい表情で呟く。
「そうか、奴らは生き延びたか。やはりあの少年が今後の計画の最大の障害になるだろうな」
「くはっ、そうだろうな。そうなるだろうともさ」
Ωはさも愉快そうに頷いた。どうやら、Ωにとってこの状況はむしろ面白い部類に入るらしい。終末王はそんな悪魔の反応に、眉をひそめる。あの少年とは、無銘ことシリウス=エルピスの事だ。
しかし、すぐに溜息とともに終末王も笑みを浮かべた。その笑みは、好戦的で獰猛な獣のそれだ。
終末王は今、静かに闘志を燃やしているのだ。
「まあ良い。そいつがどれだけ厄介な相手だとしても、そいつごと叩き潰せば良いだけの話だ」
「くははっ、そうこなくっちゃな。それでこそ、我が主だ」
Ωは愉しそうに嗤う。それこそ、獲物を前にした獣の如く。密かに舌なめずりする。
「もちろん、その時はお前も付いて来てくれるんだろう?ディー」
「ああ、それが契約だからな。俺を愉しませる限り、俺は何処までもお前に従うさ。我が主」
Ω・・・ディーと呼ばれたこの悪魔と終末王。実際は只の主従関係ではない。ある種の契約を交わした対等な関係なのである。要は契約による主従なのだ。
その契約こそ、娯楽を与え続ける代わりに絶対服従するという物だ。要は、この悪魔に娯楽を与える限りこの悪魔は絶対に服従し続けるという物だ。それが、簡単に見えてなかなかに難しい。
ある種、悪魔は契約に従順だ。一度契約を交わせばその契約を反故にしない限り悪魔から破る事は滅多にありはしないのだ。まあ、悪魔と契約を交わす事自体が命にかかわるのだが。
もし、悪魔との契約を反故にしよう物なら。その直後には魂を八つ裂きにされて食われるだろう。
しかし、この悪魔Ωを契約とはいえ服従させた事は意外と大きい。この悪魔こそ、かつて単一とはいえ一つの宇宙を滅ぼし尽くした純粋な悪魔なのだから。
悪魔Ω、強力な不死性を持ち、単一の宇宙を滅ぼすほどの力を持った大悪魔。純血の悪魔。
故に悪魔は嗤う。果たしてこの男、終末王は一体何処まで自分を愉しませてくれるのかと。
そして、その終末王も自身の計画の成就を願い、闘志を燃やす。獰猛な獣の如く嗤う。
「さあ、終末を始めよう。その先に待つ、新たな世界を創造する為に」
その為に、自分は絶対の悪に堕ちると決めたのだから。その為に、固有宇宙に目覚めたのだから。
終末王は嗤う———さあ、終末を始めよう。新たな天地の為に。




