表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無銘の世界~personaluniverse~  作者: ネツアッハ=ソフ
世界会談編
61/168

10、告白?

 世界会談から帰ってきてその日の夜。僕は一人、部屋で物思いに(ふけ)っていた。


 考えているのはリーナの事だ。僕の、リーナへの(おも)いの事だ。


「・・・・・・・・・・・・」


 果たして、僕はリーナの事をどう思っているのか?僕はリーナの事が好きなのか?


 ふと、頭に浮かぶのは僕の帰りに涙ながらに喜ぶリーナの表情。その顔が、僕の脳裏に(よぎ)る。


 その表情が、僕の心を酷くざわつかせる。


 リーナは僕の事を愛してくれている。それこそ、僕が望めばその身すら差し出すだろう。彼女が僕に好意を寄せる理由は、解る。リーナは僕の内面を見て、それを理解した上で僕を好きでいてくれる。


 そう、リーナは僕の心を理解した上で、それでも僕を心から愛してくれているのだ。僕に心底から好意を寄せてくれているのだ。何の打算も無く、僕に好意を向けてくれる。


 そして、僕はそんなリーナに救われた。それもきっと(うそ)ではない。そんなリーナの深い愛情に、恐らく僕は救われたのだろう。だったら、僕はその想いに応えるべきなのだろうか?


 けど、不純な理由でその気持ちに応えようものなら、きっとリーナは傷付く。僕はそれが、怖い。


 そうだ、僕はリーナを傷付ける事が何よりも怖いんだ。


 僕は、果たしてリーナの事を好きなのか?愛しているのか?解らない、自分で自分が解らない。


 ・・・こんっこんっ。ドアをノックする音が、部屋に響いた。リーナか?


 僕は、何となくそう直感した。ドアをそっと開ける。其処には・・・


「あの、ムメイ?私・・・その・・・・・・」


 やはり、其処にはリーナが居た。薄いネグリジェ姿で、薄っすらと頬を()めて立っている。


 ・・・ああ、またか。僕は半ば何時もの光景になりつつある展開にそっと頭を抱えた。リーナはもじもじと頬を染めながら、僕を上目遣いに見る。ふむ、一応羞恥心(しゅうちしん)はまだ残っていると?


 けど、リーナが来てくれた事を喜ぶ僕が居る事も・・・また事実だろう。そう理解している。


 僕は、リーナのその想いが純粋に(うれ)しい。きっと、何の打算も無く。只、嬉しい。


 ・・・まあ、ともかくだ。


「とりあえず、入れ。流石にその格好で屋敷内をうろつくなよ」


「う、うん・・・・・・」


 リーナを部屋に入れて、そのまま鍵を閉めた。やましい理由ではない。こんな状況、あのメイドに見られたくないからだ。断固、やましい理由からではない。


 ・・・うん、一体誰に言い訳しているんだろうか?僕は?まあ良い。


「で、リーナ。今回は一体、何の用だ?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 返事が無い。リーナは黙って(うつむ)いている。うん?


「・・・・・・リーナ?」


「っ、ムメイ‼今すぐ私を()いて!!!」


「っ、は・・・・・・?」


 いきなり、リーナが僕に向かって言った。その言葉の意味に、一瞬理解が出来なかった。


 僕は呆気に取られて、声が上擦(うわず)ってしまった。いや、一体何を言っているのだろうか?


 抱いて?えっ、抱いて!!?


 ・・・・・・うぇっ!!!???


 いや、言葉の意味は解る。しかし、意味が解らない。一体何故?僕は軽く混乱している。しかし、それをどう捉えたのか、リーナは泣きそうな顔になる。そのまま僕に(すが)り付いた。


「お願い、ムメイ・・・。今すぐ私を抱いて・・・・・・」


「え、ちょっ・・・。待て待て待て、一体どういう事だ?説明を(たの)む」


 そう言ってリーナを引き離すと、リーナは泣きそうな顔で僕を見上げていた。その顔に、思わずドキリと胸が高鳴るのを感じる。今すぐ、リーナを滅茶苦茶にしたい衝動に駆られる。


 しかし、僕はそれを何とか抑え込んだ。今はそんな時ではないだろう?


 何とかリーナを説得しようと、リーナと向き合ったその瞬間・・・


 僕の視界が、リーナの顔で一杯になった。


「っ、んむっ・・・・・・」


「んっ・・・・・・」


 唇を奪われた。リーナに。


 僕は思わず、目を白黒させる。意識が白く塗り潰される。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?


「ん、んんぅっ・・・!!?」


「・・・・・・ん、ちゅっ」


 ちょっ、ま・・・・・・。僕は内心(あせ)る。焦ってリーナを無理矢理引きはがす。


 リーナは真っ赤な顔で、それでも涙ながらに僕を真っ直ぐに見ている。


「ぷはっ・・・リ、リーナ?一体・・・・・・」


「っ、ムメイ・・・私、貴方を愛しているの。大好き・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・それは」


 それは、理解している。リーナが僕を愛してくれている事は、確かに理解している。しかし。


 僕は思い留まる。しかし、いやでも・・・・・・。


 僕は果たして、リーナの想いの深さまで知っているのか?僕は今、涙ながらに僕を見詰める少女の想いを正しく認識しているのか?僕の気持ちは一体?


 リーナの瞳を真っ直ぐ見る。リーナも僕の瞳を真っ直ぐ見る。


 ・・・リーナは言った。


「ムメイ、私は貴方の事を愛しているの。貴方に愛して欲しいとは言わない。けど、どうか今だけは」


「・・・・・・リーナ」


 リーナは、僕の瞳を真っ直ぐ見詰めて言った。


「ムメイ、貴方の事を愛しています。本当は、ムメイに私の傍から離れないで欲しい。ムメイが傷付くのが何よりも(こわ)いから、貴方に私の傍から離れないで欲しい。けど・・・」


 ああ、そうか・・・・・・。僕はようやく理解した。


 リーナはきっと、リーナなりに僕の事を想ってくれているんだ。だから、せめて僕への想いを振り切る為にこんな事を言ったんだ。僕の胸に、暖かな気持ちが()いてくる。


 僕はリーナの肩にそっと手を置き、顔を近付けた。リーナは静かに目を閉じる。


 リーナのその唇に、僕はそっと口付けした。唇を重ね合わせるだけの、そんな軽いキス。


 ぎゅっと、リーナの肩に置いた手に力が籠もる。リーナを滅茶苦茶にしたい衝動が湧き上がる。それを必死に抑え込んだ。この想いが、リーナに対する恋心から来るのか。それとも、只の欲情か。


 それは解らない。けど、僕はリーナの事を大切に想っている。それは間違いない。


 やがて、唇を離すと僕とリーナは(うる)んだ瞳で見詰め合う。僕は意を決したように言った。


「リーナ、僕は君の事を本当に愛しているのか解らない。けど、リーナが居たからこそ、心底から救われた事を自覚している。僕にとって、リーナは何より大切な存在だ」


「うん・・・・・・」


 リーナは潤んだ瞳で僕の瞳を真っ直ぐに見詰める。僕は、その視線を真っ直ぐ受け止めて言った。


「だからリーナ。どうか僕がちゃんとリーナへの想いを自覚するまで待って欲しい」


「・・・・・・うん」


 リーナが顔を俯かせる。そんなリーナの顎をそっと持ち上げ、僕は彼女に口付けした。


 胸の奥が、締め付けられるように痛む。この気持ちは、初めてだ。けど、不思議と不快では無い。


 この気持ちは一体、何だろうか?


「んっ・・・」


 リーナの甘い声が()れる。時間がやけにゆっくりに感じた。


 僕は彼女の事を本当に愛しているのか?それとも、只の大切どまりなのか?それは解らない。


 けど、それでも・・・・・・


 僕は、リーナの事を大切に想っている。それだけはきっと、間違いではない。


 そう信じているから。きっと、それだけは真実だ。


          ・・・・・・・・・


 次の日。清々(すがすが)しい朝。


 窓から暖かな日差しと共に小鳥のさえずりが聞こえる。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 僕は、心地良い日差しと共に目覚めた。隣には、リーナがすこやかに寝息を立てて寝ている。


 無論、互いに寝間着(ねまき)は来ている。別に裸では無い。


 別に、一線を越えた訳では無い。けど、不思議とリーナの事が愛しく思えた。とても優しい気持ち。


 もう、言い訳のしようも無い。僕は、彼女の事を・・・。


「ああ、なるほど・・・・・・」


 僕は、リーナの髪をすくように()でた。今、僕は自分が優しい表情で笑っている事が解る。今、僕は彼女の事を何よりも愛おしく思っている。こんな気持ち、僕は初めてだ。


 そう、きっと僕は。彼女の事を・・・・・・


「僕は、リーナの事が大好(だいす)きなんだ」


 この時、僕は初めて自分の気持ちに自覚した。そう、僕はリーナを愛していたんだ。


 そっと、僕はリーナの(ほお)にそっとキスをした。

ついに、無銘が自身の想いに自覚しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ