エピローグ
・・・現在、僕は王城の訓練場で兵士達の訓練に交ざっていた。その訓練に、騎士達や兵士達は皆一様に唖然とした表情をしている。というか、皆引き攣った顔をしている。
それは何故か?その理由は・・・
僕一人でビビアン騎士団長とクルト王子の相手をしていたからだ。要は一対二である。
「・・・いや、何でだよ?」
思わず僕は突っ込んだ。突っ込まずにはいられなかった。何故、こうなった?最初は確かに僕はビビアン騎士団長と一対一の訓練をしていた筈である。なのに、気付いたらそれに王子が交ざっていた。
騎士団長も王子も満面の笑みで僕に向かってくる。その笑みは、まさしく戦闘狂のそれ。
・・・・・・うん、意味が解らない。理解出来ない。っていうか、何だこれ?
最初は騎士団長と一対一で訓練をしていた。しかし、僕と騎士団長の訓練を見た王子が何を思ったのか唐突に僕と騎士団長の訓練に交ざってきたのだ。
最初は僕も騎士団長もかなり驚いた。しかし、王子の次の一言で僕は更に驚く事になった。
「俺も交ぜろや!!!」
うん、意味が解らない・・・。
最初は三つ巴の乱戦になるかと思いきや、やがて事態は予想外の方向に向かった。僕が予想以上に二人を相手に互角以上に戦ったのだ。その僕の奮戦に、二人の闘志に火が点いた。
そして、気が付けば僕は二人を相手に一対二の展開になっていたのである。ちくしょうめ!!!
「す・・・すげえっ。あの少年、団長と王子の二人を相手に互角に戦っているぞ?」
「エルピス伯爵の息子は化物か?」
「あ、ありえねえ・・・・・・。ありえねえぞ、おい」
周囲の兵士達や騎士達は口々に愕然とした声を漏らしている。しかし、化物って・・・。
まあ、僕自身二人を相手に互角に渡り合っているのだから当然か?この二人は一応、王国でも最上位の実力者な訳だしな。そう考えると、なるほど僕も化物じみていると思う。
「あわっ・・・、あわわっ・・・・・・」
僕と二人の訓練を見ていたリーナはどうしたら良いのか解らず、あわあわとうろたえていた。
本当にやれやれだ。僕は心底からの溜息を吐いた。結局、この訓練は日が沈むまで行われた。
・・・騎士団長と王子は満足そうにしていた。そんな二人に、僕は精神的疲労を覚えたのだった。
全く、やれやれだ。
・・・・・・・・・
神大陸、神王の神殿。其処に、神王デウスは居た。傍には最上位の神が二柱。
「・・・最近、人大陸において魔物の数が増え、活発化しているようです」
「報告によると、その背後に何者かの存在が暗躍しているとの事です」
二柱のその報告に、神王はふむと頷いた。その表情は、何時になく真剣だ。
自然、二柱の神にも緊張が走る。
「・・・どうやら、動き出したようだな」
「・・・?動き出した、ですか?」
怪訝な表情をする二柱の神。その疑問に答えず、神王は思考に没頭するのだった。




