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無銘の世界~personaluniverse~  作者: ネツアッハ=ソフ
エルピス領編
33/168

if、もし、父の誘いに乗らなかったら

 時は少し、巻き戻る・・・。


「シリウス、俺の屋敷に来い。俺の屋敷に住め」


 その言葉に、僕は(わず)かに考える仕種をした。考え、(なや)み、そして・・・。


「それは・・・、僕に息子として屋敷に来いという事ですか?」


「・・・そうだ。お前の気持ちは良く理解した。なら、俺の屋敷に一緒に住み、他者(ひと)と生活する事で人の気持ちを知り、本当の強さを学ぶのも良いんじゃないか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 長い黙考(もっこう)。僕はリーナの方をちらっと見る。


「ムメイ・・・」


 ・・・リーナは僕の服の裾を(つか)み、僕を見上げる。その顔は、僕が自分の傍から居なくなる事を恐れているような表情だ。不安そうな表情(かお)


 僕は考える。僕は一体どうするべきなのか?此処で、どちらを選ぶべきなのか?


 考えて、考えて、考えて・・・。やがて、僕はその思考(しこう)を投げ捨てた。


 そんな思考、馬鹿馬鹿しい。


「すみません。その(さそ)い、断らせて貰います・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・・そうか」


 父は、残念そうに苦笑した。残念そうに苦笑して、僕の頭にそっと手を置いた。


「お前がそう言うならもはや止めん。お前の好きにしなさい」


「・・・・・・はい」


 ・・・そう言って、僕はレイニー伯爵の屋敷を出た。


          ・・・・・・・・・


 レイニー伯爵領の町を抜けてしばらく。現在、魔物の森の中。


 僕はリーナと森の中を歩いていた。


「・・・・・・本当に良かったのか?僕と行動を共にして・・・」


「・・・・・・私、ムメイと一緒が良い。それとも、私と一緒は嫌?」


 リーナが不安そうな顔で、僕の顔を(のぞ)き込む。僕は苦笑を浮かべ、リーナの頭を撫でた。


「そんな事は無いよ・・・」


 そう言って、再び僕は前を向く。瞬間、僕の身体は硬直した。


 僕達の目の前に、何時の間にか一人の青年が立っていた。細身で華奢(きゃしゃ)な体格をした、不気味な笑みを浮かべた謎の青年。不気味で不吉な気配を(ただよ)わせている。


 一目で僕は直感した。この青年は危険だと。


「よう、邪魔者。黒幕(ぼく)自ら登場してやったぜ?」


 不吉な笑みを浮かべてそう言う青年。僕は怪訝な表情をする。


 しかし、僕の額には嫌な冷や汗が伝っている。この青年、かなり強い。そして危険だ。


「黒幕だと?」


「そう、黒幕だ。お前、オーナー公爵に()かせていた僕の影を倒したろう?」


「っ、お前があの魔物の主か⁉」


 僕の頭の中を、警鐘(けいしょう)ががんがんと鳴り響いている。逃げろ、此処は逃げた方が最良だと。


 青年の顔に張り付いた笑みが更に深くなる。それが、とてつもなく不気味だ。


「さようなら、少年。残念ながらお前の人生は此処(ここ)までだ」


 瞬間、青年の影が膨張し僕達の方へと伸びてきた。僕はリーナを抱きかかえ、後方に跳び退く。


 しかし、影の方が圧倒的に速い。そして、影はその牙を()いた。


 バリバリボリボリムシャムシャゴリゴリッ!!!


「あああああああああああああああっ!!!!!!!!!!!!」


 瞬間、僕の意識は暗転した。

・・・最後、とてつもなくホラーっ!!!

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