エピローグ
次の日の朝・・・。こんっこんっとドアがノックされる。
「シリウス様?朝でございます・・・」
そのメイドの名前はメアリー。エルピス家のメイドの一人である。
少しそそっかしい所と妄想癖の激しい所があるが、これでも意外と有能なメイドなのだ。
「シリウス様?・・・開けますよ?」
しばらくドアをノックしても返事が無いのを確認して、メアリーはドアを開ける。そして、硬直。
「・・・すぅーーーっ、・・・すぅーーーっ」
「・・・・・・んっ、ムメイ」
シリウスとリーナ、二人が揃って寝ていた。しかも、二人抱き締め合って仲良く寝ている。
———まあ、実際はリーナがシリウスを抱き締めて寝ているのだが。傍目には二人が抱き締め合って寝ているように見えるだろう。
「・・・・・・えっと、シリウス様?」
「・・・・・・ん、んん?・・・・・・・・・っ!!?」
シリウスの綺麗なスカイブルーの瞳が開き、やがて驚愕に見開かれた。その瞳は混乱の極みにある。
恐らく、この状況を理解し切れていないのだろう。しかし、その光景を直接目の当たりにしたメイドには全く関係ない。
「・・・えっと、ごゆっくり~」
そのまま、メアリーはそそくさと立ち去った。さも、全て承知していますと言わんばかりの顔で。
その日、メイド達の間でシリウスとリーナは非常に仲睦まじいとの噂が広まった。
・・・・・・・・・
で、現在に至る訳だ。僕は今、父の書斎に呼び出されている。
「で、だ。聞きたい事は他でも無い。シリウス、お前何時もリーナ嬢と一緒に寝ているそうだな?メイド達の間で噂になっているぞ?」
「・・・・・・・・・・・・はい」
僕はバツが悪そうに答えた。その返答に、父は溜息を一つ吐いた。
「・・・シリウス。お前、リーナ嬢の事が好きか?」
「・・・えっと、好きか嫌いかで言えば好きです」
その返答に、更に溜息を吐く父。
「つまり、好きと言ってもその程度という訳か・・・」
「えっと、出来れば言い訳をさせて貰えますか?」
「何だ?」
父は僕の瞳を真っ直ぐに見る。その視線に、僕は少し言い辛そうにしながらも言った。
「えっと・・・実際は僕の部屋にリーナが来て、僕のベッドに潜り込んでいたようで。ほとんど僕が寝ている間に彼女が入ってきてるんですね・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
その返答に、流石の父も唖然としたらしい。僕自身、頭が痛くなってくる。どうしてこうなった?
なんて失態だ。こんな事、修行時代では考えられなかったのに。
父も痛そうに頭を抱える。
「・・・あー、もう良い。解ったから行っていい」
「・・・・・・すいません。失礼しました」
そう言って、僕は書斎を出ていった。・・・本当、どうしてこうなった?
リーナの愛は限界知らずです。




