プロローグ
日本のとある駅のホーム。其処に、燃えるような黄金の髪に輝く黄金の瞳の青年が居た。
現代の日本においても目立つ事この上ない風貌の男。明らかに、この場では異彩を放っていた。
しかし、現在駅のホームでは全く違う理由で騒ぎとなっていた。その理由は・・・。
・・・投身自殺だった。一人の青年が、電車に自ら身を投げ出して自殺した。ホームには現在、駅員が慌ただしく駆け回り、好奇心に駆られた野次馬が集まってくる。
そんな中、黄金の髪の青年は異様な程に目立つ事無く、自殺の現場を只見詰める。やがて、青年は一つ溜息を吐くとその場から消え去った。そう、消え去ったのだ。
・・・まるで、最初から其処に黄金の髪の青年など居なかったとでも言うかのように。
・・・・・・・・・
僕の人生は、一言で言えばクソだった。
僕自身、今でもそう思っている。
僕は一言で言えば、人間不信だ。それも、極度の人間不信だった。
恋愛どころか、誰かを好きになった事すら無い。現実に漫画やアニメのヒロインのような魅力的な女性などいない。居る筈も無い。
漫画やアニメのヒロインはどれも現実よりも魅力的に書かれる。当然の事だ。
現実は空想よりも無情だ。そう、僕は悟った。
周囲の環境が、僕の人間不信を更に加速させていった。僕は何時も孤独だった。
小学生の頃から執拗な虐めを受け、あまり積極的に人と関わろうとせず、社会に出てからはパワハラの格好の的となった。
目付きが気に食わない。お前の人格は歪んでいる。若造が上司に口答えするな。虐めを受ける方に問題があるのでは?
うるさいよ!!!
僕は余計に塞ぎ込んだ。周囲に頼るべき人など、頼れる人など居なかった。
むしろ、僕は人を頼ろうとしなかった。僕には周囲の全てが敵だった。
誰にも頼る物か‼この程度、自分の力で切り抜けてやる‼誰かの力など、頼ってなんかやるもんか‼
そう、僕は思っていた。
しかし、そんな僕を周囲は嘲笑った。虐めは更に加速する。
何かがあると全て、僕のせいにされた。
お前が悪い。全部お前が悪いんだ。どんな風にお前は育って来たんだ。
そんな事を散々言われ、周囲もそれに同調する。
ふざけるな!!!一体、僕が何をした!!!
お前等、一体何様だよ!!!
僕は、完全にスケープゴートだった。
結局、僕は最終的に会社の都合で辞めさせられた。会社の生贄にされた訳だ。
・・・僕は、完全に壊れた。
「・・・・・・・・・・・・もう、何もかもどうでも良いや」
僕は、失意の内に自殺した。迫る電車に自ら飛び込んで、そのまま轢かれて死亡した。
20代前半の命だった。もう、何もかもが虚しかった。
孤高では無く、只の孤独。最後にそれを思い知った。思い知らされた。
もう、何も見たくなかった。何も聞きたくなかった。
・・・・・・・・・
暗い。視界が暗い。
・・・僕は、あれからどうなったのだろうか?確か、僕はあの時電車に飛び込んで自殺した筈なのだが。
と、言う事は此処は天国か?それとも地獄か?
自殺したんだから、地獄の方が可能性が高いかな。
しかし、それにしても・・・。
この優しい、何かに包まれるような感覚は何なのか?僕は、目を開いて見てみる。
・・・すると。
「あら、目を覚ましたのかしら?」
(・・・・・・・・・・・・はっ?)
僕は、黒髪青目の美女に抱かれていた。
いや、そうでは無い。この状況は・・・。
僕は、恐る恐る自分の身体を見る。
・・・其処には、赤ん坊の姿が映っていた。ぷっくりとした、可愛らしい赤ん坊の姿が。
(っ、うえ!?)
「あ~っ、だうーーーっ!!!」
僕は愕然とした。僕は、赤ん坊の姿になっていたのだ。
(えーっと、これはつまり?)
・・・つまり、僕は。
輪廻転生。生まれ変わったらしい。
・・・な、何故だ!!!