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無銘の世界~personaluniverse~  作者: ネツアッハ=ソフ
無銘の世界編
168/168

番外、二人だけの頂上戦争

 何故(なぜ)、こうなったのだろうか?


 僕はふと、多元宇宙の(そと)の世界でそんな事を考える。それというのも・・・


「さあ、さっさとやろうぜ?」


「本当にどうしてこうなったっ‼」


 秘密の首領(シークレット・チーフ)ことチーフと決闘をする事になったからだ。本当にどうしてこうなったっ!!!!!!


          ・・・・・・・・・


 さて、どうしてこうなったのか。時間を遡ってみよう・・・


 僕とリーナ、ソラの三人は星の船に乗り世界を旅していた。そんな時、次元の狭間(はざま)を渡っていた時にそれは唐突に起きた。突然、謎の少年が僕達の目の前に現れたからだ。


 謎の少年・・・と、言うかまあ・・・・・・。うん———


 警戒心を(あら)わにするリーナとソラ。しかし、その少年を僕は知っていた。それは、僕が固有宇宙樹に覚醒した時に直接会った事があるからだ。そう、この少年は・・・


「よお、無銘(むめい)。いきなりで悪いが会いに来たぞ」


「シークレット・チーフか・・・・・・」


 僕はうんざりした顔で、実際うんざりしながらその名を呼んだ。


 シークレット・チーフ。秘密の首領。かつて地球上で魔術師達に存在を信じられてきた高次存在。


 僕の魂の根源(こんげん)たる超越者。かつて人類でありながら人外に到達した者。挙げていけばそれこそキリが無いがそれ等全て、この者を説明するのには意味が無い。


 僕は瞬時に理解した。シークレット・チーフ。その真の怪物性を。超越者としての彼を・・・


「ふふっ、そう嫌そうな顔をするな。俺は只、お前の成長(せいちょう)を確認しにきただけだ・・・」


「・・・・・・」


 そう言うと、チーフはパチンッと指を鳴らした。瞬間、星の船ごと強制転移を受けた。其処は、無限に広がる広大な大地そのものだった。巨大というにはあまりにも巨大すぎる大樹(たいじゅ)。宇宙樹が見える。


 そう、此処は多元宇宙の外だ・・・真なる外の世界。


《強制転移を確認しました。場所の座標(ざひょう)を特定不可能。エラー発生》


 AIが混乱(こんらん)をきたしている。どうやら、強制転移が原因でエラーが生じたらしい。


 ・・・そっと、僕は溜息を吐いた。見ると、リーナもソラも呆然と外を見ている。やはり、この状況は二人には許容範囲外だったらしい。再び溜息を吐く。


「二人共、戻ってこい」


「っ、此処は何処(どこ)⁉」


「と、父様はどうしてそんなに落ち着いて⁉」


 ・・・全く、やれやれだ。


「だから、二人共落ち着けって・・・。此処は宇宙の外の世界だ」


「宇宙の外?」


 首を(かし)げるリーナに、僕は頷いた。そして、そのまま僕はチーフの方へと向く。其処には好戦的な目を向けてくる彼が居た。・・・やれやれ、まさかこうなるとはな。


 僕は呆れ返った。心底面倒臭い。


          ・・・・・・・・・


 で、冒頭(ぼうとう)に戻る・・・


 つまり、僕はチーフに成長を見ると言って喧嘩(けんか)を売られた訳だ。全く、どうしてこうなった?解りたくなんか全く無いけど、解ってしまった・・・


 つまり、こいつは自分と釣り合う程に成長を果たした僕を見て嬉しいんだ。だからこそ、こいつは僕の成長を見るという建前で戦ってみたくなったという訳だ。


「全く・・・。この戦闘狂が・・・・・・」


 ぼそりと、僕は呟いた。チーフは笑みを浮かべている。僕の言葉が聞こえていて無視(むし)している。


 ・・・全く、頭が痛くなってくる思いだ。


「じゃあ、此方から()くぞ?」


 そう言うと、チーフは青白く光り輝く大翼をその背から生やした。そして、頭部には同じく青白く輝く光輪が放出されている。その姿は、中々どうして神々(こうごう)しい。


 チーフはその光翼から羽を弾丸のように飛ばす。そして、どうやらそれだけではないらしい。その羽の弾丸が瞬く間に青白い炎で出来た猛禽(もうきん)に変幻した。炎の猛禽が、僕に襲い掛かる。


 どうやら、炎の猛禽には疑似的な意思(いし)が宿っているらしい。何処に逃げようとも何処までもそれは追尾してくるのだろう。それに、目を見張るべきはその威力(いりょく)だ。


 その一体一体が、恐らくは単一宇宙を滅ぼす威力を秘めているのだろう。その数、数えきれない。


 しかし、だからどうした?僕は白けたような表情で溜息を吐く。こんな物、避けるまでもない。


 炎の猛禽が、僕に殺到して激しい炎の(あらし)を生む。炎の嵐は天まで上り、炎柱となり舞い上がる。その規模は計り知れない。遥か遠くまでその激しい熱波(ねっぱ)が襲い掛かる。


「ムメイっ‼」


「父様っ‼」


 二人の声が聞こえる。なるほど、中々熱い。しかし、無用な心配だ・・・


 何故なら、僕の周囲に張っている三重の結界は一切微動だにしていないからだ。三重の禁呪、それを破るのはそうそう(やす)くはないだろう。故に、最強の防壁だ。


 要するに、全くのノーダメージ。全くの無傷だ。


 僕は爆炎の中から余裕をもってランスを創造し投擲した。その威力に、爆炎が一気に消し飛ぶ。ランスは余りの超質量により、ブラックホールを纏っている。そのまま空間をねじ切りながら飛翔する。


 その光景に、リーナとソラは愕然と目を見開いた。もう、驚きすぎて声も出ない様子。


 しかし、チーフはそれを前にして獰猛(どうもう)に犬歯を剝き出す。


「ははっ、それでこそ!!!」


 その超重力のランスを、チーフはあろうことか片手で(にぎ)り潰した。その光景に、リーナとソラは大きくその目を見開いた。しかし、やはり僕はさして驚かない。


 ・・・この程度、奴にとっては当然の事だ。驚くにも値しない。


 しかし、これ以上遊ぶ気も僕は毛頭ない。ならば、切り札を早々に切るか?


「じゃあ・・・、そろそろ僕は奥の手を出すか」


 そう言い、僕は星の聖剣と外法の魔剣を取り出す。そして、その二振りを重ね合わせる。瞬間、その二振りの剣は一振りの(つるぎ)へと変異した。その剣に、リーナとソラが息を呑む。


 それは、余りにも美しい十字剣だった———


 星魔剣ΑΩ。その柄頭に青い宝石が()められた十字剣。刀身には黄金の星十字が刻まれている。武器というよりは儀礼剣に近い。事実、武器ではないのだろうが・・・


 しかし、武器として運用された際のその威力は計り知れないだろう。何故なら、この星魔剣には概念宇宙を断ち切る聖剣の力を外法の魔剣の力でブーストしてあるからだ。


 その権能は”浄化”。全宇宙を一振りで虚無(きょむ)にまで浄化可能な出力と権限を持つ。


「ほう、そう来るか。なら俺も此れを出さぬ訳にはいかないな・・・」


 そう言い、チーフは黄金の杖を取り出す。二匹の蛇が絡み合う、翼の生えた意匠の黄金杖。


 杖の先端には二つの円環が組み合い、円環に十二の星座(ほし)が描かれている。


 離れていても解る。その杖から放たれる力の凄まじさを。そして、僕はその杖を地球に居た頃に伝承で伝え聞いた事があった。意匠に若干の違いはあるが。その杖は・・・


星杖(せいじょう)ヘルメス=トート・・・。ヘルメスの神杖の原典(オリジン)となる祭具だ」


 ヘルメスの杖。ギリシャ神話に登場する伝令神の持つ杖だったか。その原典ときた。


 初見だけでも、恐らくは星魔剣と同等(どうとう)の力を保有しているのだろう。それが、理解出来る。


 理解出来たからこそ、僕は一切の油断も慢心(まんしん)もしない。する気が無い・・・


 僕は、ゆっくりと星魔剣を正眼(せいがん)に構える。そしてチーフも、星杖を油断なく構える。


 次の瞬間、僕とチーフがぶつかり合い無限に広がる世界の果ての果てまで衝撃波が奔った。


 地盤がめくれ上がり、深い亀裂(きれつ)が奔り、空間が大きく()けた。


 それは、粒子の一つ一つが単一宇宙規模の強度を持つ外の世界だったからこその被害だ。これがもし何処かの宇宙であれば、周囲の並行宇宙(へいこううちゅう)を巻き込んであっさりと消滅していただろう。


 それ程の規模の戦闘だった。


 ・・・後に、どちらが勝利(しょうり)したのかはともかくとして。宇宙樹の外の世界、ありとあらゆる場所の地面がめくれ上がり、深いクレパスが形成され、至る所の空間が裂けた。


 この惨状(さんじょう)から、戦闘の凄まじさが伺えよう・・・

・・・ちなみに、この時ミトロギアは星の船のダンジョンに居ました。

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