閑話、始まりのエンシェント
それは、遥か古代の事・・・神代にまで遡る。場所は天界、神々の宮殿・・・
神々の間で大論争が起きていた。それは、人類も無関係ではない。むしろ、その人類の事で神々は論争を起こしているのだ。その議論の内容は、人類の自由意思についてである。
「馬鹿なっ⁉神々の王ともあろう者が、人類から自由意思を奪おうというのかっ‼」
テーブルを力一杯叩き、立ち上がる者が一柱居た。
神の一柱が愕然とした声で叫ぶ。原初の蛇神だ。彼女は神王のその愚挙に真正面から糾弾する。それは人類の未来を想うが故の事だ。しかし、当の神王はそれを一蹴する。
そもそも、神王及び大多数の神々にとってこの出来事は既に決定事項だ。早々に覆りはしない。
神王は溜息混じりに、諭すように告げた。
「・・・ナハッシュよ、何も完全に自由意思を奪おうという訳では無いのだ。ある程度、自由意思を残した上で人類を我等神々が管理しようと言うのだ」
「人類を管理など!それが意味する事を本当に解っているのですか⁉」
神王の一言に、更に憤る・・・
蛇神、ナハッシュの言葉に神王デウスは頷いた。そもそも、神王は全てを呑んだ上でそれを実行しようとしているのである。もちろん、他の神々も同じだ。
人類の未来は神の手で管理しなければならない。そう、当時の神々は本気で考えていたのだ。
「人類はあまりに愚かだ。それ故、我等神々が管理しなければすぐにでも滅びに向かうだろう」
「だから、人類を管理しようと・・・?」
「そうだ」
その言葉に、ナハッシュは我が耳を疑った。それは、あまりにも傲慢で人類を甘く見ている。
人類の味方をしよう者は今やナハッシュ一柱のみ。他は皆、神王の味方かあるいは逆らえない者。
・・・もはや、この議論は無意味だろう。そう悟った。
このままでは、どの道人類に未来は無くなるだろう。そう考えたナハッシュは覚悟を決めた。神王を裏切り人類を救う覚悟を。その為、原初の地母神としての格を失う覚悟を決めた・・・
「神王よ・・・。私は人類の味方に付きます」
「・・・そうか、なら是非もない。ナハッシュ、貴様の神としての職能及び神権を剥奪する」
そうして、原初の蛇神ナハッシュは神としての格を剥奪され原罪を押し付けられた。そして、原初の竜として竜種の始祖となった。原初の竜種、エンシェントロードの誕生だ。
その後、エンシェントロードであるナハッシュは神々に戦争を仕掛ける。最大規模の神話戦争だ。
それが、今回の出来事の元凶。始まりである。




