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無銘の世界~personaluniverse~  作者: ネツアッハ=ソフ
神域決戦編
152/168

番外、繰り返される世界で

 ある日、ある場所でとある人外(かいぶつ)は思った・・・退屈だ、つまらないと。


 ・・・要するに、人外は孤独(こどく)だった。


 人外は全知全能の神すらも及びもつかない程の強大な力を持っていた。それ故、最初から頂点に座していたその人外は始まりから既に退屈していた。世界に()いていたのだ。


 誰一人として、自分に並び立つ者が居ない。誰一人として、自分に届く者が居ない。それは、即ち孤独の牢獄に他ならないだろう。生まれた時から、人外は孤独だった。


 一つ注釈すれば、優れた巫女(みこ)の資質を以って接触する事が出来る者は居た。人外が自ら優れた資質を持つ者に接触を図る事も可能だろう。しかし、それでも人外と並び立つ者はついぞ現れなかった。


 故、人外はそれを造る事に決めた。人を超越し、神すらも超越し、無限の宇宙すらも超越した者。


 ・・・そんな存在を創造(そうぞう)する。


 しかし、仮に自ら生命体を創造したとてそれが自分に匹敵する領域に到達出来る訳でもない。創造主に被造物が敵うなど、それこそ天文学的数値よりも低い可能性になるだろう。


 そもそも、容易に到達可能な領域に人外は立っていない。それ故の頂点(てん)なのだから。


 だが、それでも人外は確信していた。必ず、自らに匹敵する者が出現すると。全てを超越して、人外の領域に至る者が現れると。そう確信していた。


 人外の魂は、欠片だけで一つの宇宙(ソラ)に匹敵する質量を有する。規格外の霊体だ。


 故に、人外は自らの魂を切り離し、その欠片を広大な宇宙樹の輪廻の輪に放り込んだ。


 広大な宇宙樹、その輪廻の輪に自ら波紋(はもん)を与えたのだ。


 その魂の欠片が、何時か自分に匹敵する者が現れる切っ掛けとなる事を確信して。


 ・・・そして、魂の欠片は後にある人間の身体に宿った。その人間は、死後とある神に導かれて異世界に渡る事となる。其処までは、人外の思惑通りだった。


 しかし、全てが人外の思惑通りにならなかった。その人間はあっさりと死んだのだ。


 人外は落胆した。そして、悟った。自分と同一の起源(きげん)を持つ魂を宿していたとしても、それが強さの指標になる訳ではないと。人外は思わず嘆いた。


 これはいけない。これでは、全く意味が無いと。人外はすぐに手を打った。時を回帰(かいき)したのだ。


 その人間の人生の中で、幾度も時を回帰させた。そして、その中で魂の成長を(うなが)す。


 無限のように回帰する世界で、その魂だけは回帰の理に流されず、無限に成長を繰り返す。それは偏に人外の起源を持つが故の特性だった。時が回帰する度に、その魂は成長を続けた。


 更に、試練の一つとして強力な敵を用意した。運命の輪を操作し、あらゆる人間や神々、悪魔などの運命を歪めてその人間の成長を促進した。


 そんな中で、とある少女が出現し、その人間に寄り添い続けたのは行幸(ぎょうこう)だった。その少女の存在がその人間の成長を急激に進めたからだ。人外はとても喜んだ。


 ・・・そして、その人間の成長がついに臨界(りんかい)を超えそうになったその時、人外が自ら動いた。


 その人間の妹を助けたのだ。魔物に襲われていたその少女を、気まぐれに助けた・・・


 別に、何の理由もなく彼女を助けた訳ではない。その妹の存在が、より彼の成長を促進させる要因になるとそう確信したからだ。だからこそ、助けた。


 ・・・そして、その目論見はある種成功(せいこう)だった。


 もう少しだ・・・もうすぐ、その魂は臨界を超える。限界の殻を破り捨て、羽化(うか)するだろう。


 人外は笑う。その人間が、何れ自分と並び立つ存在となる瞬間を夢見て。


 その時こそ、その人間を自分の許に(むか)え入れよう。そう決意して・・・

無限に繰り返し続ける世界で、只独り無限に成長し続ける魂を持つ怪物・・・

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