閑話、ある独白
何故、こんな事になってしまったのだろうか・・・?一体、何処で何を間違えたのだろうか?
夢うつつを、僕の意識は漂っている。身体の主導権は、既に蛇によって乗っ取られている。
ずっと、僕は思考を巡らせていた。しかし、答えを得る事は出来ない。思えば、ずっと何処かで何かがずれていたような気がする・・・。それが何かは解らないけど。
僕は只、終わる世界を救いたかった。人類の未来が、あっけなく終わるのが許せなかった。只、本当はそれだけの筈なのに。それだけだった筈なのに・・・
一体何処で、僕は間違えたのだろうか?思い返してみる・・・
思えば、全ての始まりは世界の結末を見た事からだった。存在しうる全ての可能性で、世界は滅びという結末で収束する。例え、異なる結末へ至ろうとも世界は必ず滅びる。
・・・それが、世界の終末という名の結末だった。僕は、それが許せなかった。
僕は、生まれつき未来視という超能力を宿していた。それにより、僕は人類が辿る未来の可能性の全てを見通す事が出来た。しかし、或いはそれが僕の間違いの始まりだったのかもしれない。
僕は、世界がこんな終わりを迎える事を許せなかった。人類の未来が、こんな結末を迎えるなど。
・・・そんな事、断じて認められない。
故に、僕は悪魔と契約した。そして、終末王を名乗り全世界に宣戦布告した。
全ては世界を救う、それだけの為だった。それ以外はもはや、全てどうでも良かった。そう、本当にどうでも良いと思っていたのだ。その為の犠牲なら、例え家族や恋人すらも捧げる事が出来た。
・・・しかし、本当はそれが全ての間違いだったのかもしれない。今思えば、そう思う。
どうして、世界を救いたかったのか・何故、僕はその結末を許せなかったのか?
本当は、何の為に世界を救いたかったのか?それは、真に大切な人達の住む場所を守りたかったからではないのだろうか?その為に自身の大切な人を犠牲にするのは、何かが違うのではないか?
それに気付いたのは、既に蛇に意識を呑み込まれた後。もはや後の祭りだ。
一体どうすれば良かったのか?もう、恐らくは二度と取り戻せない過去。しかし、それでも・・・
それでも、僕は・・・やり直したい。やり直して、今度こそ守りたい。大切な人達を、守りたい。
しかし、もはやそれも今となっては遅すぎた。守りたい人達は、自らの手で殺した。そして、全てをやり直そうにももう僕は蛇に意識を呑み込まれている。もはや、全て遅すぎた。
だが、それでも・・・。それでも、僕は・・・・・・
夢うつつを漂う僅かな意識は、後悔と嘆きに呑まれていった。




