閑話、僕の覚悟
戦争が始まった。そう、僕は肌で感じ取った・・・未開の大陸は既に目前に迫っている。
「・・・・・・・・・・・・始まったか」
僕は現在、飛竜のククルーにリーナと共に乗って海の上を渡っている。ククルーはグルルと獰猛な唸り声を上げて未開の大陸を睨む。僕も、思わず視線を険しくする。ぎゅっと眉をしかめる。
感じる。未開の大陸から、強大なあいつの気配を。一切比喩ではない。恐らく、邪神のヤミを取り込んで更に強大な力を手に入れたのだろう。その力の波動は、既に固有宇宙の領域を逸脱している。
それが、理解出来る。固有宇宙に覚醒した為か、僕はその気配の強大さを肌で理解出来た。
そして、同時に理解した。恐らく、その力にあいつ自身が保たないだろう。いずれ、その力の強大さにあいつ自身が圧し潰されるだろう。それが、理解出来た。
しかし、それでも僕は諦める訳にはいかない。感じる。各大陸で皆が必死に戦っているのを。
僕は感じる。魔物の群れと必死に戦い、戦死していく者達の魂からの声が。その叫びが。
僕には、全て聞こえていた。何故、こんなにも聞こえてくるのか?それは解らない。けど、それでも皆が必死になり戦っているのに僕だけが逃げる訳にはいかない。それだけは解っている。
ああ、そうとも。僕は解っているさ。
だからこそ、僕も覚悟を決めなければならない。僕の、僕なりの覚悟を。今度こそ、きちんと覚悟を決めて望まねばいけないんだ。もう、僕は目を逸らしてはいけないんだ。
だから・・・
その時、リーナが背後からぎゅっと抱き締める腕に力を籠めてきた。僕は視線だけで振り返る。
其処には、不安そうな顔をしたリーナが居た。
「ムメイ・・・」
「解ってる・・・。大丈夫だ、僕は帰ってくるさ」
そう言い、僕は背後のリーナに笑みを向けた。リーナも、僅かに笑みを浮かべる。儚い笑みだ。それでも必死に浮かべたその笑みに、僕は僅かに胸が痛む。
ぎゅっと、胸元を強く握り締める。大丈夫だ。僕は大丈夫だ。
・・・ああ、解っている。解っているさ。必ず僕は帰ってくる。そう、強く言い聞かせる。
「必ず帰ってくるさ。必ず、リーナの許に。皆の許に。そして今度こそ、僕は・・・」
今度こそ、僕は失った全てを取り戻す。帰るんだ、皆の許に・・・家族の許に・・・
そう、僕は確かに覚悟を固める。覚悟を固めて、未開の大陸を見据える。目前の敵を。いや、終末王ハクアの居る場所を真っ直ぐに見据える。あの大陸に、あいつは居る。
そう、あの大陸に居るんだ。あいつが、ハクアが。
「・・・ムメイ。必ず、必ず帰ってきて。私達の許に、皆の許に・・・」
「ああ、必ず。必ず帰ってくる」
必ず、絶対に・・・僕は帰ってくるさ。もう、二度と失わない為に・・・




