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無銘の世界~personaluniverse~  作者: ネツアッハ=ソフ
神域決戦編
141/168

5、その頃、他の大陸では

一方その頃、他の大陸では・・・

 その頃、焔大陸カルデラでは・・・炎の巨人達は窮地(きゅうち)に立たされていた。


「ちくしょうっ、何故だ⁉何故こんなにもわらわら()いて出やがるんだよっ!!!」


「くそっ、こいつ等マグマの中でも平気で活動しやがるぞ!!!どうなってやがるっ!!!」


 所々で悲鳴と怒号が響き渡る。もう既に、敵は火山の中枢(ちゅうすう)にまで攻め入っている。


 慢心(まんしん)していたが故、準備を怠っていた炎巨人達はあっさりと劣勢に立たされた。しかし、それでも何とか持ちこたえているのは偏に戦闘能力の高い巨人族故である。そうでなければ、既にあっさり陥落していたであろう圧倒的戦力差だ。其処は流石の巨人族というべきであろう。


 しかし、慢心していたのは正直痛い。かなり痛い。あっさりと劣勢(れっせい)に立たされ、これを覆すには何かしらの打開案が要るだろう。そう、例えば少なくない援軍(えんぐん)とか。


 しかし、世界中全大陸に魔物の軍勢が押し寄せているこの状況下で、それは期待できないだろう。


 というより、絶対に来ないと断言出来る。来る筈がないだろう。


 故に、炎巨人達はジリ貧と解っていようとも、それでも防戦に徹するしかなかった。しかし、正直慢心していたのはかなり痛いと思う。今更ながら、炎巨人達は後悔(こうかい)していた。


 これでは笑い話にもならないだろう。


「くそっ、これじゃあ氷巨人の奴らに後で笑われちまうっ」


 炎巨人の王、スルトは盛大に舌打ちした。しかし、愚痴(ぐち)を言っても後の祭りだろう。なら、もはや戦い続けるしかする事はないだろう。故に、スルトは炎の魔剣を振るい敵を()ぎ払う。だが、それでも一向に敵の数は僅かも減らない。どころか、更に増えている気がしてならない。


 一体どういう訳か?そう思い、天を見上げる。すると其処(そこ)には・・・


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 天高く、巨人ですら見上げるほどの上空に空間の(ゆが)みがあった。そこから魔物が溢れていた。


 どうやら、其処から大量の魔物が召喚されているらしい。スルトは盛大に舌打ちして、その歪みに向けて炎の魔剣を振るう。一瞬で空間の歪み、即ち召喚門が破壊された。


「これで良し」


 良くはない。断じて良くはない。しかし、スルトは一向に気にしない。


 何事も無かったように、スルトは呟いた。そうして、そのまま魔物の群れを殲滅(せんめつ)していった。


          ・・・・・・・・・


 一方、その頃。氷大陸コキュートスでは・・・氷巨人達が氷の魔物に苦戦を強いられていた。


 周辺一帯を覆う氷の魔物達。その大軍勢に氷巨人の王、シスは盛大に舌打ちしていた。しかし、それでもこの大軍勢を相手に敗北したでは氷巨人の沽券(こけん)に関わるだろう。故に、抗い続ける。


 一向に()る気配のない魔物の大群に、ついに氷巨人の一体が悲鳴を上げる。


「シス様あっ‼こいつ等、一向に減る気配がありませんっ!!!」


「そんな事は解っているっ!!!しかし、それでも戦うしかないだろうがっ!!!!!!」


 怒号一喝(どごういっかつ)。シスの一声で、氷巨人達は全員気を引き締め直す。そうだ、それでも戦うしかない。戦わなければ敗北するだけである。それでは・・・


「それでは、炎巨人に笑われるだろうがっっ!!!」


「「「っっ!!!???」」」


 氷巨人達が一斉に闘志(とうし)を燃やし始めた。それだけは・・・それだけは、断じて許容出来ない。それが氷巨人達の総意である。炎巨人相手に笑われる、それだけは断じてあってはならない。


 故に、氷巨人達は気合を入れて魔物達を倒す。殲滅(せんめつ)していく。


 ・・・と、その時。


「シス様あっ、空から魔物が()って来ますっ!!!」


「何だってっ!!?」


 見上げる。其処には空間の歪みがあり、どうやら其処から魔物の群れが召喚されているようだ。


 シスは舌打ちを一つ。そのまま空間の歪み、召喚門を破壊した。


 これで良し。良くはないが、これで良しっ!!!


「これで召喚門は破壊したっ。気合入れて()くぞっ!!!」


「「「「「おうっ!!!!!!」」」」」


 そして、氷巨人達はそのまま魔物達を殲滅していった。


          ・・・・・・・・・


 更にその頃、魔大陸クリフォト・・・魔都デモンに魔物の残骸(ざんがい)が山と積み重なっていた。


 既に召喚門は見付けて破壊している。魔物達を倒したのはほとんど魔王一人だ。それだけで、魔王の圧倒的な戦闘能力が解るだろう。しかし、召喚門を破壊する直前に一匹の魔物が召喚された。


 それは、惑星(わくせい)すらも喰らうだろう星喰らいの巨人だ。天を衝くほど巨大な、途方もなく巨大なその身体をのそりと起き上がらせ、魔王ライオネルを見下ろす。その全長はもはや、超高層ビルに匹敵する。


 だいたい百五十階建てビルに匹敵(ひってき)すると言えばその巨大さが解るだろうか?とにかく巨大だ。


「ふむ、こいつ(ごと)きが俺を仕留められるとでも思っているのか?」


「いや、かなりデカいし威圧感(いあつかん)もトンでもないんだけど?」


 魔王ライオネルの言葉に、息子のレオンハルトは静かに突っ込んだ。しかし、それを意にも介さずに魔王は獰猛に嗤っている。それは、魔王故の闘争心故か?


 その闘争心を受け、星喰らいの巨人は天地を揺るがす咆哮(ほうこう)を上げる。


「グゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!!!!!」


「うっ、うるさあっっ!!!」


 レオンハルトはそのあまりの絶叫に、思わず耳を塞いだ。あまりの大音響に鼓膜(こまく)が破れそうだ。しかし同時に強い安堵を覚えてもいた。いや、最初から魔王を相手に心配などしてないと言うべきか?


 ともかく、レオンハルトは自分の父親が破れる姿を想像出来なかった。この程度の敵など、魔王にしてみれば物足りないにも程があるだろうと。そう感じていた。


 そして、それは実際に正しいとすぐに証明(しょうめい)される事となる・・・


          ・・・・・・・・・


 更に更に、その頃神大陸デウス・・・神国アトラスでは、炎上(えんじょう)する街に多くの魔物の群れが山となりうず高く積み重なっていた。既に、召喚門は破壊されている。


 神王の前には天を衝く巨大な龍が立ちはだかっていた。西洋のドラゴンではない。東洋龍だ。


 真紅に輝く鱗を纏った赤龍(せきりゅう)が神王デウスの前に立ち塞がりじろりと睨み付ける。


 そのあまりの威圧感に、神々ですらも(ふる)え慄く。しかし、神王はそれでも不敵に笑う。決して彼は敵に背を向けたりはしないだろう。彼に逃走の文字など無いのだから。


 しかし、どうやら部下は違うらしい。神王に逃走を具申(ぐしん)する。


「し、神王よっ‼お逃げ下さいっ!!!此処は我々が時間を(かせ)ぎます!!!」


「その必要は、無いっ!!!」


 そう言うと、神王デウスは勝利の槍を召喚してその手に構えた。その顔には、相変わらず悲壮感など一切欠片もありはしない。あるのは闘争心のみだ。


 神王から発せられるその威圧感を受け、赤龍は獰猛(どうもう)(うな)る。どうやら相応の敵と認識したらしい。


「グルウウウウウウウウウウウウウウウ~~~ッッ」


「来いよ。お前の敵は此処(ここ)にいるぞ」


 その瞬間赤龍の(あご)ががぱりと開き、眩い閃光と共に激しい炎熱が襲い掛かる。ドラゴンブレスだ。


 刹那、神王も勝利の槍を赤龍に向かって投擲(とうてき)した。途轍もない衝撃波が神国の都市を駆け巡り、一瞬にして彼方まで広がっていく。そのあまりにも膨大なエネルギーは都市を破壊するには充分すぎる。


 そして、一面灼熱の大地と化したその場に立っていたのは・・・


          ・・・・・・・・・


 そして、最後に幻想大陸オルム・・・其処には無残な魔物達の(かばね)が一面に転がっていた。


 召喚門は既に幻想種の一匹が見つけ出し、破壊している。竜王ソリエスはその中、つまらなそうに敵の屍をじろりと見下ろす。あまりにもあっけなく終わった。実につまらない。


 何がつまらないって、これで戦争は終わったと思っている仲間達が何よりもつまらない。


 味方は誰もが勝利に()き上がっている。しかし、戦争はまだ終わってはいない。


 敵将はまだ健在(けんざい)なのだから・・・まだ戦争は終わってはいない。


 なのに、此処で気を(ゆる)める訳にはいかないだろう。


 そんな中、竜王の側近(そっきん)である若いドラゴンが近付いてくる。


「竜王陛下、どうかなさいましたか?」


「うむ、少し敵陣に()め入ってくる。後は(まか)せた」


「・・・は、はい?」


 次の瞬間、竜王ソリエスは竜の翼を広げて幻想大陸を飛び立った。一瞬で、音すらも置き去りにして竜王は遥か彼方まで飛び去ってゆく。その姿を、若いドラゴンは呆然と見ていた。


 ・・・単独、未開の大陸に向かう竜王ソリエス。その進路上に数多くの魔物達が(ふさ)いだ。


邪魔(じゃま)だっ!!!!!!」


 閃光一閃。一瞬で竜王ソリエスの目前を塞いでいた数多の魔物達が消滅した。


 そんな中、竜王は一切の疲弊(ひへい)すら見せずに飛び去った。

一つだけ補足します。竜王ソリエスは戦争が好きなわけではありません。

ただ、まだ戦争が終わってもいないのに勝利に湧いている味方に頭が軽いと不満に思っている。ただそれだけの事です。

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