エピローグ
その日の夜———村の高台にて、僕は夜空の星を眺めていた。
季節は冬に近い。夜はとても冷え込むだろう。
夜空には満天の星が燦然と輝いている。とても綺麗だ。ふと、そんな時に僕の背後から近付いてくる足音が一つだけあった。気配に敵意は無い。というより、この気配を僕は知っていた。
・・・この気配は。
「ムメイ、身体を冷やしても知らないよ?」
背後から、心配そうに声を掛ける少女。
リーナ=レイニーだ。僕は僅かに笑みを浮かべながら、近付いてくる彼女に振り返った。彼女は白い寝間着の上からブラウスを羽織っていた。この季節は特に冷えるだろうに・・・
僕は、思わず苦笑した。苦笑して、静かに手招きした。
「それはリーナの方だよ。ほら、こっちに来いよ」
「う、うん・・・。くしゅんっ‼」
「ほら、こっちに来い」
寒そうにくしゃみをするリーナ。そんな彼女に、僕は思わず乾いた笑みを漏らす。
僕は来ているコートで、自分とリーナを一緒に包んだ。身体を寄せ合い、一緒に星空を眺める。
此処から眺める夜空はとても綺麗で美しい。何より、リーナと一緒に見る夜空はとても綺麗だ。
「綺麗だね、ムメイ」
「うん、とても綺麗だ・・・・・・」
そっと、リーナの華奢な身体を抱き寄せる。リーナの温もりが、直に伝わってくる。彼女も僕の方へ静かに身体を寄せてくる。ぎゅっと身体を寄せ合う僕達。今、この場に僕達以外は誰も居ない。
この世界に、僕とリーナ以外は居ない。そんな気さえしてくる。
「ねえ、ムメイ?」
「うん?」
「色んな事があったね。ムメイと出会って、本当に色々あったよ・・・・・・」
「うん・・・・・・」
リーナと出会って、色んな人と出会い、別れ、僕は少しずつ変わっていった。きっと、今の僕はそれを少しも後悔してはいないだろう。どころか、誇らしくさえある。
皆と出会えた事を、僕は誇りに思う・・・
僕は、皆と出会えて本当に良かった。そして、誰よりもリーナに出会えて本当に良かった。そう心の底から強く思うから。だから、僕は変わった事を後悔してはいない。少しも後悔してはいない。
・・・だから。僕は、僕達は胸を張ってこう言える。
「愛してるよ、ムメイ」
「僕もだ、リーナ。愛してる」
僕とリーナはそう言って、互いに微笑み合った。互いに笑い合った。
愛してる。大好きだ。そう、心の底から言える。きっと、それは素晴らしい事だと思うから。
そう、胸を張って言えるから・・・だから。
僕とリーナは、そっとお互いに抱き合い口付けを交わした。そんな二人を星空だけが見ていた。
愛してるよ、リーナ=レイニー。ずっと、これからもずっと永遠に愛してる。




