閑話、僕と妹の生まれた日
それは、僕とミィの生まれた日の話・・・この世界に生を受ける話。
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ある日、辺境の村に一人の魔女が来た。マーヤーと名乗ったその魔女は、お腹の中に二人の赤子を宿しその子供を産むための宿を貸して欲しいと頼み込んだ。
最初、村長を含めて村の人達は得体のしれない魔女を村に泊める事を渋った。しかし、それでも必死に頼み込むその魔女の姿に、やがて村人達は条件付きで受け入れる事を決めた。
その条件とは、魔女が持つ調薬の知識を村に置いていく事だった・・・
魔女は調薬の知識に優れる。それは、この世界においては常識的な話だった。それ故、村人達はその薬の知識を交換条件として求めたのだ。それを受け入れなければ、即刻追い出せば良い。
村人にとって、その程度の認識だった。
そして、その条件を魔女は受け入れその日村のある家に泊まった。村長の家からほど近い、この村の中では割と大き目な家だ。この家なら、子供を産むための準備を整える事が充分に出来るからだ。
そして、その日の夜・・・それはついに起きた。陣痛だ。
「あ・・・っ、くっ・・・・・・ああああああああーーーーーーーーーっっ!!!!!!」
村に魔女の悲鳴が響き渡る。数人の女性が、傍に控えている。
猛烈な陣痛が奔り、それでも魔女はそれに耐える。もうすぐ、この世に赤子が産まれる。この世界に二人の赤子が生を受けるのだ。それを想い、魔女は必死に痛みに耐える。
産道を赤子が通るのを感じ、もうすぐ産まれるのが理解出来る。だから、必死に痛みに耐えた。
―――この痛みは、この世に我が子が生を受ける証。
―――ならば、私はそれを甘んじて受けねばならない。
この魔女にとって、愛しい人との間に産まれた子供だから・・・
いや、或いはそれ以前の問題として、自分の子供だからという理由もあるのか。どちらにせよ、魔女からすれば大切な我が子には変わらない。どうか、無事に産まれてきて欲しい。
そう、心の奥底から願う。必死に痛みに耐える。既に意識を失いかねない程に痛みは増している。
だが、それでも必死に痛みに耐え続ける。
そして・・・
双子の赤子が、この世に生を受けた。兄と妹の双子の兄妹だ。その双子の兄妹を見て、魔女はその瞳から涙を流したのだった。この世に生まれた二人の子供。その双子に、シリウスとミィと名付けた。
そっと、魔女は二人の赤子を抱き締める。優しく、そっと触れるように抱き締める。
「可愛い・・・愛しい我が子。私の子供として生まれてくれてありがとう」
―――これから先、貴方達二人の事をずっと愛し見守り続けるから。
―――貴方達を、ずっと守り続けるから。
そう、魔女は誰ともなしに誓いを立てた。それが、シリウスとミィの生まれた日だった。




