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無銘の世界~personaluniverse~  作者: ネツアッハ=ソフ
つかの間の日常編
119/168

プロローグ

「はぁっ・・・はぁっ・・・・・・」


 走る。走る。とにかく走る・・・走らねば、死んでしまう。


 深い森の中、ミィはさまよっていた。山を()えれば父の、エルピス伯爵の居る町に着く。其処に行けば必ず兄と父に会える。そう、信じてミィは只さまよい続ける。


 しかし、予想外(よそうがい)の事態が発生した。まさか、こんな場所にこんなモノが出てくるとは。こんな場所にこんなモノが居るとは思わなかったのだ。それ程のイレギュラー。


 それは・・・


「ゴアアアアアアアアアアアアッッ!!!!!!」


「っ!!?」


 ミィが息を呑む。恐怖に()られる。


 咆哮(ほうこう)が響き渡る。怪物の咆哮だ。その怪物は・・・


 合成獣(ごうせいじゅう)、キメラだった。魔物の中でもかなり上位に位置する凶暴かつ危険な魔物。そのキメラに追い回されていたのだ。ミィは必死に逃げる。逃げ続ける。


 こんな場所に、キメラが生息(せいそく)している筈が無い。この魔物が生息しているのはもっと大陸の奥深くにある魔境の筈なのだ。こんな場所に居るなど、異常でしかない。


 しかし、そんな事を言っている暇は無い。今は逃げなければ。逃げ続けなければ。


 だが、逃げ切れない・・・


「あっ!!!」


 樹の根につまずき、ミィは派手に転ぶ。其処に、ゆっくりと近寄るキメラ。


 その口から、大量のよだれが零れ落ちている。どうやらミィを(えさ)としか見ていないらしい。その事実に恐怖心が湧き上がってくる。食われる恐怖だ。生物が等しく持つ、根源的恐怖。


「ぐるあああああああああああああああああっっ!!!!!!」


「ひっ!!?」


 キメラの咆哮に、ミィは思わず目をぎゅっと閉じた。食われる。そう感じた。


 走馬燈のように浮かぶのは、大好きな兄の顔。そして、前世で大好きだった、あの・・・


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」


 何時まで経っても痛みがこない。或いは、もう既に食われた後なのか?そう思い、ミィは恐る恐る目を開いて目の前を見る。其処には・・・


「っ!!?」


 キメラの無残な死骸(しがい)があった。その傍には、謎の少年が一人。はっきり言って、異常な光景だ。


 恐らく、この少年がキメラを倒したのだろう。しかし、何時の間に?どうやって?


 この少年は、見れば何も装備(そうび)してはいない。どうやってキメラを倒したのか?


「・・・あ、ありがとう。ございます?」


「・・・・・・・・・・・・」


 ミィがお礼を言うが、しかし、少年は何も返事をせずにミィをじっと見る。その不躾(ぶしつけ)な視線に、思わずたじろいでしまう。一体何なのか?ミィは理解出来ずに(おび)える。


 しかし、そんな事は関係なく少年はミィを見て呟いた。


「ふむ、この少女が無銘(ムメイ)の少年の魂を成長させる切っ掛けになるか。いささか信じられんがな」


「・・・・・・え?」


「お前は知らなくても良い、今は眠っておけ。目が覚めれば、これは(ゆめ)だと思うようになる」


 言って、少年はミィの額を指で突いた。


 すると、急に眠気が襲ってきた。それに(あらが)う事も出来ずにミィは眠ってしまった。


          ・・・・・・・・・


 その後、ミィはエルピス伯爵の屋敷で目を()ました。

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