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無銘の世界~personaluniverse~  作者: ネツアッハ=ソフ
外法教団編
118/168

if、もし、救出に失敗していたら

 時は遡り、無銘の救出作戦の最中(さなか)・・・


 リーナ=レイニーとクルト=ネロ=オーフィスは血塗れで横たわっていた。目の前には、悪魔Ω。


 二人が神殿に侵入(しんにゅう)したまでは良いのだが、其処に悪魔Ωが待ち伏せていたのだ。そして、二人は奮戦したが見事に返り討ちに会う。そして、目の前には無傷の悪魔の姿が・・・


 悪魔は退屈そうに二人を見ている。心底つまらなそうだ。どうやら、悪魔としては多少歯ごたえのある戦いを望んでいたらしい。しかし、期待外れのようだ。


 リーナとクルト王子は必死に(あらが)ったが、悪魔Ωの異常な戦闘能力には勝てなかった。そもそも、傷一つ付ける事すら叶わなかった。余りに規格外。その戦闘能力は異常に過ぎた。


「お前等、存外(ぞんがい)つまらねえな・・・・・・」


「ふざけるな。そんな・・・事で・・・・・・っ」


 クルト王子が、Ωを睨み付ける。しかし、次の瞬間その首が音もなく()んだ。


 リーナが、大きく目を見開く。


「ああ、もうしゃべらなくても良いぞ。まあ、もう聞こえていないだろうがな?」


 嘲笑する・・・


 そう言って、悪魔が(わら)う。嘲笑する。その光景を見て、リーナが戦慄する。どうして、この悪魔は人を容易く殺してこんなに笑えるのか?嘲笑う事が出来るのか?


 リーナには、全く理解出来なかった。理解不可能だった。


 悪魔の視線が、リーナに向いた。悪魔の笑みが、リーナに向く。びくっとリーナは肩を(ふる)わせた。


「お前も、もう死んでも良いぞ?」


「い、嫌っ・・・・・・嫌ぁっ・・・・・・」


「まあ、お前の意思(いし)などどうでも良いがな」


「っ!!?」


 ―――ムメイっ!!!


 最後に、リーナは無銘の事を考えながらその生を終えた。意識が暗転(あんてん)する。


          ・・・・・・・・・


 ―――リーナが、死んだ?


 無銘は、鎖に(つな)がれたまま思考を奔らせていた。しかし、もう既にその思考さえ覚束ない。精神がすり減り考える力すら失われつつあるのだ。もう、限界は近いだろう。


 神殿が大きく揺れた。今の揺れで無銘は理解した。ああ、僕を助けに来た人が敗れたのだと。救いに来た人達が敗北したのだと・・・。敗北し、死んだのだと・・・


 そう理解した瞬間、無銘の中で大切な何かが音を立てて崩れ去っていった。音を立てて、大切な物が壊れて消えてゆくのが解った。無銘は、それが何なのかを理解した。正しく理解した。


 ―――ああ、そうか。これが心か・・・


 恐らく、無銘(ぼく)を助けにきた者の中にはリーナも居たのだろう。きっと、必死に助けようとした筈。


 しかし、無銘を助けようとしたばかりに、その命が失われてしまった。死んでしまった。


 無銘の瞳から、一筋の涙が(こぼ)れ落ちる。無銘の心が、(きし)んで壊れてゆく。


 大切な人が死んだ・・・。大切な命が失われた・・・


 それが無銘の心を締め付ける。締め付けて、破壊する。打ち砕く。ああ、どうしてこうなった?何故こんな事態になったのだろうか?どうして?何故(なぜ)


 解らない。解らないからこそ、余計に無銘を打ちのめす。打ちのめして、打ち砕く。


 無銘にとって、リーナは始めて心の壁を()えて接してきた人物だ。愛していると、大好きだとそう笑顔を向けてきた少女だ。大切な、何よりも大切な人だった。その筈だったのに・・・


 その命が、容易(たやす)く失われた・・・。自分を助けようとしたばかりに・・・・・・


 ―――もう、どうでも()いや。


 無銘はそうして、考える事を(あきら)めた。この日、無銘の心が死んだ・・・

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