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無銘の世界~personaluniverse~  作者: ネツアッハ=ソフ
外法教団編
114/168

エピローグ

 エルピス伯爵領にある辺境(へんきょう)の村。其処に、少女は母と共に住んでいた。


「お母さん・・・・・・」


 その少女、ミィは母の看病をしていた。数日前、母は過労(かろう)で倒れたのだ。しかも、過労に謎の熱病まで併発して村の医者では手に負えないという状況だ。もう、ミィにはどうすれば良いのか解らない。


 けど、それでもミィは必死に母の看病をしていた。朝昼晩、毎回水を()んできて冷たく冷やしたタオルを母の頭に乗せ、食事も何とか不器用ながらも作った。母はそれを、おいしいと言ってくれた。


 そんなある日、ミィも疲れが出たのか母のベッドにもたれ掛かるように(ねむ)った。


          ・・・・・・・・・


 夢を見た。その夢の中で、ミィはとある少女の人生を追体験(ついたいけん)した。少女には、友人が居た。


 親友だと思っていた少年。その少年に何時も、少女は我が儘を言って困らせていた。きっと、そんな毎日が何時までも続く物だと思っていた。しかし、そうでは無かった。


 春は一緒に桜を見に公園で花見をした。夏は海に出掛けて、水着姿で少年に抱き付いた。


 秋は少年と山に登って紅葉(こうよう)を見た。冬は一緒に鍋を食べた。


 何時も、少年と一緒に居た。何時も、彼女の(そば)には少年が居た。しかし・・・


 少年は青年になり、大人になった。そして、社会に出た彼は・・・ある日自殺(じさつ)した。


 大人になった少女は絶望した。その時になって気付いたのだ。自分が、彼の事が好きだった事に。


 少女は彼の事が大好きだったのだ。愛していたのだ。それに気付いた少女だった彼女は、全てに絶望して自ら包丁で(のど)を搔き切った。彼女は、自殺を選んだのだ。


 もう、彼の居ない世界に未練など無かった。絶望の中、彼女はその人生に(まく)を下ろした。


 ・・・彼女の人生を追体験し、ミィは思った。ああ、これはきっと、自分の記憶(きおく)なのだと。


 これは恐らく、自分の前世(ぜんせ)なのだろう。なら、これは前世の記憶を追体験しているのだ。なら、あの記憶の中に出てきた彼は?そんな事、決まっている・・・


「カナタ君・・・」


 ミィはそっと呟いた。前世で大好きだった少年は、今は大好きな兄になっていた。


          ・・・・・・・・・


「・・・・・・んみゅ?」


「あら、起きたかしら?」


 ミィが起きると、ミィの頭を母がそっと()でていた。母は上半身を起こしている。その姿に、ミィは思わず驚いてがばっと起き上がった。それ程、びっくりしたのだ。跳び上がる程に驚いた。


 しかし、母は(おだ)やかに笑っている。どうやら熱は引いたらしい。しかし、病気は治っていない筈。


 ミィは心配そうに問う。


「お母さん、大丈夫なの?」


「ええ、まだ少しだけしんどいけど。一応大丈夫よ」


 そう言って、笑みを浮かべたが。直後ふらっとベッドに倒れ込んだ。ミィは慌てる。


 まだ、本調子ではないようだ。当然だろう。母は過労の他に、謎の熱病に(かか)っているのだ。


「お、お母さんっ・・・」


「だ、大丈夫・・・。きっと、すぐに良くなるから・・・・・・」


 そう言って、笑みを浮かべるが。何処かぎこちない。そんな母の様子を見て、ミィは決意(けつい)した。


「・・・・・・よ」


「え?」


「お父さんとお兄ちゃんを()れてくるよ。必ず、連れて帰ってくるからっ!!!」


「ミ、ミィっ!!!」


 ミィはそのまま、家を出ていった。そんなミィに、母は必死に腕を()ばす。しかし、直後強烈なめまいが襲い母はそのままベッドに倒れる。しかし、母はそれでも必死に腕を伸ばす。


「ま、待って。ミィっ!!!」


 その声が、(とど)く事は無かった。

!!?

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