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無銘の世界~personaluniverse~  作者: ネツアッハ=ソフ
外法教団編
108/168

閑話、心の闇の中

 リーナ達が未開の大陸へ向かう、丁度直前の事。その時、無銘(むめい)は・・・


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


 じゃらり・・・。鎖が()れる音が響く。


 無銘は鎖に(つな)がれながら、思考の海に呑まれていた。頭の中には、リーナの事が浮かんでいる。果たして彼女は今どうしているだろうか?泣いているだろうか?


 思えば、未開の大陸に来る時も泣かせてしまった。リーナの事を泣かせてばかりだった。その事実が無銘の胸をちくちくと突き刺してくる。その事実が、とても痛い。胸を深く突き刺す。


 ―――ああ、何でこうも僕の人生はままならないのか。


 そう、激しく後悔(こうかい)する。しかし、今となってはもう遅い。全てはもう遅すぎる。無銘の心は既に完全なまでに折れてしまっていた。もう、どうしょうもない。


 彼女を泣かせたくなかった。悲しませたくなかった。笑って欲しかった。それなのに・・・


 何時もそうだ。後悔する時は、既にもう遅すぎた。遅すぎたのだ。


 そんな時・・・


『お前は本当に甘いな。本当は人の事なんか、欠片(かけら)も信じちゃいないくせに・・・』


「・・・・・・・・・・・・」


 気付いたら、目の前には自分が立っていた。自分は、薄く嗤っている。その自分の幻影を見て、無銘は心の中で納得した。ああ、この幻影はきっと僕の心の(やみ)なのだと。


 ついに、心の闇が幻影として自分の前に現れたのだと・・・


『本当は、自分の事もリーナの事だって信じちゃいないんだろう?只、信じたいだけなんだ』


「そんな事は・・・ない・・・・・・」


 無銘はそれを否定する。否定しないといけない気がした。それを肯定すれば、自分の中で何か大切な物が壊れてしまう気がしたから。だから、必死に否定した。


 しかし、それを幻影は許さない。薄く嗤いながら、幻影は話しを続ける。


『本当は、お前も解っている筈だろう?世間は、お前が思っているよりも淡白(たんぱく)だ。お前の事なんか本当は誰も気にしてはくれない。誰も、お前如き眼中にも無いのさ』


「うる・・・さい・・・・・・」


 必死に、無銘はそれを否定する。しかし、幻影はそれを決して許さない。決定的な言葉を吐く。


 無銘が、今までずっと心の奥底で目を逸らしてきた事実を。


『誰も、お前の事なんか気にも()めてはくれない。当然だろう?お前が誰にも心を開かないのに、何で誰かがお前に心を開いてくれるんだよ・・・・・・』


「ああ・・・あああああああ・・・・・・っ」


 そうだ。その通りだ。何故、自分が誰にも心を開かないのに、誰かが自分に心を開いてくれる?何故自分自身が誰の事も信じないのに、誰かが自分の事を信じてくれる?


 そんな事、都合の良い自分勝手な解釈(かいしゃく)だろう?


 最初から解っていた。解っていて、ずっと目を()らして来た事だ・・・


 だから・・・


「あああああああああああああああああああああああっっ!!!!!!!!!」


 それを突き付けられて、無銘は意図も容易く崩壊した。ついに、無銘は(こわ)れた。

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