1-7 賢く生きるための831の方法
昨日近所で雪がちらついたとか。五月やぞ?
皆さんもお体に気をつけて
私はぁ!今ぁ!近くの平原に来ていまーす!ひっろーい!
と、某ミステリーハンターばりに声を出したくなるここは街の外。そう、初めてのお出かけです。ちゃんと太陽の下にいます。健康なナマモノたる者、ちゃんと日光に当たらないといけませんからね。
別に称号を気にしてるわけじゃないデスヨ?
スキルを揃えた私は、とりあえずスキルの動作確認とお金稼ぎをすることにしたのです。
噴水広場にあるクエストボードから採取系のお仕事を攫い、門に向かう途中で見かけた露天商でDEXが1上がる手袋とボロいツルハシを購入、門衛さんに会釈しながらさあ行くぞと意気も揚々に町の外へ踏み出しました。
今回採取する予定のアイテムは【薬草】、【ドクスイ茸】、【石ころ?】の三種。なんですか【石ころ?】って。下手したら鉱物じゃない可能性があるあたり微妙にデンジャラス。ボロツルハシいらなかった説が立証されないことを祈ります。
え、事前に情報得とけ?そうすべきなのはわかってるんですが、まあ最初くらいは。あてどなくブラブラと手探りで探すのもいいかなと、そういう気分だったんです。行き詰まったら調べればいいのです。
メニュー画面のマップ表示に探知で拾った情報が出ているので、これを目指していけばそのうち当たるでしょうしね。あ、あてどなくは無かった。
探知マップ情報によればモンスターもプレイヤーもまばら。まあ街の近くにモンスターが跳梁跋扈してたらどんな魔境だよって話ですからね。始まりの街かと思いきやラスボスの魔城がお隣さん的な恐怖が予想されます。門衛さんの運命やいかに
などととりとめもないことを考えながら歩いていたら、採取スポットマークが近づいてきました。
周囲とは少し毛色の違う草むらが見えますね。薬草だといいのですが…
近づいて【採取】っと
【ポテトの実】
ジャガイモだこれ!噂に聞いてはいましたが確かにトマトっぽい形をした実が私の手の中に…
ということはこの植物を掘り返せばジャガイモが取れると。私はいらないですが、料理系生産職か農家の人なら買ってくれるでしょうか…
ツルハシを地面に向かって振り下ろし、えぐれた方向に倒すようにして株ごと引っこ抜きます。そして【採取】
【ポテト】×4
おお、ごろっと取れました。どこまでやれば地下茎の採取判定になるのかわからなかったので引っこ抜いちゃいましたが、なかなか上手くいきましたね
……上手くいって嬉しいですけどファンタジー感に欠けますね、ジャガイモですし。
さて、薬草その他を求める旅に戻りましょうか。
メニューからマップを表示して、次の採取スポットはーーお、近いですね。私が今こっち向いてるので…あっちですか。次は当たりを引けるといいのですが
「……」
今私の目の前にあるのは、傘の代わりにできるんじゃないかと思わせるほど大きな、スペード型の葉っぱです。私この植物見たことあるんですよねぇ…
群生している中から萎れている個体を選び、取り出したるはボロツルハシ君。不本意でしょうがまたお仕事ですよ
【サトイモ】×8
はい予想通り。
なんですかなんなんですか、芋畑にでも迷い込んだんですか私?
というかさっきはジャガイモじゃなくてポテト表記だったのに、なんで今回はストレートにサトイモ表記なんですか…
これはこの先の展開に嫌な予感がしますね。
数十分後…
【カボチャ】【ビーツ】【タカノツメ】【キャベツ】【ネギ】【ラディッシュ】【キュウリ】【ゴボウ】【コマツナ】…
インベントリにずらりと並ぶ野菜たち。芋畑では無かったようですが家庭菜園に迷い込んだ可能性が消せないですね。あと地味に根菜率高かったせいでボロツルハシ君大活躍でした。こうやって使うものじゃないんだけどなぁ…
インベントリの空き枠も残り少ないですし、一旦引き上げますか。そして街で農家さんか料理人のプレイヤーを探す。私が持っててもしょうがないですし。
ん、帰り道に一箇所スポットがありますね。
一応拾っていきましょうか…
「そう来たか…」
スポットに到着した私の目に映るのは、腰に届かないぐらいの高さの低い樹木のような植物。ワッサワサと大量の葉をつけています。
えぇ、反応から御察しの通り知ってる植物です。ただし食べ物ではありません。今は未だ、という注釈がつくだけですが。
多分これ、コンニャク芋ですね。意地か執念めいた製造工程を経てよくわからない半透明の何かへ変貌を遂げるアイツです。昔の人は何を思ってコンニャクを作ったんですかね。もう少し楽に食べられるものありそうですが…
そして採取できるということはこっちでも作れるんでしょうね、コンニャク。
さて今日何度目かわかりませんが、お仕事お願いしますねボロツルハシ君。
そして出てきたのはやはり予想通りの…
【石ころ?】×1
あれ?いや求めていたものですけども。求めていましたけどもね?
いややっぱりどう見てもコンニャク芋ですよこれ。図鑑やテレビで見たことありますし。
あ、もしかしてこの世界の住人からは食べ物として認識されていない?まあ毒ですしね。
プレイヤー側で知ってる人がいれば、そして作ろうとする人の元に届けば、コンニャクが出来ると。条件厳しくないですか?
そしてコンニャクが現状無いのにコレを納品依頼した人やばい人なんじゃなかろうか。ただのコンニャク芋研究家だといいなぁ。
まあクエストボード横の納品ボックスに叩き込むだけなので依頼者に会う必要はないのですが。
というわけで納品用プラスしかるべき人に渡す用の【石ころ?】を【採取】。
最後に目的の品が手に入ったので残り二種。キノコは森とかに生えてそうですが、とりあえずこの辺に森や林はなさそうなんですよね。
次は別方面の門から出てみましょうかね…その前にこの八百屋状態をなんとかするのが先ですが
そういえば、まばらとはいえモンスターいるはずなんですが、これだけぶらついて結局一度も戦闘にならなかったですね。称号とスキルが効いてるのかな?実感しにくいのですが。称号そのものが一番の日陰者というオチでしょうか。おあとがよろしいかなコレ。
むぅ、面倒ですが検証とかもした方がいいんですかね。
などなど、次々増える疑問に思考を散らしながら、私の初めての冒険は幕を閉じるのでした。
採取が楽しくなってアイテム欄すぐいっぱいになっちゃうのってあるあるですよね?
【石ころ?】…石に見えるがとある植物の根に近い部分であり、石ではない。毒性が強く食用には適さないが、食べる方法がないわけではない。