2-13 顔の変化についてのあれやこれ。あとついでに称号
続きが読みたくなったので書きます。
なんかもうここまで久しぶりだといっそ開き直るレベルです嘘ですごめんなさい。
時折いただく感想欄の、続きマダー?というコメントに、ああ、まだ書いていいんだな、と大変励まされました。ありがとうございます。
ノノを引き連れての『第一回ヘルブラウナス城下街観光スポット巡り』を終え、ゴールの元幽霊屋敷で【細工】作業をしながらノノと喋っていると--
「おいすー、新人研修の調子はどんな感じかにゃー?」
扉が開いて西洋人形が入ってきました。そういえば夕方ぐらいからログインするつもりとか言ってましたっけ。新人研修は任せたーとのお仕事依頼も追加で。クエストならなにかしらの報酬が欲しいものですが。
あと今ドアノブに手が届いてないのに平然と開けて入ってきましたね。騒霊の不思議パワーすごいなぁ。以前の見た目での出来事だったら、完全にモンスター襲撃イベント開幕の絵面でしたね。天候が雷雨とかだとなおよし。いやよくない。
きれいな見た目になってホラー度下がっててよかった。……まあ、下がっただけで無くなってはいないのですけれど。
「とりあえず一通り街の施設巡って、クエストの受諾と完了もやって、スキルについては本人がいろいろ予習してきたみたいだから好きに取らせて--って感じかな」
「……あとはミサが何か装備作ってくれるっていうからアクセサリーをお願いした」
「にゃるほどにゃー。ノノっちが名前そのまんまなのはめっちゃらしいなーって思うけど、その長身は意外だったぜよ。あっしの三倍ぐらいないかいそれ」
「……視界が新鮮で楽しい。……あと喋るゴシック人形に意外とか言われたくない」
名前はともかく、身長に関しては私も同感ですね。ノノと話すときに上に視点を持っていくのは慣れが必要そうです。まあ、そこの西洋人形さんの時も逆ベクトルの苦労をしたわけなんですけどね。あれ、体型いじってないの私だけ?
「まずは改めましてー、『稀人ノノよ、ようこそ我らが星へ』、なんつってーにゃはははー」
「……うん、お待たせ。待ち遠しかった」
「うむうむ。遅刻した分はあたしの気が向いたら取り立てるから、そのつもりでいるように!……っと、まずはフレンド登録じゃな。申請送るぜぃ」
「……ん」
気が向いたらの取り立てって、リスの冬支度で埋められた木の実並みの活用度なんだろうなぁ。
「よぉし、とーろくかんりょーっと。あ、意外といやぁさ、ノノさんや」
「……ん?」
「その……、軽く炙ったマシュマロがごとくトロ甘な表情は、日ごろ内心ではそんなに表情豊かな子だったんだなぁと分かって なんて言うか……あたしゃうれしいよ、うん」
「……へ?」
あ、ついにノノの表情に突っ込みが入りましたね。見慣れない表情に引いて言葉を選んでるのがちょっと面白いです。
というか今ノノそんな表現される顔なんですね。今の体制だと確認できないのが残念。
「……そんなかおしてるの……?」
「うむ。擬音で表現するなら『でへへー』か『うぇへへー』って感じじゃにゃあ。ウチの妹がお気に入りの俳優の写真集見てる時の顔に似てる」
「!?!?」
それは一般的にあまり人に見せていい顔ではないのでは……?まあトワがここに来るまではほかに人いなかったわけですし、私と面と向かって会話していたわけではないので、うんまあ、見咎めるような人はいなかったのですが。
「……ミサ?」
「なんでしょうかノノさん」
面と向かって会話してわけでもないのに目を逸らしたくなるようなプレッシャーが頭上から……。こういう場合どこを見ればいいんでしょうねあはは。
「……わたしの表情について質問があります」
「はい」
「……現実のわたしと比べて、こっちのわたしは……、感情が顔によく表れている?」
「はい。とても表情豊かだと思いマス」
「……っ、……感情設定変えてくるっ」
私からノノが離れる気配がしたので後ろを向いて確認すると--うわぁ顔真っ赤。この表情は永久保存モノですね。本当、現実でもこのくらいわかりやすければいいのに。
「えぇー、そいつぁもったいないぜー」
トワからも抗議の声。そうです。もっと言ってやってください。
「ミサっちもそう思うじゃろ?」
と、ここで私に振ってきますか。さすがに楽はさせてくれませんか。
「そうそう。現実でも表情筋鍛えさせようかなって思ったくらいだし。私と会った時もすっごい笑顔でかわいかったし」
「うわなにそれめっちゃ見たいんじゃが」
「……っ……か、かわっ!?」
あうあうと口を動かすも声にならない様子。私としては今日のことは不幸な事故として、このまま慣らしていってほしいところなのですが……。
「…………っ、無理!」
「あ、消えた」
感情表現周りの設定をしに、一旦ゲームを中断してしまったようです。まあノノならそう言うだろうなと予感はしていました。
「はぁ、なんで教えちゃうかな」
「本気で言ってる?」
「まさか」
さすがに無理にやらせるつもりはないですからね。私自身はもったいないと思ったので少しだけ言うのを遅らせましたが、仮にトワが言わなくても今日中には伝えるつもりでしたし。
というか、街をめぐってるときは多少おのぼりさんめいてはいましたが結構真剣な表情で観察していたので、この様子なら伝え方を間違えなければいけるかなと思ったんですけどねぇ。
「「あの顔じゃあやむなし」だにゃあ」
ですよね。顔真っ赤でしたし。トワが指摘した時の表情は確認できていませんが、他人に見られていいモノではなさそうですし。というか私の頭上でなんて顔してんだあの娘は。
「ま、二人っきりで気が緩んだのとミサっちに後ろから抱き着いてればそんな顔にもなるだろうさ」
「たまにやってくるから気にしてなかったけど……あとなんか称号取れるか実験するとか言ってたし」
「ちなみに、あと少しでよだれが垂れそうだったぜよ」
「よくぞ止めてくれた」
それは普通に嫌だ。グッジョブハルカ。
「…………ただいま」
「おかえり」
「おかー」
そうこう言っているうちにノノが戻ってきました。ほんのり唇が引きつっていますが、まあさっきの今ですからね。完全に感情をリセットできるわけもなし。表情が『無』になってないだけこちらとしてはうれしい限りです。
「……どう?」
「うん、大丈夫そう」
「いつも通りだにー。いつも通りすぎてもう少し表現度上げてくれるとこっちとしても助かるんじゃが」
「…………かんがえとく」
お、少しぐらいならそこまで嫌ではない様子。その調子でノノには感情を表に出すことに慣れていってほしいです。もちろん、無理のない範囲で。
まあ、私たちへの好意はそれなりにわかるのですが。特に私にはさっきみたいにくっついてきたりしますし。しかし行為はともかく表情がなぁ……。
「あ、そうだ。ちなみに、なんじゃが」
「……?まだ何か変?」
「いやぁ、そうじゃなくて。結局称号はとれたのかにゃーって」
「あ、それは確かに気になる」
私も実験に付き合わされたわけですし。まああの行動で獲得する称号ってどんなだよと思わなくもないですが、日陰に長時間いただけでうっかりとれるのが称号ですからね。予測など不可能というもの。
「……そこはばっちり」
「マジか」
ずっとくっついていたのでまだとれてないのかと思いましたが……。
「おぉー、これでわしら三人ともレコードホルダーかぁ。へっ、鼻が高いぜぃ。ま、情報版じゃあ奇怪な行動した奴の獲得報告ばっか上がるから持ってると変人呼ばわりされるんじゃが」
「えぇ……」
おいそれでよくぞ鼻が高いとか言ってのけたなこのピノキオめ。
「んでんでー、ノノちゃんはどんな称号げっとしちゃったのかにゃあ?」
「……やっぱり気になる?」
「そりゃあまあ、ねぇ」
「気にならんという嘘は吐けんにゃあ」
鼻が伸びますからね。天狗面も持ってますし。
「……狙い通り一定時間抱き着いてることが条件で」
「うんうん、条件で?」
「…………【おもいあい】だって」
「【おもいあい】……想い合い?相思相愛的な?おお、それっぽくないかに?ひゅーうノノっちやるぅ」
「……そ、そう思う?だったらいいんだけど……その……」
あのノノの反応からして悪いほうの変換予測がついてますねあれは。いやまあ、抱き合ってたならともかく、一方的に抱き着いてただけですし?『合い』というにはいささか……ねぇ。
【重い愛】なんだろうなぁ……。
うん、知ってる。
ノノからリクエストされた首用アクセサリーを見ながら私はそう、おもうのでした。
正直、今話のタイトルを
ノノ「魂がここがいいと叫ぶ」
にしようかとわりと本気で悩みました。




