2-7 ストーンブリッジの攻防
おまたせしました。
評価、ブクマありがとうございます。
「ほんじゃあまぁ、いっきますよぉって!」
人形の顔を獰猛な笑顔に歪ませながら、川床に散らばる大小の石を浮かべるトワ。その数5つ。
いつの間にやら操作出来る物体数が増えていたようです。
「飛ーんでっけぇい」
そして展開した石を一斉に射出。天狗さんのいる位置一点に狙うわけではなく、どれか当たれと言わんばかりに散らして避けにくいように。
その攻撃に対して天狗さんは――
「フハっ、威勢の割に温いぞ?その程度の礫ではな」
右手に構えるは楓を象った団扇。そしてそれを一振り、強烈な風を起こして迫る石礫を飛散させてしまいました。
物理的な遠距離攻撃への耐性はかなり高そうです。
ただ、無視して当たるままにせずに対応してきたということは、防御力が高いというわけではなさそうです。当たれば痛い、はず。
推測をしながら私は、合口を抜きながら欄干を駆けて距離を詰めます。団扇を振りきった今が好機というやつでしょう。
刀なぞ、つい最近まで華の女子高生やってた私がうまく使えるわけもないのですが、そこはそれ。考えればそのように動くこの世界、お父さんが以前見ていた時代劇の動きでも参考に、見様見真似で行かせてもらいましょう。あとは【刀術】スキルがなんとかしてくれる、予定。わざわざSkP消費して取ったんだから頑張れ。
ちなみに、【刀術】は刀を作成したら解放されました。刀の取得・所持が条件だったようです。
「せっ」
「なんのっ」
振りかぶっての袈裟斬り。バックステップで躱される。
まだ行きますよ?
刀を振った勢いのまま踏み込んだ足を軸足に半回転、左手に掴んだ白鞘で首付近を狙って突き攻撃。
「フハっ、やるな」
両手で構えた団扇の柄の部分で受けられる。
それならと身体を正面に向けながら再度刀で横一閃。
「ぬうっ」
鞘を押し返しながら後ろに跳び、そのまま翼を広げて飛び上がる天狗さん。
これは刀の射程からは完全に外れましたね。
ならば遠距離攻撃あるのみ。
「【点火】」
刀を持つ手を自分の口元に近づけて、火を灯してからの大きく息を吸ってーー【龍の吐息】!
「なんっーー」
流石にこれは予測できていなかったようで、天狗さんは私の放った炎ブレスに呑まれました。
「ふぅ」
欄干から降りてとりあえずの一息。
連続で攻めてみましたが一撃、なんとか入れられましたね。初めてのことでも考えた通りすんなり身体が動くというのは、なかなか楽しいです。
「おお、やるじゃんミサっち。かっこよかったぜー」
「そりゃどうも」
それにしても、映像資料は予想以上に使えそうですね。なんとなくでも見ていて良かった時代劇。どこで何が役に立つかわからないものですね。あとで殺陣の動画とか、もう少し漁ってみてもいいかもしれません。
「ぐ、ぐぉおお……ぬん!」
ブレスに呑まれて火ダルマと化していた天狗さんが再度団扇を振り、炎を吹き消してしまいました。
なるほど、そういう使い方もできるんですね。このまま燃焼ダメージで倒れてくれれば楽だったのですが。ま、そう上手くは行きませんよね。
「ふ、フハハ……なかなか、やるではない、か」
「息整えてからで良いですよ?」
「色々煤けてるぜー?」
「う、うるさい!」
なにやらお気に召さなかったご様子。人の厚意は素直に受け取った方がいいと思いますけど。なんてね。
「『なかなかやる』ということは我々は合格、と受け取ってもよろしいので?」
「ま、まだだ」
「えぇー 」
「まあ聴け。確かに攻めの力に関しては認めよう。故に今度はこちらから攻めさせて貰う。それを見事凌げば攻守ともに合格、としてやろう」
なるほど。言わんとしていることは分かりますし、話の筋としてもおかしくはない、のですが……。
「舐めプかまして、ミサっちにいいようにやられて、挙句顔真っ赤にして俺にターンよこせって……ぷっ、だっさーい」
此奴、煽りよる。
まあ私も概ね同じ感想ですけど。
「ぐぬっ……う、うるさい!そして赤いのは仮面で元からだ!とにかく!いくぞ!構えろ!」
「はいはい」
「へいへーい」
仕方のない天狗ですね。
トワを抱えて天狗さんと距離を取り、橋を挟んで向き合います。トワはメニュー画面を開いてインベントリをなにやら弄っている様子。
「準備は良いな?」
「おけー」
トワはインベントリ弄りながら生返事。まあ本人がいいと言うならいいのでしょう。
えーっと、確か……
「『いつでも仕掛けてくるがよい』でしたっけ?」
「ふん、では征くぞ」
おもむろに天狗面を外して捨てる天狗さん。
仮面の下からあらわれたのは、烏を想わせるクチバシのついた、黒い顔。
お面が石畳に当たってからん、と綺麗な音を立てました。
やがて、私達の後ろから風がふくのを感じます。
後ろからふいた風はそのまま天狗さんの元へ流れていきーー
天狗さんの纏う風の一筋として加わりました。
幾条もの風を纏い、纏う風は渦を巻き、旋風はやがて竜巻のように。
あ、これかなりヤバそう。というかヤバい。二人で煽ってる場合じゃなかった。
「トワ、これどうする?」
「んー、無理そうなら避けなくていいじぇ。あっしを抱えたまま、あいつに対して正面向いといてー」
トワには何か策がある模様。避けなくていい、ということは防ぐ見込みがあるのでしょう。ならまあ、お任せしますかね。
「了解。任せた」
「まかされたー」
言われた通り、トワを抱えて、正面の天狗さんをしっかりと見据えて、その時がくるのを待ちます。
「待たせたな。ー いざ我、疾風とならん ー【疾風一閃】!」
テングネード
戦闘描写やっぱり苦手だ




