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我が征くは職人(忍)道  作者: あらじる
ことのはじまり
28/70

1-27 森のたらばがに

おまたせしました。



「ここだ」

「ここ、ですか」


案内されたのはズラリと並ぶ露店の端っこ、街の外壁が影を作って薄暗い所でした。

露店を構えているプレイヤーを見ると、骨でした。スケルトン……ですかね。たしか選択可能種族の不死者系として、ゾンビや吸血鬼と一緒のカテゴリーだった気がします。

そんなスケルトンさんは露店セットの大きなパラソルの下で体育座りしています。

ああ、スケルトンも日光苦手なんですね。それでこんな日陰に……。露店も命がけですね。


「やぁやぁこれはこれは、八百屋のマトンさん。可愛らしいオジョーサンを連れて何用っすか?」


骨をカタカタと鳴らしながら、中性的な声で話しかけて来ました。声帯どうなってるんでしょうか。

可愛らしいと言ってくれたので私の中で評価が少し上がります。こういうセリフをポンと出せるのも、接客では大事ですよね。見習いたいものです。


「こちらのお嬢さんがモンスター素材をお求めでな。お前のとこなら置いてるだろ」

「ウチは一応飯屋なんすよ……?まあ置いてなくはないっすけど」

「え、飯屋……?」

「はっはっは、やっぱそういう反応になるよなぁ!言ったろ、ちょっと変わってるって」


マトンさんと私で、『ちょっと』の範疇にだいぶ差があるようですね。ただまあ、


「清潔感があっていいですね」


これ以上ないぐらいに。髪の混入とかあり得ないですし。


「ぶっは」

「あっははー、なかなか言うっすねーオジョーサン。今後も是非ともご贔屓にー」


マトンさんツボったみたいですね。涙出すほど笑ってます。スケルトンさんのウケも上々のようです。


「ひー、まずは紹介だな。ミサさん、この骨は自称料理人のーー」

「とりなん、っす。よろしくー」


鳥軟骨……。


「んでこっちが新人装備屋のーー」

「ミサです。よろしくおねがいします」

「装備屋っすか?鍛冶?裁縫?」

「あ、どっちもです。あと細工も」

「ははー、手広いっすねぇ。生産沼へようこそー」


生産は沼なんですか……ハマって抜けられないってことですかね。


「んじゃオレは自分の店に戻るわ。なんかあったらまた呼んでくれ。しばらくはあの辺で露店やってることが多いと思う」

「はい、ありがとうございました」

「また野菜買いに行くんでよろしくっすー」

「おーう」


マトンさんが戻ってしまったので、とりなんさんと親睦を深めましょうか。


「とりなんさんは料理人、なんですよね?」

「そっすよー。次のアプデで空腹度と味覚の実装が確定してるんで、それ用に練習中ってわけっす。そんで需要ができた瞬間にがっぽりって寸法っす」

「なるほど、それでモンスター素材も扱ってる、というのは?」

「肉を手に入れるためにモンスターをガンガン解体するんすけどね?そうすると毛皮やら爪やら余るんすよ。料理の需要もあまりない現状、この余り物を売っぱらって生計を立ててるんす」


なるほど、上手い考えですね。


「装備作るんならこの辺がおススメっすかねー」


そう言って見せてくれたのは、色々な獣系モンスターの毛皮や、牙・角などの骨素材をずらりと。この近辺、探せばこんなにたくさんの種類のモンスターいるんですね。

一覧を眺める中で、ある商品が目にとまります。


「森蜘蛛の牙……?」

「ああ、森にいるこーんなデカいヤツのっすね」


言いながら両手を広げて大きさをアピールするとりなんさん。え、そんなデカいのいるんですか?もともとあまり無かった森に行く気が、もはや行きたくないレベルなんですが。益虫とはいえそのサイズはちょっと……。それはともかく、


「まさかこの蜘蛛も食材に……?」

「ご名答っす」


当てても嬉しくないのですが。


「おや、食用とされる蟹の数種類は蜘蛛の仲間なのをご存知ないっすか?」

「豆知識レベルでは聞いたことありますが……」

「この蜘蛛も意外と肉が詰まってていい感じなんすよー、ちゃんと食材判定でしたし」


アイテムとして食材判定なことと食べたいかは別問題なのでは……。


「少なくとも一口目にかなり勇気いりますよねそれ」

「そっすかねー、ヤシガニみたいなもんだと思えばいけそうだと思うんすけど」

「料理して売るなら材料名は隠した方がいいと思いますよ。どうしてもイメージが先行するので」

「なるほどー。そうさせて貰うっす」


美味しいなら試してみても……うーんしかし蜘蛛だしなぁ。周りの評判次第ですかね。知ってしまった以上若干ハードルが高いです。

と、食材について聞きたいんじゃ無かったのです。


「蜘蛛ってことは巣を張るんですか?」

「張るっすよー。サイズ相応のアホみたいにデカいのを」

「その糸って採れますかね」

「御察しの通り森蜘蛛の巣糸ってアイテムがあるっすよー。縦糸と横糸で別アイテムっす」

「縦が頑丈で、横が粘着質、とかですか?」

「大正解っす。よくご存知で」


その辺は実際の蜘蛛と一緒なんですね。


「その糸、あれば売って欲しいのですが」

「ほーい、1束10m分で350Gでどうっすか?」

「じゃあ2束ずつください」

「まいどありっすー」


糸があれば生産の幅も結構広がりそうですよね。物は試しで2束ずつ買ってみましたがどうなるでしょうか。粘着糸の使い勝手が特に楽しみですね。


「いつもこの辺でお店出してるんですか?」

「日中は基本ここっすね。夜時間になると外に狩りに出てることが多いっす」

「では日中を狙ってまた来ます」

「ほいほい、そのうちこっちも包丁とか頼むかもっす」

「ええ、機会があれば是非」



とりなんさんと別れ、足早にグルドさんのお店に戻ります。30分で戻る予定が、だいぶ超過してしまいました。

念願のモンスター素材屋さんにも会えましたし、今後は色々と実験と生産が捗りそうですね。

何が出来上がるか楽しみです。





蟹はズワイガニが好きです。

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