1-26 プロデューサーズ
ブクマ・評価、ありがとうございます。
文章レイアウトを多少いじってみたのですが、どんな感じなんでしょうね。よくなってるといいのですが。
【残花】を左手に早速装備してみました。ローブの袖口からチラリと光っていい感じです。やや新品の主張が強いですが、そのうちくすんだりして馴染んでいくでしょう。
ああでもこれ嬉しいですね、自作のアクセサリーなんて、中学生の時に作ったビーズのやつ以来じゃないでしょうか。用事もないのについ見てしまいそうです。誰にも見咎められないここで満足するまで眺めてニヤニヤしておこう……。
ひとしきりニヤついてから考えるのはこれからの予定、さてこの後はどうしましょうか。借りスペースの利用時間はまだ半分以上残っているのですが。
とりあえず採掘してきた鉄や銅を鋳塊に変えときますか。
まだ煌々と元気一杯な炉に、手順をこなした鉄鉱石を入れます。前にやったのは闇鉱石だったので、普通の鉄はこれが初ですね。まあこの後この鉄も普通じゃなくなりそうですが。
ポンプを踏んで温度を維持します。レベル上がって成長した分、前よりだいぶ楽ですね。他の作業のためにももう少しレベルあげたほうがいいでしょうか。
生産作業でも経験値は入るので、それで賄えないこともないのですが……トワとどっか行って狩ってもらうほうが実入りがいいんですよね。まだ簡単で経験値の低いものしか作ってないせいではあるんですけど。
一応モンスター狩りも視野に入れますか。ブレスである程度はなんとかなるでしょうし。
あ、鉄が融けたので銅鉱石とバトンタッチですね。赤々と光る鉄は鋳塊用の型に流し込んで冷め待ちです。熱い中おつかれ様です、冷気のブレスをプレゼントしますね。たーんと召し上がれ。
そういえば炉の近くにるのにほとんど暑さも熱さも感じませんね。これはいいですね、最高です。【残花】ちゃんありがとう。今後もお願いしますね。
その後銅も同じように処理し、両方冷え固まるのを待つ段階に。完了メーターの進みが早くなったとはいえ元々が二時間かかる工程ですからね、まだまだかかりそうです。
−祝福の回数が規定値を達成しました。スキル・【龍の祝福】が強化されます−
おお、初のスキル強化ですね。ブレスや点火の方が使ってる気がしますが、使いやすい分要求回数も多いのでしょう。
えっと、強化内容は……付与される祝福のバリエーションが増えて、その中からの選択式になった、らしいです。祝福の詳しいバリエーション内容は書いてありませんでした。
そのへんは自分で勝手に実験しろってことですね。
鉄と銅の鋳塊ができたら確認してみますか。多分炎と氷の祝福が付いてるはずですし。
しかし完成まであと30分ですか、一度ログアウトするほどの時間でもないですし……ちょっと外をぶらついてきますかね。
「ちょっと出てきますね」
「おぅ」
目指すは南門です。
街の南外部の森にプレイヤーが集中してると聞いてこれまでなんとなく敬遠していましたが、ちょっと覗いてみましょう。近いですし。
お店を出てまず目に入る、パッツァさんのいる教会の横を抜け少し歩けば南門です。
門付近の雰囲気は西とちょっと似てますかね。露店が並んでいます。
大きく違うところは、露店を構えているのが街のNPCではなくプレイヤー、というところでしょうか。
なるほど、人が集まるから需要もあるし供給もあると。道理ですね。
いろいろと素材が見つかるかもしれませんし、相場の勉強もしたいです。時間をかけてじっくり見たいところですが……とりあえず今は、何売ってるのかだけざっと確認しておきましょうか。
「らっしゃい!いい野菜揃ってるぜ!お、君はーー」
「へ? あ、その節はどうも」
私を知っているような声に顔を向けると、以前野菜を売りつけたエルフさんでした。ここ、マトンさんのお店だったんですね。
「いやぁこちらこそ、改めて礼を言いたいと思ってたところだ。お陰様でこうして出店までこぎつけられたからな!助かったぜ」
「いえ、対価も十分頂きましたしそんな……」
「はっは、オレが言いたいだけなんだからそんな縮こまらんで受け取っといてくれ」
「あ、はい」
さっぱりとした気持ちのいい人ですね。ハルカとちょっと似てるかな?会わせてみたい気もします。
「そういやあんときはロクに自己紹介もしてなかったな。オレはマトン、この世界一の農家を目指してる。よろしくな!」
たしかに、お互いそういうのもなく別れてしまいましたね。頭上に名前が表示されているとそういう部分が疎かになりがちかもしれません、気をつけましょう。こちらもフードを下ろしてご挨拶をば。
「これはとんだ失礼を。私はミサ、一応装備系生産職を目指してます。以後お見知り置きを。」
「お、なんだ生産仲間か!こいつぁいよいよ宜しくしないとな!」
「世界一とかは目指してないなんちゃってですが」
「いいんだよなんだって。生産屋は横のつながりが大事だからな。お互い色々融通する以上、仲良くやりてーだろ?」
「ええまあ、なるほど?」
横の繋がり、ですか。
「それに、ナメた態度で絡んで来る客とかもいねーわけじゃないからな。そういう情報のやりとりも含めて、生産屋はある程度の繋がりが必要なのさ。逆に自分のとこじゃ捌けない客を他に回したりもするしな」
ああなるほど、同種の生産同士でも商売敵というだけではないんですね。目からウロコです。
「勉強になります」
「多分、ミサさんは生産初心者だろ?せっかく生産畑に来たんだ、しっかりがっつり楽しんで欲しい。そのためにちょっとだけ、覚えておいてほしいんだ」
「ありがとうございます。肝に命じておきます」
「あー、なんか説教臭くなっちまってごめんな」
「いえ、助かります。お察しの通りペーペーの初心者なので」
「新しい生産村の住人は大歓迎だぜ。わからんことあったら答えられる範囲で答えるから、じゃんじゃん聞いてくれよな!」
「はい、宜しくおねがいしますね、先輩」
「おう、頑張れよ後輩。ただ、呼び方は普通で頼むわ。なんかむず痒い」
めっちゃ良い人ですね。おそらく、他のこういうゲームでも似たようなことをやってきたのでしょう。ベテランの風格的なものがあります。
ふむ、せっかくですしもう少し都会派エルフ先輩に頼ってみますか。
「では早速質問なんですけど」
「お、なんだ?」
「モンスターの素材扱ってるお店とかってありますか?あと布素材もあれば」
「あー、やっぱどこも素材不足だよなぁ。NPC売ってくれねーしな」
「そうなんですよ。完成品は売ってるのに」
「それな。んでまあ、売ってくれるやつなんだが、布素材はすまん、現状素材自体の情報も出てない状態だ。4日後のアップデートで何か変わるんじゃないかって予想が流れてるぐらいだな」
「そうですか……」
残念ですが仕方がありませんね。その予想が当たることを祈りましょう。
「んで、モンスター素材に関してだが、こっちはいい店を知ってる」
お?
「ちょっと変なヤツだがな。まあ生産勢なんて、ほとんど変人の集まりみたいなもんだけどな。異世界で冒険そっちのけで物作りに走ってるんだから」
「たしかに」
それは否定できないですね。わざわざ生産やりたくてこのゲーム始めた身ですし。
「ミサさんも龍人だろうに生産職やってるし。その種族性能的にバリバリの武闘派だろ」
かっこよかったのでつい。
「龍人で職人ってなんかこう、良くないですか?」
「スッゲーわかる、めっちゃかっこいい。そういうの大事だよな」
うんうんと頷いてくれました。マトンさんとはすごく仲良くなれそうな気がします。さすが都会派エルフ農民先輩。
「この感じならアイツともすぐ打ち解けられそうだな。こっちだ、着いてきてくれ」
「よろしくおねがいします」
いったいどんな人なんでしょうか。少し不安ですが少し楽しみでもありますね。
再来の羊肉
今後もたまに登場すると思います。




