1-22 『き』を探すなら林の中
おまたせしました。
たまには平和に。というかあんまり戦闘しないはずだったんですけどね。
大狼との一戦後は特に何事もなく、目的地である山に着きました。近づくに連れ迫力が増してきますよね山って。特に何かしてくるわけでもないのに迫って来る感じ、不思議です。
「高い」
「いやーでっかいねー」
目の前には山道入り口。突き当たりの分かれ道で林に呑まれているので先は見えませんが、山の腹部から所々見える登山道まで繋がっているのでしょう。
マップによると《ボレイオス山》という名称らしいです。
山はここから眺めるに、中腹ほどまで林道、そこから上は岩が目立つようになっていきます。鉱石が掘れるのはどの辺ですかね。
とりあえず、登ってみますか。
奥へ進むと山道でおなじみの看板が。
《←頂上 苔岩の滝→》
の表示。観光地感ありますねぇ。
苔岩の滝って、多分洞穴のあったあそこですよね。方角的にも合ってますし。滝の上側から来るルートなんでしょうか。
まあ今回は頂上方向へ行きましょう。滝へのルートも気にならないわけじゃありませんが、水場より岩場の方が鉱石拾えそうですし。またの機会に。
「積み木」
「キツツキ」
「危機」
「吸気」
「……金メッキ」
「近畿」
「に゛ゃあああ!金婚式!」
「汽水域」
暇潰しのしりとりが静かな山道に響きます。響くのは主にトワの唸り声ですが。
暇つぶしでやってるんだから、『き』で対抗して来なければいいのに。まあ、挑むというなら相手になりますが。そろそろ濁点変換ありルールの追加申請でしょうか。銀婚式とか言うんだろうな。牛鬼って言おう。
「しかし平和じゃの。狂気」
「確かにね、客席」
敵出ないですしね。道が狭いので出てこられると面倒なのですが。躱しにくいですし。
「どんなモンスターが出ると思う?あ、金時」
「うーん、岩山まで行けばゴーレムとか?軌道敷」
「ぬー、硬いのはめんどそうじゃの。……そろそろ『き』縛りやめん?」
「お好きにどうぞ」
「しかしここで退くとなんか負けた気がするしにゃあ……基礎知識」
「そ。切っ先」
「ぐぬぬ……」
私のレパートリーもだいぶ怪しくなってきたので、そろそろ退いて欲しいというのが正直なところ。トワの思考時間が長いので、なんとか思い出せている感じです。メニューの辞書機能使うのはさすがに卑怯ですしね。
「あ」
「なんじゃ?」
「いやなんでも。ちょっと思い出したことがあっただけ」
「そか。むーぅ……き、きぃー」
『き』を探しに脳内を漁っているトワは気づいていませんが、探知に敵の反応が出てたんですよね。むこうもこっちに気づいていないようだったので、スルーさせてもらいました。ちなみに、チラッと見えた感じはデカい熊でした。普通に怖い。そりゃ山ですもんね、熊ぐらいいますよね。
トワに見つかったら十中八九闘いに行こうとしますからね。バトルジャンキーかと。
私はあくまで素材探しに来てるだけですし、避けられる戦闘は避けますよ。
そんなこんなでざんざか歩き、視界に入る岩が増えて来た頃、再び分岐点にあたりました。看板によると標高は750Mで五合目らしいです。1500Mぐらいなんですねこの山。
行き先は変わらず頂上を目指すルートと、鍾乳洞へ向かうルート。
下でも思いましたが、観光地感ありますね。鍾乳洞はダンジョンなんでしょうか。松明は持って来ていますが、鍾乳洞で採掘というのもイメージに合わないというか、出来なさそうですよね。
というわけで頂上ルートへ進みます。
山頂で採掘というのもおかしな話なんですけどね。一応岩の多そうな方へ。
「奇跡!」
「ん?」
「いやいや、しりとりよしりとり。それともあれかい?『ん』ってことは負けを認めるってことかにゃ?」
静かにしてると思ったら、あれからずっと考えてたんですね。そして煽るのなら容赦はしない。
「奇跡的」
「ぐへぇ……あ、狂気的!」
「吸血鬼」
「 」
あ、また静かになった。今度から騒がれる前にしりとりでも提案しましょうかね。私もいい暇つぶしになりますし。
っと、探知に反応が。お待ちかねの採掘スポットですねこれは。道の選択はこっちであっていたようです。
近づいてみると、また掘るとまずそうな石柱なんてこともなく、一見すると普通の岩。割ったら中身がってことですかね。
さあさあ長らくお待たせしましたボロツルハシ君。きっと君が求めていた仕事ですよ。
「採掘するね」
「ほーい。ぬぬぬ……」
まだ悩んで唸っているトワを下ろして岩に向かって【採掘】。出て来たのはーー
−【ボレイオスクリスタル】×2を取得しました−
鉱石じゃなくて水晶でした。そうか、宝石系も出るんですよね。これは細工行きでしょうか。どういう効果になるのか今から楽しみです。
探知にはまだいくつかスポットの反応がありますし、ガンガン掘っていきましょう。空の宝箱が埋まるぐらい採掘したいですね。いざーー
「勤務先!」
「汽笛」
採掘って一回やってみたいんですよね。一回で十分ですが。




