1-18 ブレス・ユー
鍛治回です。やっと生産できました。
ブクマ・評価、ありがとうございます。
柔軟体操やら情報収集やらで1時間などあっという間に過ぎ、戻ってまいりましたユアプラ世界。
早速グルドさんのお店に行きましょう。きっと鋳塊が私を待っているのです。
「戻りましたー」
「おぅ」
グルドさんに挨拶して先程私が陣取っていた場所へ。さーてちゃんと固まってくれてるかなーっと……
−【闇鉄の鋳塊】(品質・C)が完成しました−
果たして私の手には冷えて棒状に固まった金属が。
やりました。苦労した甲斐があるというものです。まぁ品質が可もなく不可もなくといった感じですが、初回でこれなら上出来でしょう。あとは慣れとスキルの習熟度が上がった未来の私がなんとかする。しといて。がんば。
さて、しかしながらここで満足するわけにいかないのも生産道。素材の素材が素材にランクアップしたなら次はいよいよ作品として仕上げなければいけませんよね。というか、精錬しただけじゃ鍛治とは言えませんし、レッツ鍛治。
−炉に火を入れてください−
はいはいわかってますよって。こちらは慣れたもので、薪をテキトーに放り込んで【点火】からの【龍の吐息】で一発です。この火力でMP消費的にはあと9発ぐらい撃てそうなの、ちょっとおかしい気がしないでもない。点火じゃまともに着かなかったのに……。
もう一度鍛治を選択して、使う素材は出来たばかりの鋳塊。作るものは……うーん、鋳塊ひとつで作れるものがあまりありませんね。当たり前ですけど。
まあ、ナイフでいいですかね。一応細工に回してアクセサリーにするという手もありますが、今回は鍛治で最後までいってみましょう。
というわけでナイフを選択。
えー作り方は……炉に放り込んで再び加熱、温度表示が一定まで上がったところで引っ張り出してハンマーで叩く、完成度合いのゲージが溜まるまで以下繰り返しですか。加熱しすぎても品質が落ちるので注意、と。
「あちっ……あっつ!」
再びHPを減らしそうな熱と戦いながら、赤熱した鋳塊を専用の器具で固定し、ハンマーでガンガン叩きます。これリアルでやってる人いるんですよね……とても真似できる気がしないのですが。どういう皮膚してるんですかね、火鼠の皮衣でも纏ってるんでしょうか。
ーー熱して叩いて伸ばして、熱して叩いてを数えるのが億劫になる程繰り返した頃、完成度ゲージが溜まりました。形状がただの棒状からだいぶナイフっぽくなって来ましたね。まだ肝心の刃が無いですが。
次鍛治やるときは、もう少しステータス上がってからにしたいですね。STRが上がれば、もっと早く終わるはずですし。上昇スキルも考慮に入れますか。
それで、次の工程は……焼き入れと研ぎですか。
また焼きかぁ……真面目に炎耐性が欲しくなって来ました。
っと、炉の温度が下がって来てますね。燃料切れでしょうか。
「おじさーん」
「おぅ、どうした」
「なんか炭足りなくなって来たみたいなんですけど」
「使いすぎだ阿呆。炭なら薪の裏の箱ん中だ。本来なら追加料金請求するが、今回は初回サービスで負けといてやる」
「わぁ、ありがとうございます」
「おぅ、次からは払えよ」
グルドさん、太っ腹。見た目通りとも言えますが、せっかく気持ちよく奢ってくれたのに水を差すこともないでしょう。
あと使いすぎってことは、グルドさんの判断で半日の利用に足る量は入っていたと考えて良さそうです。つまるところ私のブレスが原因でしょう。派手に燃えてましたし。便利なんですが、使い過ぎは禁物ですね。
ありがたく追加の炭を放り込んで点火ブレスを放ちます。
え、使いすぎ?いやいや、これは本来私がお金を払うはずだった品。そしてこういう好意には遠慮しないのが私。ありがたく豪勢に使いきりますよ。
ナイフらしくなってきた鋳塊を再び炉にイン。温度を見ながらいい感じのタイミングで引っこ抜き、水に浸けます。じゅわぁ、と音を立てて立ち昇る湯気。そしてまた温度が下がったら炉に戻してもう1ループ。焼き入れはこれで完了みたいですね。あぁ、やっと炉から離れられる……。
次は砥石でも使うのかと思いきや、研ぎをするための機材、見覚えがあるんですよね。高校時代に技術工作室にあったやつにそっくりです。
確かどことなく電気っぽい名前の……『サンダー』でしたっけ。同じクラスの新山くんがふざけて指かすらせて抉られてたやつ。え、これ使うんですか?ミスったら今度こそHP減るやつですよね。
……慎重にいきましょう。
今回作成するナイフは片刃にする予定なので、削るのも片方だけです。ギュンギュンと勢いよく回転するサンダーに板で固定したナイフを押し当てていきます。
ひぃ、火花が散って怖い!
最初こそ怖がってはいたものの、そういうもんだとわかれば次第に慣れ、だいぶ安定して削れるようになってきました。
というかハンマーで叩いてた時も火花散ってたでしょうに、今更何を怖がっていたんですかね私は。新山くんが痛そうにしてたからですねきっと。
そうこうしているうちにサンダーの出番は終わり、仕上げの砥石をかける工程まで来ました。
砥石は家の包丁で何度かやったことがあるので、さほど戸惑うことなく操作できました。石の種類がいくつかあるのには驚きましたけどね。というわけでーー
−【闇鉄のナイフ】(品質C+)が完成しました−
かーんせーい。わーぱちぱち。いやあ疲れました。品質が若干上がってるのも、頑張りを認めてくれているようで嬉しいですね。さて性能でも確認ーー
ピコン!
「へ?」
−条件を満たしたので、スキル・【龍の祝福】を習得しました。スキル習得に伴い、2SkPを進呈します−
「は?」
本日二回目。スキルって勝手に生えるものなんですね、わぁい。
【龍の祝福】
習得方法:【龍の吐息】を複数回使って生産行動を行う
効果:【龍の吐息】を使って生産を行うことで、制作物に追加で祝福効果が発現する
ああなるほど、吐息と祝福をかけてるんですね、上手いなぁ。
現実逃避もほどほどに、覚悟を決めてナイフの性能を確認しますか。
どんな祝福かわかりませんが、ヤバイものが完成してる気がするんですよねこれ……。嬉しいといえば嬉しいんですけどね。
【闇鉄のナイフ】【銘: 】(品質:C+)(制作:ミサ)(武器・片手)(耐久100/100)
攻撃タイプ:斬・突・炎
ダメージ上昇値:4(+5)
追加効果:攻撃時、闇属性の追加ダメージ
祝福:攻撃タイプ炎追加、ダメージ上昇値+5
−闇鉄で作られた、いたって普通のナイフ−
いたって普通とは一体……一昔前のラノベに出てくる『ごく普通の高校生』ばりの内容との乖離が起きているのですが。
攻撃タイプからすでにおかしいでしょう。闇鉄本来の効果っぽいのと合わせて四属性もあるんですが。それなくても初心者剣9本分の強さなんですが。普通のナイフのくせに。
どうしましょうこの子、多分出てくるタイミングがRPG換算で街二つ分は早いですよね。もう、せっかちさんだなぁ。
とりあえず、トワにでも渡しとこう……。
やらかし火遁女子ミサ
【闇鉄の鋳塊】…闇属性の魔力に晒され続けた鉄鉱石を精錬した物
これを材料に作ったものも闇の属性を持つ
−精錬お疲れ様。よくできました−




