1-17 龍の吐息
ブクマ・評価、ありがとうございます。
「ありがとうございましたー!!」
微妙に耳と頭に痛みを感じながら《ミトラの倉庫》を後にしました。さて次は何をしましょうかね。
文字通りのお荷物は全部置いてきたのでだいぶ身軽になりましたし、北門から出て散策アンド採取もいいかもしれません。それともトワの服を作るための素材を調べて探してみるのも……というかそもそも生産スキルこそ持ってますが、どうやったらいいんですかね。
ふむ、生産したいものがある以上、そちら優先の動きをしますか。
試しに取得済みのスキル欄から【裁縫】を選択すると、
−ここでその行動は出来ません−
の表示。まあこんな往来でやることじゃないですよね。しかし、じゃあどこでやれって言うんですかね。
ここは恥を忍んでもう一回パッツァさんに聞きにいきましょうか……
いやいや、さっきすぐ近くの施設を紹介してもらったばかり。きっと倉庫がここにある以上、すぐに取り出して行ける場所にあるはず。ちゃんと周囲を見廻してからわからなかったらーー
水路挟んで反対側にありました。早まった行動しなくて良かった……
看板には《貸し作業場 グルド》の文字。多分ここでなら出来ますよね。
「すみませーん」
「おぅ、らっしゃい」
厳ついドワーフなNPCのグルドさんは、いたって普通の声量で安心します。
普通の人間女子のはずのミトラさんはなんであんな大声だったんですかね。もしかして人間じゃなかったんでしょうか。なら大声出しそうな種族ってなによって話なんですが。
「生産したいんですけど、場所借りれるんですか」
「おぅ、半日で800Gだ。炉や道具はその辺にあるだろうから適当に使え」
なんと、道具の貸し出しまでしてくれるんですね。これはありがたい。自分のお店的なものを手に入れるまではしょっちゅうお世話になりそうです。倉庫も近いですし、上手い商売ですねぇ……。
「ありがとうございます。じゃあ、また後で来ます」
「おぅ」
とりあえず、テキトーに材料っぽいもの集めますかね。というわけで、市場へgo。
「無い……」
しばらく探してはみたものの、材料的なものが見当たりません。完成品や作るための道具は見当たるのに、肝心の材料がありません。
あぁ、昨日野菜を売りつける相手を探してた時、マトンさんもここで野菜や種を探してたんですよね。そして見つからなくて肩を落としていたと。おそらく一切の素材的なものが売られてないんでしょうね。この街の流通どうなってるんですか……。
つまるところプレイヤー同士でさっさと流通も確立させろってことですよね。おそらく他のプレイヤーさん方も同じ結論になるでしょうし、そう時間がかからずに露店が流行るでしょう。
むぅ、布素材が見つからないとどうしようもないですし、今日のところは裁縫は諦めますか。
倉庫に一旦戻って闇鉱石出して鍛治の練習にしましょう。
……ところで耳栓とか売って無いですかねこの市場。
「……すいませーん、場所借りに来ましたー」
「おぅ、800Gだ」
そろそろダメージ認定されそうな耳をさすりながら、再びグルドさんのお店へ。代金を支払い炉の近くの作業台に陣取ります。
いざ。
【鍛治】を選択すると、
−炉に火を入れてください−
の表示。はいはい了解ですよっと。
「【点火】」
炉の近くに置いてあった薪を拝借して、炭の入った炉にいくつか投入。ついで手に取った細めの薪に点火魔法で火をつけようとしたのですが……
「むぅ?」
なかなか着きません。
燻って一部赤くなってはいるものの、煙が出るばかり。湿気ってるんじゃなかろうかこやつ。
これ息吹きかけたりした方が良いんでしょうか?
まあモノは試しに、【点火】越しにかるーく……ふーっとーー
瞬間、目の前が急に明るく熱くなりました。
「うひゃい!?」
火です。火が出ました。いやもともと魔法で火は出ていたのですが、まるで私の息に火がついたような、そんな感じです。ちゃんと薪にも火がついたのは良かったのですが、今のは一体……私の息、可燃性ガスでも含まれてるんでしょうか?ガスバーナーか。というか口臭大丈夫?臭かったりしませんよね?
など戸惑っていると、ピコン!という軽快な通知音と共に、
−条件を満たしたのでスキル・【龍の吐息】を習得しました。スキル習得に伴い、2SkPを進呈します−
と通知文が。
へ?なんか急に強そうなスキル生えたんですが……と、とりあえず火がついた薪を炉に放り込んでからスキルの確認を。
【龍の吐息】
習得方法:自身で出したいずれかの属性魔法に息を吹きかける
効果:魔力を吐息に乗せて運び、指定した属性魔法を強化する 吐息の向きと強さにより調整が可能
わぁお、そのうち出来るようになったりしないかなと期待はしていましたが、なんて分かりにくい習得方法ですか。というか属性問わずなんですね、強い。他の属性魔法も取りたくなるなぁ……
とりあえず試しにもう一回。今度は炉の中に向かって、さっきより強めで……
「【点火】」
からの、【龍の吐息】!
ぶわぁ、と炎が炉の内部を舐め、薪どころか炭まで一気に火がついたんですが。ちょっと楽しいですねこれ。前にBBQやったときにハルカパパが持って来ていた大型バーナーを思い出します。あのときは危ないからって触らせてくれなかったんですよねぇ。
さて、予想外のことは起きましたが、無事火がついたので今度こそ鍛治スタートです!
【鍛治】を選択すると、
−作成するものと素材を選んでください−
と指示をもらったので、まずは闇鉱石一つを使って鋳塊を作ることに。
えっと、この容器に入れて、この粉を振りかけて炉に入れろと。ほいほい。お、完成までのタイマーが表示されましたね。あとは表示された温度と指示された温度がずれないように、このポンプ踏んで調節、と。結構難しいですね……まあやってるうちに慣れるでしょう。
タイマーの針が上を指し、完了を告げました。つ、疲れた……!そして暑いし熱い!
容器をトングのようなものを使って引っ張り出すと、中に入れた鉱石はどろっと赤熱した液体に変化していました。おお、あとは冷えるのを待てばいいんですね?時間はーー長っ。
タイマー表示は2時間、これは休憩を兼ねて一旦ログアウトですね。リアルで1時間経ったらまた来ましょう。
「おじさん」
「おぅ」
「ちょっと席外しても大丈夫ですか?」
「おぅ、利用時間内なら何度出ようが戻ろうが好きにしろ。なんも無くなったりはせん」
なら安心ですね。
「じゃあ、また来ます」
「おぅ」
ではログアウトっとーー
ブレス撃つ格好がどう見ても火遁
次回、多分なんか出来ます。




