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我が征くは職人(忍)道  作者: あらじる
ことのはじまり
17/70

1-16 静と騒

お待たせしました



噴水から伸びる水路の一本がとんがり屋根に向かって伸びているので、私はそれに沿って石畳の上をゆっくり歩きます。今日はあっち(リアル)こっち(ゲーム)も散歩日和ですね。


というかこの世界、天候崩れることあるんでしょうか。現実では雨降らないと色々と支障が出るものですが、こちらはゲーム。わざわざ降らす理由は無いですし、開発・運営する側のさじ加減な訳で。


水路ばんばん走ってるこの街でさらに雨降ったら、吸血鬼の人大変そうですよね。その辺の弱点設定も気になるところです。日光が苦手とは取説に書いてあったんですが、流水はどうなんでしょうか。

晴れようが雨降ろうが外出れないとはとかく難儀な生き方ですよね。たとえ強くなれるとしてもそのデメリットが私的には遠慮したいです。雨に降られるのも好きですし。




ーーゴーン リンゴーン リーンゴーンーー

と大きな鐘の音。

時間を知らせるためのものでしょうか。だいぶ近づいてきたからか、迫力があります。

水路の道案内もそろそろ終わりそうですね。この水はこのまま川まで流れて行くんでしょうし。などと考えながら先に目をやるとーー


「おぉ……」


思わず漏れたのは感嘆の声。水路は先で道に沿って分岐しているのですが、その内の一つ、もっとも太いそれが教会と思しき建物へまっすぐ伸びていき、建物内へと続いています。

なるほどそう来ますか、いいですねぇ。実に私好みの光景です。現状この街で一番好きな眺めになりました。

建物の外観は、色は白く、三角屋根の家を塔が四隅から見下ろすような形。塔のとんがった屋根のすぐ下には大きな釣鐘があります。さっき鳴っていたのはアレですね。


では引き続き水の流れについて行って建物内に入ってみましょう。


「お邪魔しまーす」

「ようこそいらっしゃいました」


NPCの声に迎えられ中へ。

高校時代に修学旅行で行かされた教会に似てますね。高い天井に様々な絵が所狭しと描かれています。廊下を抜けて講堂に入ると、水の流れはそのまま正面の演壇を抜けて壁の向こうへ消えていました。三方の壁に設えられたステンドグラスが、聴衆席をカラフルに染めています。

演壇、水路真ん中の飛び石の上にあるんですね。牧師さん的な人は落ちたりしないんでしょうか……



「ようこそ、異邦のお方。本日はどのような御用でこちらに?」


再び別の声。見るとシスターなお姉さん風のNPCが立っていました。うーん、用があったわけでは無いのですが……強いて言うなら観光でしょうか。


「えっと、観光でもしようかと水路を追っかけていたらここに……ここは教会、ですか?」

「ええ、そうです。この街を守護してくださっている、水の女神様を祀っています。あとは、街の各所に置かれている浄水器の管理なども任されていますね。我々の都合で汚した水を、そのまま女神様にお返しするわけにはいきませんから」


教会兼水道局でした。思ったより重要施設ですね。後々何かのイベントが起きたりするんでしょうか。


「まだこの街に来られたばかりでしょうし、何かお探しの施設等はございませんか?気まぐれな水の女神様のお導きでここに来られたのですし、簡単な案内程度ならわたくしにも出来ますので」


おお、このNPCはよく喋りますね。重要人物、と言うことでしょうか。名前は……シスターのパッツァさん、ですね。覚えておきましょう。

そしてせっかくの申し出です。ありがたく教えてもらいましょうか。


「あー、倉庫的なものというか、私たちの荷物を安心して預けられるような施設は、ありませんか?」

「ええ、勿論ございますよ。その建物でしたらーー



教会出て隣の隣でした。

なんですかねこの、知らなかったからしょうがないとはいえ、予想以上に近くて恥ずかしい感じ。別にシスターさんに笑われたとか無いどころか、とても懇切丁寧に教えてくれたんですが、それが逆に気を遣われているように感じてしまって……まあ知らなかったからしょうがないんですけど。けど。

教えてくれたシスターさんにお礼を告げて早速向かいます。ありがとうございました。



《ミトラの倉庫−大事なお荷物預かります−》

そのものズバリな看板が、私の恥ずかしい思いを上乗せしていきます。教会入る前にもうちょっと周り見ればよかった……水の女神様のお導き、最後の最後で微妙にずれましたね。気まぐれに巻き込まれた、ということにしましょう。



「いらっしゃいませ!ミトラの倉庫へようこそー!」


店に入ると店員さん(NPC)の元気な声が響きます。少しビクッとしました。さっきまで静謐な空間にいたせいで、音量の差がすごいです。

この声の持ち主がミトラさんですね。


「あの、ここで荷物を預けられると聞いたのですが」

「はい!ご利用は初めてですか!?」

「はい……」


近づいても声量がさほど変わりません。少し耳が痛いです。


「では簡単なご説明を!

こちらではお客様方のお荷物を、手前どもがお預かりさせていただくのですが、その品数に応じた保管料を頂いております。」


あ、声量落ちた。長文はダメなんですね。


「具体的には、お客様方のインベントリの倍量が入る倉庫が最低額として5,000G、期間は30日となっています。そこから期間は変わらず、3倍、4倍とお客様の必要なスペースに応じて保管料は割り増しになります」


なるほど。ここでいう30日というのはゲーム内時間でしょうから、リアルでは15日、約二週間ですね。

薬草の採取クエストが一回につき750G入るのでまぁそんなに無理せず維持できる気がします。というわけで、


「とりあえず一番安いやつをお願いします」

「はい!ご利用ありがとうございます!」


スペースが足りなくなったらまた考えましょう。今はまだこれで十分ですし。

とりあえず現状すぐには使わなさそうな素材群を放り込んどきましょう。


「じゃあ、これでお願いします」

「はい!確かにお預かりさせていただきます!またのご利用、お待ちしてまーす!」



やっぱり文が短くなると耳が痛い……



街の浄水器…水の女神ヘルブラウの力を借りて神官が魔力を込めた魔導石が組み込まれた機械。街と外の境にある水門に一つずつ置いてある。

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