1-13 第一回お宝ドラフト
遅れてすみません
※追記:ボスの名前を間違えていたのを修正しました。ごめんよおおちすいこうもり(母体種)
トワと合流時に、中央突破したことで探知できたスポット。そこに打ち込んだ渾身の【採掘】は、私の目論見通りボスコウモリの上に崩落を引き起こしました。
よかった、関係ないただの採掘スポットだったらどうしようかと……
崩落が止み、舞い上がった埃が落ち着くと、私達に久々の正常な視界が戻ってきました。
岩で作られた天井は壊れ、新たに見えるは青天井。いやぁ、健全なナマモノたるもの、陽の光はしっかり浴びないと……って前も似たようなこと思ったような。
あ、あのボスコウモリの名前、《おおちすいこうもり(母体種)》っていうんですね。速いし暗いしでロクに確認出来なかったんですよね。彼女は未だ瓦礫の下でもがいています。
「よっしゃナーイスミサちー!ぐっじょぶくーるまーゔぇらす!ぐらっちぇ!だんけしぇーん!」
どこの国の人ですか君。
「それじゃ、トドメといこうか」
「いぇあー!くらえーぃ!」
視界が戻ればこっちのもの。しかも対象は動けず、トワが投げるモノにも困りません。私も初心者剣で微力ながらお手伝い。
絵面が完全にリンチですが、先に仕掛けてきたのは向こうなので正当防衛を主張したい。え、不法侵入したのは私達?弁護人ノノ、その辺どうですか?ふむ、死人に口なし、と。ではそのように。
「ひゃはーやりたい放題だぜぇ!まーさーにー、まな板の上の?」
「鯉」
「崖の上の?」
「犯人」
「坂上?」
「田村麻呂」
すでに瀕死のコウモリマザーを仕留めるのに、さして時間はかかりませんでした。あと田村麻呂関係ないでしょ。征夷大将軍様ですよ?
−Congratulations!−
−《おおちすいこうもり(母体種)》の討伐に成功しました。−
そんな通知文が軽快なファンファーレと共に流れます。
「勝てた……」
「勝っちゃったねぇ、ほいミサっち」
「ん」
両手を上げてきたので屈んで勝利のハイタッチ。
しかしレベル3でも何とかなるものですね。ここのボスがギミックダメージ寄りの設定だったのも大きいでしょうが。
眺めているうちに亡骸と瓦礫が光に包まれ消滅し、代わりとばかりに出現したのはーー
「宝箱だ」
「宝箱オブ宝箱じゃの。宝箱オブジイヤー」
ザ・宝箱といった見た目の、豪華に装飾された箱でした。
これでミミックとかだったら嫌だなぁ。
「これ開けたらヤバイ煙で歳とったりしないよね?」
親友も似たような発想でした。
何故二人して報酬の宝箱を疑ってるんでしょうね、可愛げのない。
別に運営に不信感があるとかでは……いや私は多少あるか、称号の一件で。今回の冒険で割と強いということはわかりましたよ?でもあの名前といらぬ一口コメントからは悪意を感じます。笑われたし。
まあさすがに報酬を疑ってもしょうがないのですが。どちらかというと宝箱を見つけた時の条件反射みたいなものです。ノノがいたらきっと短距離テレポ罠を疑っていたでしょう。
「じゃあ開けるよ?」
「よろー」
中に入っていたのはーー
ずらりと並んだ牙でも、怪しい煙でもなく、ましてや壁の中に飛ばされるなんてこともなく。
母蝙蝠の牙×4
母蝙蝠の翼×2
【ソナー】のスキルブック×1
トワイライトシールド×1
闇鉱石×3
中級HPポーション×4
でした。
スキルブック?これ読めば覚えられるよ、ということでしょうか。もしかしたら『スキルを習得する権利をやろう、SkPは払えよ』かもしれませんが。
「どう分ける?」
「いつも通り取りっこでいいじゃろ。交互に」
「複数あるやつは?」
「1枠扱いでまとめて」
「おっけ、じゃあいくよ」
「「せーの」」
「「最初はグー、じゃんけんほい!」
出された手は握られ、私は開いています。
「っし」
「に゛ゃあぁぁ負けたぁああ!」
最初に取る先後も決めたので、早速私から。私、トワ、トワ、私の順で拾っていきます。
「ま、これでしょ。」
まず真っ先に選んだのはスキルブック。気になりますしね。スキル名的に、【消音】との兼ね合いが微妙に不安ですが。
「あーまあ、それ取るよにゃあ。んじゃお次はこれとー、これかぬ」
トワが選んだのは、真っ黒い盾と翼です。
次は私が2枠選び、牙と鉱石を取得。余ったポーションは自動的にトワの下へ。空になった宝箱を見て、私はふと思いました。
「この宝箱欲しい」
「へ、インテリアにでもするん?」
「いや、追加インベントリか倉庫的な扱いできないかなって」
「おぉ、そいつは盲点だったぜ」
そう、この宝箱に物を入れて保管できないかな、と。
さっきまで素材やら装備やら色々入っていたわけですし、少なくともそれだけの容量はあるわけで。後々はどうなるかわかりませんが、インベントリがかつかつですぐに満席になってしまう現状では、もし可能ならかなり有難い存在です。
自分のインベントリを複数の宝箱で埋めて、ポーション等のすぐに使いたいものだけ宝箱と別枠にしておけば、探索にかなり余裕が出来るのではないでしょうか。
「ちょっと試していい?」
「あたしも気になるから是非やるのだー」
では早速。
空の宝箱を拾うと
−【報酬箱(空)】を取得しました−
の表示。第一関門でしたがここまでは予想通り、問題は次からです。
転がっていた、はてなマークの付いてない石ころを拾い、宝箱もとい【報酬箱(空)】に入れます。蓋を閉めると(空)の表記が消えました。第二関門も突破。
そしてそれをインベントリに入れようとするとーー
−このアイテムはインベントリに入れることができません−
と表示されました。あらら、最後の関門でダメでしたね。流石にそこまで甘えさせてはくれないようです。
その後も色々実験した結果、判明したのはーー
・宝箱は拾える
・宝箱には新しくアイテムを入れられる
・空の宝箱はインベントリに入るが
・中身のある宝箱はインベントリに入らない
・ただし持ち運びは可能
・容量はおそらく、プレイヤー一人分の半分程度
・仕様も同じで、同名のアイテムはある程度スタックされる
ということでした。
『インベントリの空箱はスタックされるのか?』はまた調べないとですね。
後は宝箱に宝箱は入るのかという疑問が残っていますが、空き箱でないとインベントリに入らないあたり、多分無理じゃないかなと二人で予測しています。
「さて、実験はこんなものかな」
「今できる範囲じゃあこんなもんだろうにゃあ。持ち運べるサブインベントリが見つかっただけでも大発見じゃろ」
「誰もまだ知らないの?」
「そんな情報は出回ってなかったはず。まあ二人で探索始めてからはどうなったかわからんけど、そもそもダンジョン自体見つかってなかったからなー」
「可能性は低いと」
「そゆことー」
ダンジョン共々、結構な発見をしてしまったようです。
「んでさ」
「んー?」
「空の宝箱、貰っていい?」
「利用法見つけたのはミサなんだから遠慮なんてせず持ってきなー」
「ありがと。代わりに情報発信する権利をあげるね」
「めんどい部分だけ寄越しおって……追加の実験と撮影もせんといかんからその辺は協力してな」
「もち」
「そんじゃまぁ、帰るかー。日付も変わっちったし」
「げ」
そういえば、太陽出てましたね。リアル時間は深夜1時を指していました。自覚すると眠気が……
「そこの魔法陣から帰れるらしいぞい」
トワが指差す先には淡く光る魔法陣。近づくと、入り口に戻るか、街の噴水広場まで戻るかの選択肢が出ます。おぉ、便利。
「私は街に戻るとそのまま落ちるけど、トワはどうするの?」
「んー、どうすっかねー。考えて何も思い浮かばなかったら寝よっかな」
「そか、じゃあお疲れ」
「おっつおっつー。またどっか行こうなー」
「ん」
そう言葉を交わし、二人で魔法陣の光に包まれました。
宝箱ってたまにお前どんなサイズしてるの?ってもの入ってますよね。
おおちすいこうもり(2)…群れの中でひときわ大きく強大なメスは母体種と呼ばれ、群れの拡大のために子を産み続ける。主に水辺に巣を構えることが多く、その巣が時には水の流れさえ変えることから、治水の名が付けられた




