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我が征くは職人(忍)道  作者: あらじる
ことのはじまり
11/70

1-10 東方沢発見伝

ぎゃあ時間オーバー。少し間に合わなかったですね。昨日連投なんてするから……



トワを伴って歩くこと数十歩、私はあることに気がつきました。


「おっそ」

「てへへ、すまんね」


すぐ隣にいたはずのトワが、いつの間にやら後方に。私とAGIの差がかなりあるようです。あとは歩幅の問題もあるでしょうか、気をつけて歩かないといけませんね。

追いつくのを待ってから、再び歩き始めます。


「……」


うん、遅い。歩幅合わせるとかいう次元の問題ではありませんね。このままでは日が暮れる、もとい日が昇ってしまいます。たしかに昼夜が切り替わるのが見たいとは思いましたが、こういうのはなんか違うでしょう。雰囲気を大事にしたい。


しかしまあどうしたものですかね。出来ないことをせっついてもしょうがないですが、この速度はさすがになんとかしたいです。ふむ……


「あ、そっか」

「どしたー?」

「ちょっと失礼」


そう言って私は、憑依してる人形ごとトワを持ち上げました


「おぉう!?」


うん、出来ましたね。初めからこうすればよかった。重量もまあこんなものでしょう。では改めて出発


「おー、はえー」

「走ろうか?」

「いいねいいねぇ、風になっちまおうぜー」


ではご希望通りに。

私もどのくらいの速度が出るのかわかりませんが、スタミナが切れそうになるか、何か見つけるまで走ってみましょうか。




1、2分ほど後、これまでと違う音が耳に入り私は走るのをやめました。スタミナの消費は半分ほどでしょうか、全速で走ると結構減りますね。

マップで確認すると私が走った道筋ががまっすぐと、未探索の闇を切り裂くように伸びています。距離にして1kmぐらいでしょうか……へ、1km?ちょっと進みすぎじゃないですかねミサさんや。

我がことながら軽く引いていると、走行中ずっと笑っていたトワが話しかけて来ました。私はジェットコースターか何かか


「水の音、だねぇ」

「川かな?」

「沢かも」


沢ですか。となると山はこっちの方角じゃないみたいですね。まあ川を上流に向かって辿っていけば、山につくかもしれませんが。逆に下流で広がる森が街の南側、ということなのかもしれませんね。


「どうする?」

「ミサミサは採取したいじゃろ?あたしはモンスターがどんなのいるか見たい。だから護衛でついてく」

「ついてくというか連れてけって言った方が正しいでしょうが」

「はっはっはご明察。あ、あとPT組もうぜー、ほれ申請」

「ん」


PT申請に《はい》を選択すると、視界下部に表示される自分の簡易ステータスバーの上に、トワのHPバーが追加されました。なるほど、こうやって仲間の状態が見れるんですね。


「んじゃどんどん行こうかー。GO!ミサちー!」

「じゃあちょっと入水してみようか」

「調子に乗りましたごめんなさい。」


とりあえず上流に向かいますかね。

生え並ぶ樹木が月明かりを遮っていますが、羽虫や下草が不思議な光を放っていて光量はさほど変わらず。

なかなか幻想的ですね。私的にポイント高いです。


道中近場の採取スポットに寄りながら、上流目指しててくてくと。薬草ってこの辺でも拾えるんですね。南の森に繋がってる説が信憑性を帯びてきました。


私の腕に収まるポルターガイストは、する事がないのでやや暇そうです。一人カラオケ大会を始めてしまいました。私にもマイクよこしなさい。


「あ」

「お」


トワの出す美声(騒音)におびき寄せられたのか、緑色のゼリーが近寄ってきました。頭上の名前は《モスライム》、藻スライムなのか(モス)ライムなのか判断に困りますね。どこぞの蛾型怪獣は関係ないでしょう。

名前の色は敵対Mobを表しています。まあ友好的な方が驚きですよね。ぷるぷる。


さて、このゲームで初めての戦闘となりそうです。トワを下ろして初心者剣を抜きます。

おい、なに歌うの再開してるんだ。ラストサビの直前だったのはわかるけどお待ちかねの敵ですよ?仕事しなさい仕事。


と、焦れたのかモスライムが突っ込んできました。トワに向かって。いいぞ、そのままやってしまえ。


「〜♪」


歌いながらトワは横にステップして躱すと、バランスを崩しているモスライムに向かって、

横にあった自身と同じほどのサイズの石を移動させて上から落としました。ぐちゃり。うわぁえげつない。

当然のようにHPは消し飛び、石の下が薄く光りました。


「勝った!」

「ポルターガイストこわ……」


万が一こいつと闘うことになったら何もない平地に逃げるしかないですね。周りが散らかってるほど強そうです。まあ平地に逃げると私も隠れられなくなるのですが……

そして微量の経験値と【モスオイル】なるアイテムを入手。藻じゃなくて苔だったようです。そしてオイル?ゼリー状のくせに可燃性なんでしょうか。苔い燃料、なーんて。


そんな調子でたまに現れるメロンゼリーを処理しながら川沿いに進んでいると


「行き止まりかな?」

「この道はここまでって感じだね」


滝に遮られました。

目の前が大きな崖になっていて、上から轟々と水が落ちてきます。登れない、というわけではなさそうなのですが、岩が苔むしていて滑りやすそうです。危ない。

滝壺が沢の林にぽっかりと穴を開け、月が覗き込んでいます。やあこんばんは、さっきぶりですね。


「こういうとこってさー、滝の裏になんかありそうだよねー」

「またそんなベタな……」


まあ覗く分には損するわけでもなし、一応確認だけしておきますかねーー


「マジか」

「ワーオ」


ベタでした。さすがロマンの塊、ベタなイベントはちゃんとこなしてきますね。


滝の裏にはぽっかりと暗闇が大口を開けていました。

マップを見ると《苔岩の洞穴》という身もふたもない表示。


「入る?」

「とーぜん!」


まあそうなりますよね。

いざ、初ダンジョン!

次回ダンジョン探索


モスライム…東の沢付近に生息する粘性の魔物。餌として摂取する苔が油分を含んでいるため、体内に蓄積されている。当然、炎に弱いが、激しく燃え上がるので注意が必要。


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